新庄耕さんの小説「地面師たち」の感想・解説・考察。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
ナレーションは10名が担当していて超豪華。
河西健吾、速水奨、金光宣明、疋田由香里、小柳基、川東哲也、綿貫竜之介、前田啓太、岡本綾香、篠原孝太朗(敬称略)
2024年に話題になったNetflix(ネットフリックス)のドラマ「地面師たち」と原作小説の違いをメインに書いていきます。
基本的にネタバレしていますので、その点ご注意・ご了承ください。

Audible版の「地面師たち」はドラマの役者の声にナレーターが似せています。ドラマの役者陣がすぐに思い浮かんで最高でした。
「地面師たち」ドラマと原作との違い
大筋の話はドラマと一緒
全体を通して大きく言えばドラマと原作小説はストーリーは同じでした。元々この作品は実話を元にしたフィクションなので、その理由から大きくストーリーを改変できない部分はあると思います。
ただ、細かい部分で言うとドラマと原作では結構違います。
辻本拓海
ドラマでは綾野剛が演じる主人公の辻本拓海。30後半という年齢だが原作では髪が真っ白に。(心労っぽい?)
性格は淡々としていてドラマも原作も共通しています。
過去にはタクシーの運転手をしたり、風俗嬢の運転手をやっています。ハリソン山中との出会いはドラマと原作では大筋は同じ。
拓海の家族の話(特に奥さん)が所々にあって、ドラマよりも原作の方が丁寧に人物描写されています。
後藤
ドラマではピエール瀧演じる後藤。
ドラマでも元々そこまで個人的なエピソードはありませんでしたが、原作はどちらかと言うとかなり脇役という感じ。ドラマと原作とでは人物像に大きな違いはありません。
一世を風靡した「もうええでしょ」は原作にはありませんでした。
ドラマの見どころの一つであるこのセリフはドラマオリジナルだったようです。
最後はフェイドアウトするので、生存は確認できず。
麗子
ドラマでは小池栄子演じる麗子。
小池栄子が若々しいイメージでしたが原作では50代。麗子も後藤と同じくまあまあ脇役です。
川井役を頼んだ女性はドラマでは息子の病気でお金が必要という理由でしたが、原作ではFXで失敗して多額の借金がある女性が川井役に。しかし旦那に借金がバレて川井役ができなくなる。
代わりに麗子が川井役をしますが、青柳たちを信じ込ませるシーンもかなり違います。ドラマもですが原作はより説得力が弱くて、これでよく青柳たちは信じたなと思わずにはいられません。
麗子もフェイドアウトしますがこちらも生存は不明。
長井
ドラマでは染谷翔太演じる長井。
長井はドラマと印象がかなり違いました。高身長。事故による火事で顔がケロイド状に。右目は失明している。
若い頃から数学の天才として注目されていたが、ある時を境に表舞台から姿を消す。その理由は上記の事故により顔を見せることができなくなったため(当時付き合っていた彼女と別れたことも精神的なダメージに)。
猫を飼っている点は同じ。
拓海となぜ仲良くなったのか、原作では細かく書かれています。
長井の恋の話もあったり、かなり違う部分があります。
竹下
北村一輝演じる竹下。ジャンキーな点は変わらず。
原作では有能な物件調査以外にも、宗教法人を設立してお金儲けをしている。物語後半では宗教法人での資金繰りが怪しくなってきてお金に困る竹下。
原作小説ではハリソン山中が業者に頼み、オーバードーズ(薬物の過量摂取)で殺害。過量摂取しているところを動画に撮影させて、ハリソン山中はその動画を楽しんだ。
辰さん
ドラマではリリーフランキー演じる刑事の辰さん。
池田エライザ演じる部下の刑事は登場しません。
定年退職後に拓海に近づいて捜査する辰。原作では池田エライザ役と同じような行動をします。
ドラマのようにハリソン山中に殺されることはなく生きています。
物語の終盤もドラマとほぼ同じ。ただ辰さんが定年退職してるので、取り調べは出来なさそう。
川井
ドラマでは松岡依都美演じる住職の川井。
原作の川井はドラマのようなホストにはハマっておらず、劇団を主催する既婚の年上男性と不倫をしている。
この劇団の劇場を設立するために、自身の土地を売るという名目で、ハリソン山中たちは詐欺を行う。
原作とドラマで大きく違うのがこの部分。
ドラマにするには原作通りだとちょっと地味だったのかも知れませんね。
青柳
ドラマでは山本耕史演じる青柳。
原作とドラマではほぼ同じです。かなり忠実に再現されています。
ただ、終盤に車に轢かれるものの自力で歩いてお寺まで行き川井と話す。
そして、後日会社に出社して会社のメンバーや上司に詰められます。
すんごい元気だった。
ハリソン山中
ドラマでは豊川悦司演じるハリソン山中。
原作とドラマではほぼ同じ性格で、ストーリーも大きな違いはない感じ。
ドラマよりもあからさまに悪役で、原作の方が残虐性をより強く感じました。
マイクホームズの詐欺の際に使った高齢男性の佐々木は、ドラマでは車に轢かれますが、原作では佐々木のゆかりがある長崎県で生活し、その後、謎の自殺をしています。ハリソン山中が業者に頼んで自殺させる。そのシーンを動画で撮影させてそれを見て楽しむハリソン。
終盤に拓海と決闘するシーンもほぼ同じ。
ドラマの名台詞である「最もフィジカルで最もプリミティブで最もフェティッシュなやり方でいかせていただきます」は原作にはありませんでした。
ドラマと原作の大きな違い
ドラマと原作の大きな違いは以下の3つ。
- 川井がハマっている男性はホストではなく既婚の年上男性
- 池田エライザ役の不在
- 長井は見た目の違いや、個人的な物語もあって結構違う
まとめ
ドラマ「地面師たち」にハマって原作小説も読んでみようという方も多いと思います。
原作小説はより丁寧に人物描写がされています(特に主人公)。細かい部分で言うと、この記事で書いた以外でも結構違うところが多いので、その違いを楽しめると思います。
僕はAudible(オーディブル)で原作小説を聞きましたが、ナレーションがドラマの役に声を似せているのでそこも楽しめるポイント。
ドラマの方が原作よりも刺激がありエンタメに特化して面白い。原作は人物描写が深くていい、というのが個人的な感想です。
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