背筋さんのホラー小説「穢れた聖地巡礼について」の感想。簡単に解説と考察もしています。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
オーディブルのナレーションは中尾智さん。安定したナレーションで物語に没頭できました。
ベテランのオカルトライター、オカルトYouTuber、霊が見えるオカルトライターの3人が、ファンブックを作るにあたって人気動画の情報を集めて行く、という物語。
現代風の内容でシンプルに面白い!

背筋さんの作品が面白くて個人的にハマっています。
ホラー小説「穢れた聖地巡礼について」のざっくりあらすじ
「穢れた聖地巡礼について」の簡単なあらすじを書きます。
内容についてある程度書いていますが、重要な部分のネタバレはしていません。
「穢れた聖地巡礼について」の登場人物
簡単に登場人物について書きます。
フリーのオカルトライター小林
紙媒体メインのコピーライティングを仕事にしている小林。40代。
以前は雑誌編集社に17年ほど勤務していた。
負の感情を察知する能力がある。
また、霊的な現象を受けない体質を持つ。心霊現象に鈍感なだけかも。
YouTuberの池田
「オカルトヤンキーch」というチャンネルを持つYouTuberの池田。20代。
怖がらないYouTuberとして20万人のチャンネル登録者数を誇る。
心霊スポットへ躊躇なくガンガン進んでいくスタイルが人気を博している。
フリーのウェブデザイナーが本業で、副業としてYouTubeを始めた。
心霊現象などのオカルトを信じていない。
霊が見えるオカルトライター宝条
あだ名はお化け女。実家は神社で霊感が強い宝条。30歳。
飲み会でたまたま小林と出会い、オカルトライターの仕事をすることに。
「穢れた聖地巡礼について」の物語構成
紙媒体をメインにしているオカルトライターの小林は池田に目を付け、YouTubeのファンブックを作る企画を持ちかける。
池田の人気動画の1位から3位までの動画の内容を記事にしてファンブックに収めることにした。
動画では心霊スポットを突撃するだけの内容だったので、さらに深掘りしてその場所の情報を得るべく取材をしに行く。
- 変態小屋…変態が収集した写真がたくさんある小屋。
- 天国病院…会いたい人に会える病院。廃墟。
- 輪廻ラブホ…見ると呪われるという2枚の絵が飾られているラブホ。廃墟。
この3つの心霊スポットの物語と、途中に小林と池田の過去の話などが章として挟まっています。
霊が見えるライターの宝条はどちらかというと少し脇役という感じ。
オカルトを信じない二人
オカルトライターの小林もYouTuberの池田も幽霊やオカルトを信じていない。
これには訳があって、自身が過去にやってしまった過ちを無かったものにしたい、蓋をしておきたい、という気持ちの裏返しだった。
小林が池田にファンブックの話を持ちかけたのも訳があった。池田と会った時から「負の揺らぎ」が見えたので、池田に呪いをかけ、ファンブックも池田のYouTubeチャンネルを面白くしようと思った。
呪いと言っても「認知バイアス」によるイタズラみたいなものでしたが、見事に池田に効いてしまい、事態は思わぬ方向へ。
「穢れた聖地巡礼について」で面白かったところ
ゼロ磁場について
オカルトライターの小林は、心霊現象やオカルト現象が起きる理由として「ゼロ磁場」の影響が大きいと語ります。
ゼロ磁場は地層が変わる部分らしく、磁場がぶつかり合うので磁場が0になる。
そのため、方位磁針などが効かず、電子機器の不具合が起きやすい。
また、ゼロ磁場はいわゆる霊道とも呼ばれる。体調を崩しやすい場所でもある。
心霊現象が起こる場所はゼロ磁場であることが多いらしい。
はえ〜。面白い。
売れるためには多少の細工や嘘が必要
オカルトライターの小林は、以前は雑誌編集者に勤めていた。
真面目な記事ばかりを書くので上司から「次の記事が売れなかったらクビ」と宣言される。
これまでの自身のライターとしての矜持を捨て、大袈裟に、そして嘘を混ぜてアイドルのスクープ記事を書く。この記事は売れまくった。
会社としての評価は上がったものの、この記事によってアイドルが不審死する。
以降、売れる文章を書くには多少の大袈裟さ、嘘の内容が必要であることを実感する。
YouTuberの池田も投稿した動画に少し細工をしているらしい。
嘘でもいいから何かが起きる動画を作る。面白くなければいけない。
小林も池田もこの部分は共通していて興味深かった。
まとめ
なかなか先が読めない展開で個人的には面白い小説でした。
ただ、怖いかどうかで言うと、そんなに怖くありません。ホラー好きの僕からすると全然怖くないと言ってもいいかも。
背筋さんの作品は面白いので他の作品も読んでみようと思います。
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