凪良ゆうさんの小説「星を編む」の感想・解説・考察

初版は2023年11月。オーディブル版は2025年12月配信開始。
「汝、星のごとく」の続編です。
この小説はAudible(オーディブル)で聴きました。
オーディブルのナレーションは柚木尚子さんと岩崎了さん。柚木さんは前作も担当されていました。区切りのいいところで二人が入れ替わってナレーションしています。
中程度の長さの物語が3編ある中編集。
前作できちんと物語が終わっていましたが、この続編があることで、より深く物語を楽しむことができました。

3つ目の物語の内容からすると、これで完結ということになりそうです。
小説「星を編む」のあらすじ
小説「星を編む」のあらすじを書きます。ネタバレはしていません。ただ、前作の物語が深く関わっているので、前作のネタバレにはなっています。ご了承ください。
春を翔ぶ
この物語の主人公は北原先生。26歳。
前作では北原の娘の結、母の明日見菜々についてはあまり語られていませんでした。
この物語では北原と明日見の過去が描かれています。
明日見は17歳の高校3年生。北原の受け持つ生徒の一人。
明日見の彼氏の敦(高校3年生)が、公園でスケートボードの練習をしていたところ、警察に注意される。それをたまたま見かけた北原が助けた。
それをきっかけに3人は親しくなる。
敦はプロのスノーボード選手。北原は明日見と一緒に敦の競技を見に行き、鳥のように滑空する敦の姿に感動する。爽快な気分だった。
北原はそのプレイを見て、いろいろなものを諦めてきた自分に、まだこんな瑞々しい気持ちが残っていたことに驚く。
親の借金が原因で大学での研究を諦めた北原。お嬢様が故に自由に飛べない明日見。
二人は自分の人生を生きたいと思っていたが、それが叶わない現実の壁が立ち塞がる。
北原は明日見を一人の生徒ではあるものの、どうしても自分と似た境遇なので放って置けなかった。
物語の終盤、人生で初めてみせる北原の怒りと慟哭。このシーンは小説の見どころの一つです。
あの温厚で飄々とした北原先生にこんな壮絶な過去があったとは…。
結局、北原と明日見は自分の人生を貫く道を選びましたが、その代償は大きく、その後の人生が大きく変わってしまいます。
最初の話からめちゃ泣けました。
星を編む
2つ目の物語は、編集者の植木と二階堂が主人公。
前作で青埜櫂(かい)と久住尚人の漫画の編集担当をしていた植木。
そして、櫂に小説(エッセイ)を書かせていた小説担当の二階堂。
二人がタッグを組んで、櫂たちの思いを達成させようと奮闘します。
櫂たちの漫画の復刊、そして未完だった漫画の完結を目指す植木。漫画の復刊と同時に、櫂が残した小説の出版を目指す二階堂。
二人はこの目的のために、どんどん出世し、それぞれ編集長に。(二人とも会社は別)
編集者としての仕事のつらさ、そして仕事に対してのプロ魂を感じる熱すぎる物語。
この2話目が分かりやすく言えば「汝、星のごとく」の続きの物語です。
そしてさらにその続きの物語が、3つ目の物語で描かれています。
波を渡る
櫂が亡くなって5年後が経過。暁海と北原のそれからの物語。
暁海は38歳、北原は52歳になっていた。
元々、かなり複雑な関係の二人ですが、一緒に助け合うという目的で結婚。
しかし、櫂が亡くなって5年後が経ち、それぞれの生活の土台もしっかりしてきた。
暁海は経済的にも余裕ができ、そろそろ離婚した方がいいと考えていた。それは、北原の本当の恋人は明日見菜々だと思っていた、ということも大きい。
離婚を切り出された北原は暁海を説得。ある意味で、やっと夫婦らしい二人の人生が始まる。
どんどんと時間が経過し、北原は高齢と言える年齢まで物語が進みます。
娘の結の人生の変化も見逃せません。
奇妙な関係の北原家がどうなっていくのか?
前作もそうですが、この物語に登場する人物は、しんどい人生(物語)ばかりでしたが、そんなしんどさが一気にいい方向に行くような、とても良い終わり方でした。
小説「星を編む」の登場人物
前作「汝、星のごとく」とほぼ同じ登場人物ですが、登場人物を書きます。新しい人も登場します。
「春に翔ぶ」の登場人物
- 北原 草介…26歳。お金の問題で大学での研究を諦め、学校の先生になる。
