八樹純さんのホラー小説「血腐れ」の感想・解説・考察。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
6つの短編を集めたホラー短編集。
田舎の閉鎖したロケーションや高齢者の登場が多く、全体的にどんよりした雰囲気の短編集でした。
昔からある風習、呪い、心霊現象などが登場して、割とド直球なホラー作品です。

オーディブルで新しいホラー作品を聴くのが楽しみな日々。
小説「血腐れ」のあらすじ
短編6つの簡単なあらすじを書きます。
物語の内容を少し書いていますが、ネタバレはしていません。また、オーディブルで聴いているので名前の漢字が不明です。人名はカタカナ表記しているので、その点はご了承ください。
魂疫
主人公のヨシエ。70歳の夫が大腸がんで亡くなる。
死んだ兄の霊が見えるという夫の妹カツコ。
心配になったヨシエはカツコに病院に行くことを進める。診察の結果は軽度の認知症だった。
ヨシエは週に2回、カツコの様子を見に行く。
カツコから「魂に障りが起こると死人の顔が変わる話」を聞かされる。
いつものようにカツコの様子を見にくと、こたつに突っ伏したまま亡くなっていた。
通夜でカツコの家に一泊したが、心霊現象に遭い、自分の身にも危険が迫ることを感じる。
カツコから聞いていた「魂に障りが起こるのを防ぐ方法」を試してみるが…。
怪しい健康療法、マルチ商法、オカルトな話が登場します。

