今村翔吾さんの小説「イクサガミ 無」の感想・解説・考察。
長編小説「イクサガミ」のスピンオフ作品。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
現状は電子書籍とオーディブルのみの配信。amazonのサイトでは後日、文庫本で出版されるという記載はあります。
ナレーションは前作と同じく山口恵さん。非常に聞きやすいナレーションで最高でした。
イクサガミは2025年にNetflixのドラマで話題になっています。「イクサガミ 無」もドラマになるかも?
前作の4巻が天・地・人・神というタイトルだったので、なんとなくかっこいい感じのタイトルにしているのかなと思っていましたが、今作は貫地谷無骨(かんじやぶこつ)のスピンオフ作なので「無」というタイトルのようです。
ざっくりと内容を書いていますが、ネタバレはしていません。

「イクサガミ 無」の物語を知ることで「イクサガミ」により深みが出ました。内容的には先に「イクサガミ 無」を読んでも問題なさそうです。どちらを先に読むのがおすすめかについては、なかなか悩ましいところではあります。
小説「イクサガミ 無」のあらすじ
官軍と薩摩藩との戦い(西南戦争)を舞台にした、高瀬宗太と貫地谷無骨の物語。
「イクサガミ」で行われた蠱毒の1年前の話になります。
「イクサガミ」で主人公だった嵯峨愁二郎(さがしゅうじろう)も終盤に少しだけ登場しますが、高瀬宗太は警官なので愁二郎と敵対関係に。ここも一つの見どころです。
上司に誘われ遊撃警視隊の一員に
会津出身の高瀬宗太。剣術が得意で刀を捨てたくなかったため、警官になる。
父と兄は新政府軍との戦いで戦死している。
「イクサガミ」でも登場した川路利良は西郷隆盛を討伐する作戦を企てる。
宗太は上司の田村五郎から遊撃警視隊に誘われる。遊撃警視隊は西郷隆盛を討伐する隊の一つ。立場的には官軍。
この隊は宗太も含めて剣術が得意な25人が集まった小隊。隊員の一人である鎌苅与一だけはまだ合流していなかった。
宗太たちは九州の小倉に集まり、その後、熊本で薩摩藩と戦う。
この戦は後に西南の役(西南戦争)と呼ばれる。
剣術の終わり。心を開く鎌苅
銃撃戦が主体になりつつある時代なので、出番は少ないだろうと踏んでいた隊員たち。しかし、突如出番が来る。途中、鎌苅与一も参戦。宗太や横田かいじろう(宗太の友人で同僚)は初めての実戦。宗太たちは初戦で見事活躍し薩摩藩を引かせる。同じ官軍の乃木希典少佐からも礼を言われる。
宗太も活躍したが、特に鎌苅与一の強さは突出していた。ぶっきらぼうな鎌苅与一に対して、好意的にコミュニケーションを取る宗太。
鎌苅与一は少しずつ心を開いていき、宗太に剣術を教える。
鎌苅与一は銃兵ばかりの今の世の中がつまらないと宗太に話す。銃を持っているだけで剣の達人級になれるから。
鎌苅与一がこの戦に参戦した目的は強者と戦うこと。特に薩摩藩の中村半次郎と戦いたかった。あわよくば「イクサガミ」でも登場した、不破鳴一(駅逓局員で進次郎に協力した)、人斬り刻舟(嵯峨愁二郎)、その他の十二支隊の隊長たちとも戦いたかった。ちなみに不破も刻舟も十二支隊の隊長。※十二支隊は新政府軍の精鋭を集めた部隊。
篠原国幹との一騎打ちが熱い
薩摩藩は実戦慣れしていて、官軍も押され気味に。
薩摩藩は中村半次郎、篠原国幹、村田新八の3人のリーダーが戦を展開。
鎌苅与一は遠くから中村半次郎を視察。しかし、がっかりした。半次郎は指揮官になり現役から引いたためか、一目で強くないと悟る。
リーダーの一人、篠原国幹は宗太の父と兄を殺した人物でもあった。
鎌苅から宗太へそのことを伝え、復讐はやめておけと戒める。
途中、前島密(ひそか)が作った駅逓局の武装集団「トクソウ(漢字がわからず)」が援軍に来る。
官軍が勝ったり、負けたりの繰り返しがあり、25人いた宗太の隊も18人まで減る。
終盤に一番の見どころである、鎌苅と篠原国幹の一騎打ち。
宗太と鎌苅の友情(っぽい?)が熱い!
