加門七海さんのホラー小説「祝山(いわいやま)」の感想・解説・考察。

初版は2007年9月。
この小説は、Audible(オーディブル)で聴きました。
オーディブルのナレーションは早水リサさん。ナレーションがめちゃくちゃうまくて、物語の面白さ、怖さが引き立っていました。
想像していた以上に本格的に怖い作品でした。あからさまな幽霊は出てきませんが、物語の描かれ方が巧みで異様に怖い。周りの人たちがどんどんおかしくなっていく様子もヒトコワ要素があってよかったです。
最近ホラー小説を読んでいてつくづく思うのは、昔からある地名だったり、風習やしきたりは、きちんと意味があってそれを蔑ろにすると碌なことが起きないんだなあ、ということ。
安い土地や山などを安易に購入するのもリスクがあるかも知れません。
2026年6月に実写版の映画が公開されましたが、映画はサブスクで見たいと思います。

勝手にどんどん巻き込まれる主人公がちょっとかわいそう。終盤、思ったよりもあっさりと終わるので、なるほど、こういう終わり方も斬新でリアルだと思いました。
ホラー小説「祝山」のあらすじ
ホラー小説「祝山」のあらすじを書きます。ネタバレはしていませんが、ある程度内容を書いているので、ご注意いただければと思います。
物語のきっかけ
主人公はホラー作家の鹿角南(かづのみなみ)。
友人でイラストレーターの芳村里美と電話をするシーンから物語が始まる。
時期はちょうど夏。お盆には地獄の釜が開く、地獄の祭日、お山に死者が蘇る、など、不吉な内容の雑談をする二人。
南は霊感があり(と言ってもただ見えるだけ)、その理由から、幽霊の存在を信じている。
ある日、里美とも共通の知人である矢口朝子からメールが来る。
矢口は南が霊感を持っていることを知っていたため、相談に乗ってほしいという内容だった。職場の仲間と心霊スポットに行き、怖い目に遭ったらしい。
南が現在書いているホラー小説も矢口の話と似ていて、心霊スポットに行った人たちが痛い目に見る話だった。執筆が進まないこともあって、何かの参考になればと思い、取材という形で矢口達の話を聞くことになる。
心霊スポットで起きた恐怖体験
待ち合わせの場所に行くと、矢口の他に職場仲間の3人がいた。
田崎正人、小野寺淳、若尾木綿子の3人。
さっそく話を聞く。
ゴールデンウィークに群馬県の工場跡地に行った4人。工場は製材所の跡地で山の中にあった。標高は高く、敷地内には事務所と住居もある。有名な心霊スポットらしい。
住居の建物を見て回る4人。住居といってもほとんど森と化していた。突如、若尾が悲鳴を上げて逃げる。他の3人も確かに見た。そこには大きな仏壇があり、位牌が3つあった。(これだけで怖がる理由はありますが省きます)
帰りに矢口はお祓いを提案する。近くに山神社という神社があったのでそこに行き、大祓を唱えたらしい。長い祝詞だが、暗記していることに呆れる南。小野寺も暗記しているらしい。こういう連中が一番厄介なことを南は知っていた。
小野寺はカメラが趣味なので、ノートパソコンでその廃墟の写真を見せてもらう。オーブが映る写真がいくつかあったり、住居だけがブレている写真を見つける。
しかし突如、パソコンがフリーズ。これで散会となる。
別れ際に、若尾が明らかに何かに怯えていたので、南は名刺交換をして後日話を聞く。
4人の様子がおかしくなる
4人と会って数日後、若尾から相談を受けた。
話を聞くと、4人とも様子がおかしくなっていた。
- 田崎…腕を悪い虫に刺されたようで、かなり悪化して仕事を休んでいる。
- 矢口…テンションが異様に高くなり、客にあだ名をつけたりエキセントリックな行動をとる。
- 小野寺…あれ以来会っていないが、結局パソコンはフリーズしたまま壊れたらしい。
若尾自身も怖い夢を頻繁に見るようになる。しかし夢の内容は思い出せない。
若尾は和歌山の旧家出身で霊感があるらしい。
かなり困っている様子だったので、南は一応、何かあったら助けることを約束する。
理不尽な恐怖。矢口たちに静かな怒りで対処
南の友人の里美は登山が趣味なので、4人が行った心霊スポットの山のことをそれとなく聞いてみた。
その山は名も無い里山ではなかった。その名も「祝い山」、神の山だった。
後日、小野寺から写真の添付とともにメールが来た。
その添付写真は、会った時に見せてもらった写真ではなかった。山の方向にモヤがある写真。かなり不気味。