この物語では人の胎盤を原料にした薬が登場します。胎盤と聞くとちょっと不気味ですが、プラセンタ(胎盤)という言葉は聞いたことがあります。それにしても人の胎盤を原料にした物を口に入れるのは気が引けます ^^;
血腐れ
表題作。
主人公のアサミ36歳。弟のノブアキ34歳。ノブアキの息子と娘(共に小学生)4人でキャンプに行く。
子供の頃からよく行っている地元のキャンプ場で、裏には縁切りで有名な神社がある。
神社の裏には漬物石ほどのサイズの丸い石があった。祖母からこの石に血をつけると良くないと言われていた。ずいぶん昔からある神社らしい。
実はアサミはこの神社で小学時代に嫌いだった同級生に対して、縁切りを実行したことがあった。
そんな過去を思い出しつつ、弟のノブアキの様子がずっとおかしいことに気づく。
ノブアキと妻は関係がうまくいっていなかったので、ノブアキが妻を縁切りしたのでは?という疑惑が湧く。
縁切り、呪詛の石、夜に登場する謎の幽霊。
怖い話とミステリー要素が加わった、なんとも後味の悪い物語でした。
骨煤
兄弟で父の介護をする主人公たち。
76歳の父は脳溢血で一命は取り留めたものの、会話がうまくできなかった。
母は既に他界。
母はオカルトめいたことをよく言う人物だった。
母のことが大好きだった主人公。しかし、過去に父と母には秘密があったことを兄から聞かされる。
「悪いことをした人間は骨が黒くなる」という言う地元の言い伝え、叔父の謎の死、時々見える白い服を着た女性。
複数の謎と主人公だけ知らされなかった過去。
田舎の暗い雰囲気のある話でしたが、最後はちょっといい感じの話で終わります。
爪穢し
環境保全のNPOで働く主人公カホ。29歳。実家で母と妹と3人で暮らしている。
妹のマナは5歳年下の24歳。17歳から22歳にかけてアイドルをしていたが、その後、引きこもりを続けている。
妹からの要望でネイルチップを購入したが、WEBサイトで見た商品とは全く違う物が届く。
包装が汚く、獣臭のするネイルチップ。
すぐに捨てたが、翌日いつの間にか家に戻ってきていた。
気持ちの落ち着かない主人公は、購入した店舗に足を運んだものの、引き取ってもらえず。
そのお店のことを調べると、マナが昔いじめていた子が作ったネイルチップだった。
職場の同僚にネイルチップを見せると、その同僚も同じ被害に遭っていた。
詳しく話を聞くと、血と歯を使った呪いのネイルチップらしい。怖すぎ ^^;
すぐに女性霊能者に相談したものの、制作者が既に亡くなっていたため、呪いの解除ができない。
結局、なんとかネイルチップを捨てることができたが、最後に悲しい結末が…。
イジメ、呪いのアイテム、姉妹の人間関係が絡み合った、怖くて悲しい話でした。
声失せ
オカルトや超常現象専門の記事、雑誌を編集する会社社長の叔父。
その叔父さんの手伝いで働く主人公。
二人は福島の祖父のお寺に車で向かう。そのお寺には鐘にまつわる言い伝えがあるらしい。
祖父が住職をしていて、「ついてはいけない鐘」について話を聞く。
ネットに掲載していた記事にクレームがあり、叔父さんはヤクザまがいの人物に目をつけられていた。
そのヤクザっぽい人たちがお寺まで乗り込んできたため、祖父は鐘の音を鳴らす。
行方不明になる叔父、祖父の不可解な行動、お寺での怪奇現象に遭遇する主人公。
いろいろなことが目まぐるしく起こって、最後は意外な結末に。
影祓え
主人公のマキ。2歳の息子が謎の熱がおさまらず入院することに。
夫のアツシはあまり積極的に診てくれず、マキの不満が溜まる。
入院先で知り合った年上の女性サトカ。サトカの息子は白血病が再発して入院していた。
息子も白血病の疑いがあったため、サトカの励ましに勇気づけられるマキ。
息子の病気とは別に、マキは毎日、黒い影を見るようになる。
息子は無事退院できたが、結局、熱の原因は分からず。
家に帰って息子と一緒にお風呂に入ると、息子が黒い影と入れ替わる怪奇現象に遭う。
相談できる者がおらず、サトカに助けを求め、家に呼ぶと「影祓い」が必要と言われ、何やら儀式を始める。
黒い影は「外道」というつきもので、姿形を変え、顔や声まで真似できるらしい。
なんとも怪しいサトカと、意外な展開で関わる夫のアツシ。
謎の白い影も登場して、ミステリー仕立ての不気味な話でした。
ホラー小説「血腐れ」の良かったところ
認知症が怖い
冒頭にも書きましたが、この作品は高齢の登場人物が多く、介護の話や認知症の話が何度か出てきます。
僕自身も40後半になり、親が高齢なこともあって非常にリアルに物語を受け止めました。
父から祖母の認知症の話を聞いてから「認知症は下手なホラーより怖い」という実感があります。
父が祖母を介護していた際に「お前は誰だ?」と聞かれたり、真夏にも関わらず冬着でコートを着て汗びっしょりになる祖母を見て、ゾクっとしたと言っていました。
少し前に認知症に関する本を読んだことがあるんですが、その本では「認知症は死の恐怖から逃れるために過去の記憶に逃避する。昔のことはよく覚えているが現在の意識が無くなる」みたいなことが書かれていました。
リアルに認知症の怖さにビビっています。
幽霊の描写が怖い
この作品では割とド直球で幽霊が登場します。
幽霊が登場するシーンの文章が妙に怖いのも著者の特徴だと感じました。
ミステリー要素も強め
ホラーの短編集ですが、全体的にミステリー要素が強めです。
先が読めない展開が怖さでもあるので、ホラーとミステリーの融合がいい感じでした。
まとめ
どの話も物語が途中で終わる感じで終了して、はっきりとしたオチがない話が多め。
あとは読者の想像に任せる、という終わり方は個人的に嫌いじゃないです。
著者の八樹純さんのホラー小説を読むのは、この作品で2作目になります。
ジャパニーズホラーのじめっとした湿度あるホラー。特に田舎のロケーションや、昔からある風習などの話は八樹さんの真骨頂なのかも知れません。
今後も注目してまた他の作品も読みたいと思います。



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