原浩さんのホラー小説「火喰鳥を、喰う」の感想・解説・考察を書きます。
初版は2020年12月。オーディブル版は2024年3月配信開始。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
ナレーションは土池悠介さん。幅広い年齢層のナレーションの使い分けがすごい。ナレーションによる怖さもかなりありました。本や電子書籍では味わえないオーディブルならではの恐怖体験!
最初は淡々と物語が進行しますが、どんどん怖くなって終盤は絶望感が半端ない。ある種のSF(ファンタジー?)要素もあって、心霊的なホラーとはまた一味違う作品でした。
ホラー小説「火喰鳥を、喰う」のあらすじ
ホラー小説「火喰鳥を、喰う」のあらすじをご紹介します。
ネタバレ要素も含んでいますのでこれから読む方はご注意ください。
謎の手帳と壊された墓
主人公は久喜雄司(くきゆうじ)。学生時代の先輩であった夕里子と結婚し長野で暮らしている。
ある日、雄司の祖父・保(たもつ)の元に手帳が届く。その手帳は保の兄・久喜貞市(さだいち)が戦争中に書いた手記であった。貞市は太平戦争で戦死していた。
同じタイミングで久喜家の墓が壊されていることを発見する。
戦死した兄の手帳がなぜ今頃届いたのか?墓は誰が壊したのか?
その謎を追いかける主人公たち。
記者に手伝ってもらって謎を解明していくが…
貞市の手帳は貴重でもあったので、信州タイムズという新聞社からインタビューを受けることに。
インタビューの後、手帳の最後に「ヒクイドリヲクウ ビミナリ」という一文が追加されていた。(この文は最初に手帳を見た時には無かった)
祖父の保はこの頃から様子がおかしくなる。
信州タイムズの二人の記者と主人公は、貞市の当時の部下(生き残って帰国した)に取材をしに行く。
記者の狂乱。貞市の部下の死。祖父・保と夕里子の弟の消失
取材後に貞市の部下は火事に巻き込まれ重症。
信州タイムズの記者がマラリアを発症(マラリアは日本で感染する可能性はかなり低い)。その後、自身の手首を切断し狂乱。
さらに、祖父の保、夕里子の弟が消息不明に。
思念を感知できる能力者を頼る
夕里子は大学時代の友人・北斗総一郎にこの事態について相談する。
北斗総一郎は思念を感じることができる超能力を持っていた。人の想いなどを感知でき、外にいるだけでさまざまな声が聞こえてくるという。
夕里子も近い能力を有していて、北斗とは良き相談相手で大学時代に付き合っていたこともあった。
手帳に込められた想いが現実を変えていく
この物語は簡単にまとめてしまうと、貞市が手帳に込めた「想い」が現実世界を変えていくという話です。
漫画の呪術廻戦で言うところの特級呪物みたいなアイテムという感じでしょうか。
手帳に関わった人たちがどんどん惨殺されていきます。
現実がどんどん変化していく恐怖
手帳の思念によって現実は貞市の想い通りに進行していきます。
貞市が戦争から生きて帰っている。祖父の保はすでに亡くなっている。というパラレルワールド。
いたはずの人物の存在が消え、どんどんと主人公の周りの環境が変わっていきます。
これはマジで怖い。
ミステリー + ホラー + SFという物語展開で新しい感覚。
それから、主人公がよく夢を見るんですが、この夢が現実なのか夢なのかわからない点も恐怖を煽ります。
伏線の回収はあるものの、謎も残る
物語の終盤できちんと伏線を回収して、読解力の低い僕でもある程度は納得して読み終えることができました。
お墓にいた謎の少女もずっと気になっていましたが、最後に登場してモヤモヤもスッキリ。
ただ、ヒクイドリについては最後までよくわかりませんでした。
ヒクイドリを食べたことで、ヒクイドリの呪い(のようなもの?)が貞市にかかり、手帳自体に能力を有したのか?
所々で登場するヒクイドリもやはり謎のまま。
大事な部分を聴いていなかった可能性が高いですが、このヒクイドリの存在の謎は残っています。
火喰鳥とパプワニューギニア
本編とあまり関係ないですが、ヒクイドリとパプアニューギニアについて。
ヒクイドリという鳥は名前を聞いたことくらいしかなくて、オーディブルで聴き終わった後にネットで調べてみました。
小説にも書かれていましたが、ダチョウのように飛べない鳥で体も大きいようです。
爪の殺傷能力が高く「世界一危険な鳥」らしい。
貞市はパプワニューギニアの戦地に送られて、食べるものが無く、この危険な鳥をなんとか捕まえて食べた。という物語になっています。
パプワニューギニアもよくわからなかったので調べてみると、オーストラリアの北にある島で、写真で見ると大自然で綺麗でした。ただ、現在は治安が非常に悪く国外の人には近寄り難い国のようです。
まとめ
著者の原浩さんの小説は初めて読みましたが、なんとこの小説がデビュー作でしかも横溝正史ミステリー大賞を受賞した作品とのこと。
ホラー小説も次々と新しい作家さんが登場しているようで、個人的には嬉しい限りです。全然追えてないですが…。
原浩さんの他の作品もチェックしていく予定です。
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