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伊坂幸太郎さんの小説「あるキング」感想と解説。野球好きな方はぜひ

伊坂幸太郎さんの小説「あるキング」感想と解説。野球好きな方はぜひ 小説
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伊坂幸太郎さんの小説「あるキング」の感想・解説・考察。

Amazon.co.jp

初版は2009年8月発刊。

新刊をハードカバーで購入して1度読んでいますが、本のサブスクKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)に登録されていたので改めて読んでみました。

あとがきで著者が書いていましたが、いつもの伊坂さんの小説と思って期待して読むと、少しがっかりするかも知れません。実際、僕も新刊を購入して読んだ時は「あれ?なんかイマイチだな」と言う感想でした。気に入った小説は何度も読むんですが、この小説は1回読んだきり。

ただ、再読してみると最初に感じたよりもいい作品だなと思い直しています。

gao the book
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野球が世の中を、誰かの人生を変える!

小説「あるキング」のざっくりあらすじ

優勝経験もなくいつも最下位のプロ野球チーム「仙醍キングス」。

仙醍キングスのファンである両親の元に主人公、山田王球(おうく)が生まれる。

小学生の頃から野球のトレーニングに励み、バッティングの才能があった。

その才能は学校に教えに来たプロの投手からホームランを放ってしまうほど。

王球の父が犯罪を犯したり、さまざまな人の妨害に遭いつつも、なんとか仙醍キングスに入団。

その後、王球が活躍するという物語。

野球選手の伝記を読んでいる感じでした。

小説「あるキング」の個人的なハイライト

母親の友人に予告ホームランをする

仙醍キングスはチームとしては弱かったが、南雲という素晴らしいバッターがいた。(引退後に仙醍キングスの監督になる)

王球の母親の友人が長期入院していたが、ある日、南雲がお見舞いに来た。(友人は南雲選手のファンでファンレターを何通も送っていた)

「次の試合でホームランを打つから、君も手術を頑張るんだよ」と言い残し、予告通り三打席連続ホームランを打つ。

特に三打席目の特大ホームランは前代未聞の滞空時間だった。

その光景を見た母親は鳥肌が立った。

ありきたりなシーンですがこういうのはやっぱり感動します。

王球が敬遠されすぎるから賄賂を渡す父

王球は小学生の頃からバッターとして活躍していた。

試合ではほぼホームランを打たれてしまうので相手チームからは敬遠の連続。

王球は練習試合や本番の試合でも敬遠ばかりでほとんど活躍できなかった。

そんな王球を見かねてか、父親が相手チームの監督に賄賂を渡していた。

「敬遠しなければお金をあげます」と。

んな無茶苦茶な 笑。

ホームランで世界を変える

父親が王球に言ったセリフがなんだか気持ちいい。

「ホームランというのはそういうものなんだ」父親は興奮を浮かべ、うんうん、と同意の相槌を自分で打った。
「そういうもの?」
「世の中の不安だとか、怖いこと、忌々しいこととかを全部、突き刺して、宇宙に飛ばす。いいか、譬え話じゃないぞ。おまえならたぶん、ホームランで世の中の陰鬱とした問題を、一瞬かもしれないが、消し去れる」

あるキング

中学最後の試合が熱い

中学最後の試合がこの小説で盛り上がるポイントの一つ。

王球のチームメイトに乃木という友人がいた。

最後の打席でヒットを打てば、次の打者は王球。王球まで繋げれば必ずヒットかホームランを打ち逆転勝ちができる、という場面。

乃木は緊張でビビりまくる。

だが、タイム中にチームメイトから思わぬ話を聞く。

チームメイトとして王球は別格ですごいのは誰もがわかっていた。だが、その王球になんとかついて行こうとしてレギュラーを勝ち取った乃木に対して賞賛の言葉を放つ。

乃木自身は全く気づかなかった。そんな風に自分が思われていたこと。そして、乃木の頑張りを見て白けていた野球への情熱が再度燃え上がって、他のチームメイトも頑張れたこと。

結局、勝敗はどうなったかはぜひ読んでみてください。

シェイクスピアの「マクベス」

仙醍キングスの南雲はシェイクスピアのマクベスを愛読していた。

この小説ではことあるごとに3人の魔女が登場します。マクベスに登場する魔女らしい。この魔女は見える人にしか見えない。

あまりうまく理解ができていませんが、マクベスの物語が南雲や王球の物語とリンクしているっぽい。

マクベスを読んでいないので、いまいちしっくり来ず ^^;

ベーブ・ルースの名言

王球の周りにはその時々に友人というか味方も登場します。

その一人の石投げ男が言った言葉。

「あのな、ベイブ・ルースはこう言ったらしいぞ」石投げ男が言う。
なるほどこの男は名言好きなのだ。以前、会った時は、ガガーリンを引用し、今回はベイブ・ルースだ。
「何て?」
「あきらめない奴を負かすことはできない」
なるほど、いいことを言う。

あるキング

もう一つ。

心強い言葉ではないか。
試合は終わるまで終わらない。
笑ってしまうが、力強い気持ちになる。
こうも言い換えられる。人は死ぬまでは不死身だ。

あるキング

三人称の謎

あるキングは登場人物の他に、この物語を俯瞰した三人称の語り部がいる。

これは一体誰なんだろう?とずっと思っていましたが、終盤にきちんと伏線が回収されています。

3人の魔女の存在もあってか、この語り部の存在もちょっと不気味 笑。

まとめ

あるキングの物語には他にも様々な登場人物が出てきます。物語を盛り上げる人たちが多いのでぜひ読んでみてください。

冒頭にも書いていましたが、いつもの伊坂幸太郎さんの小説のタッチではなく、著者の趣味である野球(多分、プレイではなく観戦だと思いますが)を全面に出した作品なので、好き嫌いが分かれそうな感じはします。

読み終わった後、謎が残る部分もありましたが、全体的にはとても良い作品だと思います。

タッチとかドカベンとかH2とか(全部古いな 笑)野球漫画が好きな人は結構楽しめるはず。

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