ヴェルヌの小説「地底旅行」の感想・解説・考察。
1864年の古典的名著。
この小説はKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)で読みました。
ネタバレ要素も含んでいますのでご注意ください。

地球の地底を旅する話。古い小説ですが、斬新なストーリーで面白かった。
小説「地底旅行」のざっくりあらすじ
小説「地底旅行」は、ドイツの鉱物学者リーデンブロック教授の甥であるアクセルが、過去の回想を語る物語。
リーデンブロック教授は専門の鉱物学以外にも世界の様々な言語を話せる。
甥のアクセル自身も地質学に詳しい。二人の意見がしばしば衝突することも。
ある日、リーデンブロック教授がアルネ・サクヌッセンムという著名な錬金術師の本から、暗号が記されているメモを発見する。
二人で暗号を解いてみると、そこには「アイスランドのスネッフェルス山の頂にある火口の中を降りていけば、地球の中心にたどり着くことができる」と書かれていた。
火山の火口から地底に降りるだと!?UFOいるんじゃない!?(僕の心の声)
リーデンブロック教授は興奮し、アクセルを連れてアイスランドから地底旅行に行くことを決行する。
リーデンブロック教授は大胆な発想と行動力を持っていますが、アクセルは逆に一般的な感性を持っています。なかば強引に地底旅行に引っ張られるアクセルがちょっとかわいそう。
アイスランドでスネッフェルス山の道のりに詳しいハンスという人物を雇い、3人での冒険が始まります。
このハンスという人物は口数が少ないものの常に冷静で卓越した体力・運動能力を携えています。
スネッフェルス山に行くまでの話は少し地味ですが、火山から地底に降りていく話以降は一気に話が面白くなっていきます。
果たして3人は地底で何を発見するのか。という物語。
アイスランドの土地が想像していたよりすごいところっぽい
小説で描かれているアイスランドは、人が住むのに向いてなく、そこで暮らす人々はかなり質素な生活をしているようです。1864年の作品なので現在とはまたかなり違うとは思いますが。
ほとんどが砂漠のような無人地帯
アイスランドに初めて来た主人公たちは、その土地の荒涼とした世界に驚きます。
アイスランドの首都レイキャヴィークに近い場所にいるが、それでもまだ人が多く耕作地もある方。
草木もほとんどなく、人が住んでいる地域は限られているっぽい。
アイスランドの人たちは読書が好き
アイスランドの図書館の蔵書数に不満を持ったリーデンブロック教授。その理由をアイスランドに住む学者フリードリクソン先生が話す。
「リーデンブロック教授、本は国じゅうを巡回しているんですよ。氷に閉ざされている期間が長いこともあって、私たちは国民は読書が好きなのです。農民でも漁師でも、文字が読めない者はひとりもいません。また本を読まない者もいません。」
地底旅行
せっかくの蔵書を図書館でカビさせるより、広く提供している。本は人から人へ回り1〜2年戻って来ないことも多く、ボロボロになった本も多いらしい。
フリードリクソン先生が旅立つ主人公たちに送った言葉「運命がいかなる道を示そうと、ただその道を行かん」がよかった。ラテン語文学の大家ウェルギリウスの詩。
リーデンブロック教授は地底で、同じくウェルギリウスの「地獄に落ちるのは易し」という言葉も放っていました。
アルネ・サクヌッセンムはアイスランドでは有名?
自著に暗号のメモを挟んでいたアルネ・サクヌッセンム。アイスランドの科学と文学の誉れ、と呼ばれるほど有名らしい。
ネットで少し調べてみましたが、どうやら架空の人物っぽいです。
知識があれば未知の冒険でも生き抜ける
地底に潜っていくにつれ、地層がどんどん変化していきます。
鉱物や地層に詳しい主人公たちは、この地層の変化でこの先にどのような世界が広がっているか想定しながら冒険していきます。
圧倒的な知識量でサバイバルする姿は人間の凄さを感じました。
地下に潜ってから口数が少なくなる
道案内人のハンスは元々口数の少ない人物でしたが、地下に潜ってさらに無口に。
主人公とリーデンブロック教授も伝染して口数が少なくなる。
外部の物事は脳に直接、影響を与えるものである。たとえば、四方が壁で、窓のない場所に閉じ込められたら、すぐに言葉と言葉、観念と観念を結びつける能力を失ってしまう。要するに思考能力を失ってしまうのだ。独房に入れられた囚人たちが痴呆になったり、頭がおかしくなったりするのはそのためである。
地底旅行
挿絵がいい感じ
この小説では所々に1ページを使って挿絵が入っています。
昔のゲームブックの挿絵みたいな雰囲気で、地底を冒険する3人のビジュアルや風景が描かれています。
こういうイラストはなんだかワクワクします。
地下にはすごい世界が広がっていた
地下に着くと思いもよらない世界が広がっています。
広大な空間に太陽のような光、空、海がある。
海には巨大な生物、恐竜も登場。
4メートルを超える巨大な人間、巨大なキノコ、そして人類の祖と言える骨がたくさん見つかった。
この地底に陸上のような世界が広がり、しかも生物がいることに驚く3人。
「ああ、アクセル。科学などというのは、まちがいでできているようなもんじゃ。だが、まちがいは犯したほうがいい。それによって、少しずつ真実に近づいてくるのじゃからな」
地底旅行
こんな地下に潜って、最後どうやって陸上に戻るのか気になっていましたが、驚きの方法で帰ります。フィクション小説ならでは。
翻訳者の解説も見どころの一つ
章の終わりごとに翻訳者の注記、解説が入っていますが、著者のヴェルヌの間違いを指摘している箇所が多くて、さすがにちょっと笑ってしまいました。
翻訳者の方もプロ意識がすごい。
最後に翻訳者のあとがきもあってこれも面白かった。
地下に潜るSF
後書きで解説が書かれていましたが、この解説がわかりやすくて助かります。
この作品は「科学」をもとに過去の地球を「空想」した「タイム・トラベル小説」なのである。そして、この小説のSFとしての本質は、まさにそのタイム・トラベル性にある。
地底旅行
映画にもなっているっぽい?
小説「地底旅行」は1959年にアメリカで映画になっていたようです。
また「地底旅行」を基にした映画もいくつかあるっぽい。
地底を探索するSFとしては元祖の作品なのかも知れませんね。
古典的名作ですが斬新で面白かったです。
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