矢口にメールをし、勝手に小野寺に連絡先を教えるなと怒りのメールをしたものの、矢口からは訳のわからない長文の返信が来る。
不気味な状況で埒があかないので、嫌々ながらも南は田崎たちが働くお店に行く。
ここからさらに恐怖体験に遭い、もはや自分では手に負えないと感じる南。
自分はもちろん、若尾にもあの3人と距離を置くように助言する。
後日詳しく調べてみると、祝い山は忌み山であったことが判明。そしてとうとう、南自身にも危険が及びます。
謎の腹痛で救急車を呼び入院、抱えていた複数の仕事をキャンセル。巻き込まれてさすがに可哀想。
さらに小野寺の事故死。供養のために再度あの山に行く羽目に。
ただ見えるだけの能力しか所有していない主人公の南は、どんどんおかしくなる3人の様子と頼りなさに、むしろ怒りすら感じ、大胆な行動で3人をまとめ上げる。
終盤は意外な展開で終わり、非常に面白い作品でした。
ホラー小説「祝山」の登場人物
ホラー小説「祝山」の登場人物をご紹介します。
この作品の登場人物はそう多くないので、物語が分かりやすくて助かります。
- 鹿角南(かづのみなみ)…主人公。ホラー作家。10年以上ホラー作品を書いている。見えるだけだが霊感がある。
- 芳村里美…イラストレーター。主人公とは大学時代からの友人。
- 矢口朝子…主人公と里美の共通の知人。「ガイアバザール」の店員として働く。会話が愚痴ばかりなので、南は距離を置いていた。
- 田崎正人…輸入食品を販売している「ガイアバザール」の店長。隣のカレー屋「スワミ」も経営している。小太りで明るい性格。
- 小野寺淳…「ガイアバザール」のアルバイト。カメラとバイクが趣味。陰気臭さがある。
- 若尾木綿子(ゆうこ)…カレー屋「スワミ」でアルバイトとして働く。和歌山の旧家出身。霊感がある。
ホラー小説「祝山」で良かったところ
幽霊は出ないがそれでも怖い
幽霊が出る物語ではないですが、物語の進め方や文章が妙に怖い作品でした。物語に無駄がなく最後までずっと面白い。
これは実話を元にした作品という理由もあるかも知れません。終わり方もリアルで、ある意味投げっぱなしな所も◎。
山の名前の由来が怖い
主人公の南は心霊スポットの山について、いろいろと調べます。
祝い山には実は隠された名前があり、そこで一気に怖さが増します。
忌み山の場合、山の所有者も昔の名前をあえて変えたりするので、わかりにくいこともあるのだとか。
山の土地を持っていても管理が結構大変だったり、土地の価値もほとんどなかったりで、安く手放す人も多いと聞いたことがあります。それとは別に、今回登場する忌み山という理由で手放す人もいるかもしれません。
そんな話を聞いていると、少し違う視点で怖さを感じました。
矢口の豹変ぶりが怖すぎる
この小説の一番怖いところは、なんと言っても知人の矢口です。
突然に人が変わったかのようになり、職場にも迷惑をかけ、見た目も変わっていきます。
身近にもこういう人がいそうで怖い。
終盤の主人公のタフさが素晴らしい
終盤、主人公は謎の腹痛に襲われ入院。
とうとう自分の身にも危険が迫り、むしろ怒りすら湧いてくる。
あの恐怖だった矢口に対しても、かなり強気に指図していく様が爽快。
そして、嫌いだった矢口だったにも関わらず、約束を守る決意をするシーンは少し感動すら覚えました。
主人公の頼もしさ、これはホラー小説では割と必須の要素だったりするのかも?知れません。
まとめ
この小説は初版が2007年ということで、思っていたいたよりも古い作品でした。
20年近く経過して実写映画化ということを考えると、この作品の良さが改めて認識された、ということなのかも知れません。(全然違う可能性も高いですが)
いずれにしても、こんないい作品が実写映画化されたことで、原作小説も再度注目されたと思います。
著者の加門七海さんの小説を読んだのが初なので、また他の作品も読んでみたいと思います。
映画はどんな感じなのか気になるところですが、U-NEXTで配信されたら見てみたいと思います。
Audbile(オーディブル)では今作を聴き放題で聴けます。最初の30日は無料でお試しができるので是非試してみてください。30日以内に解約すれば支払いは発生しません。


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