- 明日見 菜々…17歳の高校3年生。北原の生徒。大きな総合病院の一人娘。病院は学校に寄付をしている。
- 片山 敦…17歳の高校3年生。スノーボードのプロ選手。15歳からスポンサーが付いている。カナダで菜々と出会い付き合うことに。
- 北原 結…菜々の娘。この物語では赤ちゃん。
- 才谷…北原の大学時代の友人。北原に大きな借りがある。
- 他にも、菜々の両親、北原の父、父が雇っていた従業員などが登場します。
「星を編む」の登場人物
- 植木 渋柿…櫂と尚人の漫画を担当していた編集者。廃刊になった漫画の復刻、完結を目指す。
- 二階堂 絵理…櫂の小説を担当していた編集者。櫂が生前に書いたエッセイの出版を目指す。
- 裕一…二階堂の旦那。広告代理店に勤める。完璧な人物だが、その完璧さが怖い。
- 安藤 圭…尚人の元恋人。櫂の漫画や小説についてインタビューを受けてくれる。
- 小野寺さとる…櫂と尚人の漫画のアシスタントをしていた。現在は結婚して子育てをしている。
- 他にも、編集社関連の人たちや、作家さんが登場します。
「波を渡る」の登場人物
- 井上 暁海(あきみ)…38歳。この話の主人公。刺繍作家としても確固とした地盤を築く。
- 井上 志穂…暁海の母。精神的に参っていたが復活。人生が良い方向に。
- 北原 草介…52歳。1ヶ月に1度、明日見に会いに行く。
- 明日見 菜々…家から飛び出した後、かなり苦労する。
- 北原 結…大人になり、持ち前の行動力と才能でお店を経営する。
- ノア…オーストラリアと日本のハーフ。寿司職人。結と結婚。
- セレーナ…結とノアの娘。
- 青埜 櫂…回想シーンで登場。
- 青埜 ほのか…櫂の母。ちょっとだけ登場。相変わらずの性格。
- 久住 尚人…回想シーンで少しだけ登場。
- 林 瞳子…暁海の父とはうまくやっている。物語も進み高齢に。
良かったところ
前作で物語のキーになっていた「ヤングケアラー」「お金のこと」「自分の人生を生きること」。このテーマは今作でも受け継がれています。
それに加えて、「作品に対する熱い情熱」と「結婚の話」が印象的でした。
編集者の二人が熱い
櫂と尚人、二人の漫画が思わぬところで廃刊となり、しかも、二人とも若くして亡くなります。
二人の熱い思いを受け取った編集者の植木と二階堂は、編集者としての矜持を覆しながら、偉くなることを優先。ある意味、力技(権力)を使って復刊を目指します。
漫画や小説の編集担当に、こんなにスポットライトを浴びせた物語は初めて読みます。どちらかというと作家は目立ちますが、編集者は裏方というイメージが強いので。
前作の話から考えると、漫画の復刊と小説の出版、ここがこの物語の一番のクライマックスかなと思います。
とにかく、この二人の編集者の熱くて優しい心意気に感動しました。
完璧な結婚(愛)なんてない?
3つ目の物語で、結は結婚。しかし、結婚生活にかなり悩みます。
編集者の二階堂も結婚していて、夫との関係に悩みが尽きません。完璧主義者の夫の裕一。
二階堂は結婚生活や愛について「理想を追い求めすぎてはだめ。完璧はむしろ良くない。美しく形が整った愛なんてない。」という結論に至る。
二階堂の悩む姿に、植木は「それでも理想を追い求める。膝を折らない」と自身の言葉を返した。
そもそも、人間関係がそう簡単ではないのに、ずっと一緒に暮らす結婚となると、難易度がかなり高そう。(僕は独身なので実体験がないですが…)
暁海と北原と結。この3人にしても普通の家族ではなく、かなり不完全な家族。
しかし、そこには普通の家族と変わりない、むしろそれ以上の絆すら感じます。
この不完全さがむしろ良くて、リアルで、読者の共感を呼んでいるのかも知れません。
まとめ
過去に登場した人物も協力者として登場し、まさに物語は大団円。
人生のつらさが痛いほど伝わる物語ですが、結局、人の気持ちが温かくて嬉しくなる、そんな物語でした。
著者の凪良ゆうさんの作品は初めて読みましたが、他の作品も遡って読んで(もしくは聞いて)みようと思います。
前作の感想も書いています↓

Audible(オーディブル)では聴き放題で今作と前作が聴けます。最初の30日は無料でお試しができるので是非、聞いてみてください。30日以内に解約すれば支払いは発生しません。



コメント