辻村深月さんの小説「傲慢と善良」の感想・解説・考察。
初版は2019年3月。オーディブル版は2024年12月から配信開始。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
正直なところ、中盤あたりまで読むのがしんどかったです(少し冗長すぎた気が)。ですが、終盤の展開がとても良くて、最後まで読み終えてよかったと思いました。
これから結婚を考えている方は、結構リアルな内容なので参考になるかも!?知れません。

もう結婚を諦めている僕ですが、前半は心に鋭利な何かがぐっさりと突き刺さりました 笑。
小説「傲慢と善良」のあらすじと小話
小説「傲慢と善良」について簡単なあらすじと小話を挟んでこうと思います。(ネタバレはしていません)
本のカバーがいい
いきなりあらすじと関係ないですが、本のカバーデザインがいい。この女性のイラストは本屋で目にしたら気になってページをめくってしまうだろうな〜。インパクトすごい。
オーディブルのナレーション
オーディブルではナレーションは松岡禎丞さんと雨宮天さんの2人が担当しています。
物語は1部と2部に分かれていて、1部は松岡禎丞さん、2部は雨宮天さんが朗読。
どちらの方もベテランの方なのかな?とても聞きやすいナレーションでした。
ざっくりあらすじ
主人公は架(かける)とその婚約者の真実(まみ)。
架が39歳で真実は35歳。どちらも結婚歴は無く、幾度かの婚活を経て二人は知り合う(架の親友から真実を紹介された)。
あらすじも何も見ずにこの作品を読み始めましたが、最初から違和感を感じていました。恋愛小説かどうかはわからないものの、若い男女の話ではないところに意外性というか、なんかこうしっくりこない部分がありました。
それもそのはず、中盤あたりまで読んでみると、この小説は婚活をテーマにしていることがわかりました。
結婚を間近に控えた二人でしたが、真実がストーカー被害に遭い行方不明に。
架が行方不明になった真実を探す、という物語です。
2部構成で、1部は架の視点の話、2部は真実の視点の話になっています。
2部の途中(終盤近く)から大きく展開が変わります。ぜひ最後まで読んでみて欲しい作品です。
結婚相談所の話
架と真実は東京に住んでいて、真実は群馬が実家で30歳を過ぎて東京に出てきています。
架は真実を探すべく、真実が群馬にいた頃に婚活をしていたという結婚相談所に出向く。
この結婚相談所の社長である小野里(高齢の女性)の話が為になりました。
架も小野里に色々と話を聞いて驚いていましたが、小説を読んでいる僕も心に刺さりました。
小野里との会話を通じて、架は結婚に対する考え方を大きく改めることになります。
結婚の前提に恋愛があるのはおかしい
結婚の前提に恋愛があるのはおかしい、と小野里は言っていました。
恋愛の延長線上に結婚があると思いがちですが、結婚は恋愛とは全く別物なのかも知れませんね。ドラマや映画などの恋愛物語に毒されている部分もあるとも言っていました。
結婚相談所は最後の砦ではない
結婚相談所は最後の砦ではなく、最初の手段。
最後の砦と思って来られてもほとんどの場合手遅れ、とのこと。いや、まあ確かに。
婚活がうまくいく人はこんな人
婚活がうまくいく人は自分が欲しいものがわかっている人。ビジョンがある人。だそう。
結婚相手の条件として、この部分だけは譲れないけれど、他の部分は全部飲み込む(受け入れる)覚悟がある人。真剣に結婚を考えていて、やり切る覚悟が必要。
婚活していてもピンとくる人がいない
婚活をしていてもピンとくる人がいない。
これは架も真実も何度かの婚活をして感じたことです。
小野里いわく、無意識に相手に点数をつけ、自分の点数と釣り合わない、そう感じているからこその「ピンとこない」。
逆に言えば自分を高く見積りすぎると婚活はうまくいかない。
傲慢と善良について
この作品のタイトル「傲慢と善良」についても、小説の所々に描かれています。
真実は親の言う通りの人生を歩んできた。世間知らずで悪に染まらない。自分で決めることができないという少し悪い面もあるものの、いい人だから結婚ができなかった。ある種の善良さ。
自分の価値観を重視するが、それでいて誰かに決めてほしい。という傲慢さもあった。
これは真実だけではなくて、真実の母親や架にも当てはまっていて、傲慢さと善良さが婚活では足枷になっている。
まとめ
架は真実を探すために、真実に関わっていた様々な人たちと会って話を聞きます。
その中で自分の結婚に対する考え方を見直す機会を得ます。
真実はストーカーに被害に遭っていますが、生存はしていて、真実自信も新たな行動をして、そこで自信を見つめ直すことに。
ストーリー的にネタバレしてしまうと面白くないので、なかなか感想が難しいですが、「現代風の婚活の話+恋愛」という感じで、個人的には新しい感覚の小説で非常に楽しめました。
ちなみに、架の女友達が登場するんですが、この女友達に嫌悪感を感じる方も多いかも知れません。僕も正直、「女性は怖いな〜」と思わずにはいられませんでした。ただ、最後まで読むとこの作品の良さを味わえると思います。
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