雨穴さんの小説「変な地図」の感想・解説・考察。

2025年10月発刊。オーディブル版は2026年4月配信開始。
この小説はAudible(オーディブル)で聴きました。
オーディブルのナレーションは佐東充さん。非常に聴きやすいナレーションでした。以前までのシリーズでは、ナレーションが5人担当していましたが今作は一人。少し寂しいですが、作品自体のクオリティは全く遜色ありません。
この「変な地図」はシリーズの4作目。
最高に不気味で、面白いミステリー作品でした。毎度、本のカバーデザインやタイトルがホラー風ですが、ミステリー小説です。
物語の序盤は特にワクワク感がすごかった。
後書きにありましたが、一応、この作品でシリーズとしては最後のようです。

日本の田舎で起きる事件は、陰湿さがあって不気味ですね。このシリーズは全体的にこの日本のホラー感があって好きです。
小説「変な地図」のあらすじと感想
小説「変な地図」のあらすじと感想を書きます。ネタバレはしていません。
物語は沖上喜見子の手記と、現在進行形の主人公の栗原の物語で構成されています。
栗原の祖母の死の謎
主人公の栗原文宣は大学四年生で就職活動中。優秀だが面接が苦手で、面接で不採用になる。
無愛想な性格でズバズバと物を言うのがよくないらしい。わかっていても自分の性格を曲げることができない。
父から呼び出され、実家に帰り祖母の話を聞く。祖母が亡くなっていることは前から聞いていた。祖母が大事にしていた家を長年手入れしてきたが、そろそろ手放すことを相談をされる。
せっかくなので、その祖母の家に父と行くことに。
父が入りたくない場所があり、そこは祖母が亡くなった場所のお風呂場だった。
栗原は祖母の部屋に箪笥の引きずった後を見つける。箪笥の裏には封筒が貼り付けられ、中には「不気味な地図」が入っていた。
再度、父に内緒で祖母の家に行き、黒焦げのノートと大量の日本地図、メモ帳、焦げた写真を発見。
この手記の情報をたどり、栗原は河蒼湖(かそうこ)集落へ真相を調べに行く。
最初からかなり面白い展開。
矢比津鉄道のトンネル事件
栗原は河蒼湖集落へ行くために電車に乗ろうとするものの、乗車ルールが東京とは違い、乗車する際に他の客に怒られる。
そこで、若い女性が助けてくれた。その女性は、帆石水あかり。警官をしている24歳。
栗原が宿を探していることを告げると、帆石水の家が宿をしているので、そこで泊まることになる。
あかりの両親(帆石水亭の主人の父と母)とも話をし、古い地図を見せ、栗原の旅の目的を伝えた。
翌日、調査のために電車に乗る栗原。母娘山(もじょうやま)トンネルに入ると急停止し、衝突音が起きる。人身事故。
この事故と、帆石水の父が関わりがあるのではないか?という推測をする栗原。
ここから物語は、このトンネル事件をメインに動いてきます。
河蒼湖集落、鉄道会社、不気味な地図が
沖上喜見子の手記による河蒼湖集落での生活。
祖母の残した地図とは別の地図の登場。
トンネルでの事故、祖母が隠していた不気味な地図などが少しずつリンクしていきます。
栗原の推理も毎度のごとくかなり鋭い。
とても良い終わり方
序盤以外は物語をかなり割愛しています。物語の転換が何度か訪れるものの、終盤は無事に物語が収束。ほっと一息。
シリーズの1作目から、栗原の推理が凄すぎて、ちょっとドン引きすることも多かったですし、(さすがにやりすぎじゃないか?という 笑)論理的な人物なので多少、冷酷に見える感じもありました。
ですが、帆石水あかりと栗原の妹の紗耶の登場のおかげで、栗原がきちんと自身の弱点を認め、人の心もわかる姿が見れて、ちょっと安心しました。
帆石水あかりと栗原は結構いい感じでしたが、そこで恋愛物語に発展しないのも、この作品らしさを感じました。
小説「変な地図」の登場人物
小説「変な地図」の主要な登場人物を書きます。
- 栗原文宣…主人公。大学4年生。就職活動中。
- 栗原の父…60歳。銀行の課長。
- 栗原の母…大学の准教授。栗原が5歳の時に妹の出産が難産で亡くなる。
- 栗原紗耶…栗原の妹。高校生で受験を控えている。
- 沖上知嘉子…栗原の祖母。謎の自殺をする。河蒼湖集落の出身。
- 沖上喜見子…栗原の祖母の妹。河蒼湖集落の出身。手記を残す。測量士。大学でも教えていた。
- 矢比津啓徳…矢比津鉄道の会長。
- 矢比津剛堂…矢比津鉄道の創業者。
- 大里幸助…矢比津鉄道の社長。
- 帆石水あかり…警官。24歳。矢比津線で栗原と出会う。
- 帆石水永作…あかりの父で帆石水亭の主人。元力士。
- 帆石水果乃…あかりの母。永作とは再婚。
- 富永松乃…巻鶴海大学の教授。トンネル内の事故で、栗原は一緒に居合わせた。郷土史を研究。河蒼湖集落にも詳しい。
小説「変な地図」で良かったところ
すっかり設定を忘れていた、栗原について
最初の「変な家」を読んだのが2年前で、すっかりこの本の設定自体を忘れていました。このシリーズは著者の雨穴さんがフリーライターとして取材して、実話を元にした物語になっています。
そして、シリーズに毎度登場する栗原と言う人物。今作では主人公で、栗原自身が体験した話を元にしています。(あとがきによると)
シリーズによって時代が前後するのか、大学時代の栗原だったり、設計士の栗原が登場しますが、全て同一人物だったようです。
シリーズを通して登場する栗原が同一人物なのか、いまいち自信がありませんでしたが、同一人物ということがわかってすっきりしました。
オーディブルでも安心
この「変な」シリーズは、「間取り」、「絵」、今回は「地図」が登場します。
オーディブルだと、これどうやって見るんだろう?と、思っている方もいるかも知れません。
僕も最初は気になっていましたが、きちんとPDFファイルが添付されているので、それを見ながら楽しむことができます。
このイラストや説明図、不気味な地図の存在が、この小説の面白さを倍増させているのは間違いありません。
実は案外、前向きな物語
この物語は序盤に栗原の就職活動から始まり、ある意味では、終盤も就職活動の話題で終わります。
優秀なのに面接で落とされる栗原。
しかしこの事件を通して、「無理しないでいい。必ず自分に合う場所がある」という言葉に、気持ちが楽になります。
暗い物語ばかりと思っていましたが、被害者であった祖母や祖母の姉も、実は案外前向きで、現実を楽しんでいたのでは?という片鱗を見せる物語。なんといい終わり方。
まとめ
今作で一応、最後ということですが、栗原さんの話以外、という形で実話を元にまた話を作れそうな気もしています。
できればこのシリーズは続編を希望したいところ。
絶妙にホラー風なところもとても好きです。
Audible(オーディブル)ではシリーズ4作とも聴き放題で聞けます。最初の30日は無料でお試しできるので、ぜひ聴いてみてください。30日以内に解約すれば支払いは発生しません。

以前のシリーズの感想も書いています↓





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