新庄耕さんの小説「地面師たち アノニマス」の感想・解説・考察。
Netflixのドラマでも話題になった原作小説「地面師たち」のシリーズ3作目。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
3作目ではありますが続編ではなく、原作小説「地面師たち」の地面師たちが地面師になる前のストーリーです。
7話の短編集で地面師たち各々のストーリーをより深く知ることができます。

アノニマスを読んで1作目の物語がより味わい深くなりました。
小説「地面師たち アノニマス」のざっくりあらすじ
1話ずつざっくりと物語をご紹介します。
内容を書かない訳にはいかず多少ネタバレしているかも知れません。ご注意ください。
※登場人物の名前に関してはオーディブルで聴いたので漢字がわからずカタカナ表記にしています。
街の光 辰(刑事)
刑事の辰さん(ドラマではリリーフランキー演じる)がハリソン山中を追う過去の話。
続編の「地面師たち ファイナルベッツ」にも登場したフジモリ班長が辰さんと一緒に、過去に6億5千万円の地面師詐欺をしたハリソンを捜索。
ハリソンの若い頃の話もちょこっと出てきます。学生の頃から頭脳明晰で、学校に行きながら転売などでかなり稼いでいたらしい。
辰さんはハリソンを逮捕して取り調べをする。ドラマでは二人は面識があったようですが、一度逮捕していたようです。
取り調べをする際に辰さんの娘がピンサロで働いていることをハリソンから伝えられ動揺しまくる。
このエピソードをきっかけに辰さんの家族の話が割と深めに描かれています。
結局、ハリソンは不起訴になるという謎の結果に。
この話もそうですが、前日譚なので基本的にオチみたいなものはなく途中で話は終わります。
ランチビール 後藤(法律屋)
ドラマではピエール瀧演じる後藤。
司法書士として会社に20年以上務める。
前作の原作小説もドラマも後藤についてはほとんど描かれていなかったので、個人的には一番興味がありました。
職場では社長から次期社長を任せられ、家族ともうまくやっていた。大学受験を控える娘がいて、娘に煙たがられるもそれを悪くないと思っている後藤。
ドラマでは後藤に子供はいましたが、男の子の小学生2人が焼き肉を食べていました。原作だとこのあたりちょっと違うようです。
何もかもうまくいっていると思っていた後藤だが、あることをきっかけに、あっという間に無職になり、家族からも別れを告げられる。
飲み屋で以前から顔見知りだったハリソン山中に声をかけられ、詐欺師の仲間入りをする。(世の中に対する怒りを持って)
これを読む限りだと後藤に関してはドラマとはまあまあ話が違うようです。
剃髪 川井菜摘(尼僧)
川井が住職になる前の話。
母が癌で入院。亡くなれば川井が尼僧として引き継ぐことに。
川井の所有する土地(お寺を含む)にはドラマでも描いていた通り、更生保護施設があります。
この保護施設の管理・運営をしているのが旦那のカズキ。
カズキが更生保護施設の女性に手を出しまくり妊娠させる。その後、施設は閉鎖される。このあたりの物語はドラマ通りになるのかな?ちょっとドラマの内容がうろ覚えなところがありすいません ^^;
大学生の娘がドイツにいますが、カズキとの子ではないっぽい?カズキは再婚のように感じましたが確かなことは不明のまま。
ユースフル・デイズ 長井(ニンベン師)
ドラマでは染谷翔太演じる長井。
長井が大学生の頃の話。
起業した同級生の仕事を手伝ったり、進路の話、恋の話があります。
原作小説では数学の天才として描かれ、バイク事故で火傷し、裏社会に生きる人間として描かれていました。
数学オリンピックでは銅メダルを受賞し、防衛省のハッキングコンテストで優勝。
防衛省から引き抜きされるが一旦保留する。
長井は友情に熱い人物で、当時付き合っていた彼女を深く愛していた。人情味のある人物。
進路を決めるこのタイミングで、ハリソン山中からも引き抜きの話を受ける。
長井はとてもいい人なだけに、この物語は泣けてきます。
戦場 青柳(石洋ハウス)
ドラマでは山本耕史演じる青柳。
課長のポストにつけたのは、マツダイラという地上げ屋のおかげだったらしい。
ドラマでもそれらしい人が登場していましたが、あの人がマツダイラだったのかどうかわかっておらずすいません ^^;
いずれにしても青柳はちょっとズルい方法で情報を得て、強引に仕事を取ってきたっぽいです。
この頃からすでに地面師については知っていた。
ルイビトン 竹下(図面師)
ドラマでは北村一輝演じる竹下。
ルイビトンという馬の馬券を買って、それに手持ちのお金を全て賭けるシーンから始まる。
ルイビトンって馬だったんかい 笑。
当時は不動産ブローカーとして仕事をしていた。
シンナーで歯がボロボロだったので、500万円をかけてセラミックに治した。
この頃にもマルという太った部下がいた。竹下の部下はオロチと言い、太った人が多いっぽい。
天賦の仮面 麗子(手配師)
ドラマでは小池栄子演じる麗子。
デートクラブのマネージャーをしていた。
若い頃は親からブサイクと言われ続ける。そのトラウマの影響からか整形をしている。
過去には役所に勤めていたり、司法書士の勉強をしていたりする。
役所に勤めていた頃から内田と名乗るハリソン山中と出会っていた。
デートクラブでは自身をお客の相手とする裏技を使って、クラブの売り上げに貢献。
デートクラブに会員登録をしに来たハリソンと再度再会し、お金に困った麗子は仲間になることに。
「もうええでしょ」がとうとう原作小説にも!逆輸入的な
Netflixのドラマ「地面師たち」で話題になった後藤のセリフ「もうええでしょ」。
原作小説にはこのセリフはありませんでしたが、今作「アノニマス」にとうとう登場!
しかも、物語の中では結構無理な感じでねじ込んでいて流石にちょっと笑ってしまいました。
Audible(オーディブル)で聴きましたが、ナレーションの方も楽しそうに、声で「ドヤ顔」していて良かった。
時系列的にはアノニマスはドラマの後に書いた作品なので、あえて入れたっぽいです。
加えてAudible版はナレーターがドラマの俳優に声を似せているのでかなり面白い。
ルイビトンの理由がわかった
Netflixのドラマでは竹下がルイビトンのカバンを指差して「ルイビトン!」と唐突に言い放つシーンがあります。(このシーンかなり面白い)
アノニマスを読むことでルイビトンのこだわりの理由がわかりました。
これもドラマを経ての後付けのような気がしますが、面白いからヨシ。
ハリソン山中の小指の2連のリング
今回の短編でよく登場するハリソン山中の2連のリング。
この小指の2連のリングの描写がよく登場していて、何かの伏線のように感じました。もしかして続編あるのかな?それとも1作目2作目でこのエピソードありましたっけ?(読んだのに記憶なし ^^;)
小指は義指らしいので何か物語が隠されているのかもしれません。
Netflixのドラマが好きな方は楽しめるはず
今作のアノニマスは続編ではなく、話が進展する訳でもありません。
ドラマや1作目の原作小説をより深く味わいたい方向け、という感じです。
ドラマが好きな方は楽しめると思います!
反面、1話1話のストーリーはそこまで刺激的なものではなく、ヒューマンストーリーみたいな内容ばかりなのでちょっとパンチは弱いかも。
前日譚とは言え、先に1作目を読んでからアノニマスを読むのがおすすめです。
1作目と2作目「ファイナル・ベッツ」の記事も書いています↓
コメント