なお、篠原国幹がめちゃつよでした。
愁二郎との対面
大きな戦が終わり、宗太たち遊撃隊員は皆、2階級昇格する。
その後、宗太は騎馬隊に移る。鎌苅は行方不明に。
ここから蠱毒が始まる。
宗太は「東京に9人の罪人が来る」という話を受け、警備をしに行く。蠱毒の後半戦ですね。
嵯峨愁二郎と遭遇する宗太。上官の命令では斬っても良いと言われていたが、強すぎる愁二郎。宗太では全く話にならないくらいの差があった。
天明刀弥(てんみょうとうや)と愁二郎が戦うのを見つつ、愁二郎が手にしている刀を見て、あることを悟る。
小説「イクサガミ 無」の登場人物
「イクサガミ 無」の登場人物をざっくりとご紹介します。
オーディブルで聞いているので、名前の漢字が不明です。自信がない名前はひらがな表記にしています。
遊撃警視隊の人たち(25人の小隊)
- 高瀬宗太…主人公。警官。剣の才能がある。父と兄は戦死。会津兼定の刀を持つ。
- 横田かいじろう…宗太の同僚。警官。
- 田村五郎…宗太の上司。遊撃警視隊のリーダー。
- 安藤神兵衛…疾風の斬撃を持つ。
- 鎌苅与一…大阪の虎と呼ばれる。蠱毒にも参加。
貫地谷無骨(かんじやぶこつ)…大阪から官軍に参加。名刀村正を持つ。十二支隊の猿のリーダーを務めていた。
薩摩藩の人たち
- 桐野利秋(中村半次郎)…薩摩藩のリーダーの一人。指揮官になってから以前より剣術の腕は落ちている。
- 篠原国幹(くにもと)…薩摩藩のリーダーの一人。別名、ならしの篠原。習うなら篠原が由来。通称、篠原藤十郎。会津藩の精鋭を集めた別戦隊を斬りまくった。高瀬宗太にとっては父と兄の仇でもある。十二支隊の辰のリーダーも務めた。
- 村田新八…薩摩藩のリーダーの一人。本編ではほぼ活躍を見せず名前だけ登場。
その他の人たち
- 嵯峨愁二郎(さがしゅうじろう)…「イクサガミ」の主人公。終盤にちょっとだけ登場。
- 乃木希典…官軍の少佐。隊は違うが宗太たちの活躍を評価する。
- 秋津あずさ…会津藩。薙刀を使う。「イクサガミ」で登場した会津出身の秋津楓と関係が深そう。
- 樺山ようじ…十二支隊の虎のリーダー。薩摩次元流の使い手。
- 不破鳴一…「イクサガミ」では駅逓局員として活躍した。以前は十二支隊の戌のリーダーを務めていた。
この記事を書くために名前を検索していたら、実在した人物が結構多くてびっくりしました。
小説「イクサガミ 無」の良かったところ
貫地谷無骨が隻眼の理由
貫地谷無骨は、元十二支隊の虎のリーダーで薩摩次元流の樺山ようじと対決。
右目を切られるが、元々義眼。自分の眼球を抜き、強くなり(なぜか義眼を抜くと強くなる設定)樺山ようじを倒す。
このシーンは、三国志の夏候惇(かこうとん)を思い出してしまいました。自分の目を抜いて食べるという話を小説で読んだ記憶があります。
また、「イクサガミ 無」では無骨は片眼(隻眼)の理由を宗太に話しています。
長岡戦争によるガトリング砲で失明。さすがの無骨もガトリング砲は避けられなかった。
刀の時代が終わり、銃の時代はつまらないという理由もここにあるのかも。
この話を読んで、漫画「るろうに剣心」の敵がガトリング砲をぶっ放すシーンを思い出しました(古い)。
鎌苅与一の正体がバレる?
途中、鎌苅与一の正体がバレそうになり(というかバレた?)、同じ隊員の安藤神兵衛が鎌苅の前に立ち塞がります。安藤神兵衛は疾風の斬撃で有名。
隊としてはひとまず戦力重視で鎌苅のことは内緒にした。
安藤神兵衛の存在や、不破鳴一が鎌苅を襲ってきたり、部分的に面白い戦いがあります。
無骨の人物がよりわかる物語
今作を読むことで貫地谷無骨という人物がより理解できて、「イクサガミ」の物語に深みが増しました。
無骨はただただ剣が好きな人物。名刀へのこだわりも見せた。
中村半次郎もこの点似ています。
人を切ることに生きがいを感じる邪悪な人物、というイメージがありましたが、今作を読んでみるとそう決めつけることもできず、ぶっきらぼうだけど情の深さも感じる人物でした。
まとめ
主人公の高瀬宗太が前作で登場していたか、ちょっとわかっていませんが、おそらく対面している場面はなかったと思います。少なくとも名前は登場していないので判断は難しそう。
もし先に「イクサガミ 無」を読んだ後に「イクサガミ」を読む方はこの点注意して読んでみると面白いと思います。
「イクサガミ」の続編は物語の内容から、おそらく無さそうな感じはします。
今作「イクサガミ 無」も非常に面白い作品でした。
Audible(オーディブル)で是非!



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