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小説「ランドリー」の感想。生きることの難しさ、優しさを感じる名作

小説「ランドリー」の感想。生きることの難しさ、優しさを感じる名作 小説
この記事は約5分で読めます。

森淳一さんの小説「ランドリー」を読みました。

Amazon.co.jp: ランドリー (双葉文庫) eBook : 森淳一: Kindleストア
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2002年に映画になった「ランドリー」の原作小説の感想・解説・考察を書きます。

紙の本を所有していますがKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)で登録されているのを発見して、再度読んでみました。

gao the book
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この作品は大好きで今回で読むのは5回目です。

小説「ランドリー」の超ざっくりあらすじ

小さい頃にマンホールに落ち、その怪我で記憶が抜け落ちた主人公のテル。20歳。

祖母が経営するコインランドリーで、下着の盗みがないように見張りをする仕事をしている。

ある日、若い女性、水絵が洗濯に来る。常連ばかりなので新しいお客は目を引くし、なにより美人だ。

水絵は洗濯物を置き忘れ、テルは水絵の家まで届ける。そこから二人はお互いのことを少し知り、打ち解ける。

テルは子供の頃の怪我で過去の記憶が無く、新しいことも覚えるのが苦手になったが、とても純粋な心を持っている。

水絵は以前付き合っていた男性に不倫をされ、精神的に壊れてしまう。無意識のうちに何度も窃盗をするようになり逮捕歴もあった。人を信じられなくなり自傷行為をしていた。

人の社会で生きていくには、ちょっと心配になりそうな脆さのある二人ですが、お互い支え合って生きていく、みたいな話です。

登場人物がいい味を出している

ランドリーでは脇役に味のある人が多い。

独り言をぶつぶついう老人

同居する息子の嫁に嫌われ、毎日コインランドリーで自分の下着を選択する老人。

花の写真を撮るのが好きなおばさん

花の写真を撮影するのが趣味のおばさん。客でもあるがテルにしきりに花の写真の話をしてくる。コインランドリーにもいくつか写真を飾っている。

連敗中のボクサー

80連敗。1度も勝ったことがないボクサーの宮下。客の一人だがテルと仲が良い。

サリー

鳩を飛ばす仕事をするサリー。ヒッチハイクをしていたテルを拾い、その後、仕事に困ったテルと水絵を助ける。

荒っぽく喧嘩っ早い性格だが実は優しい。

3つのタンク

テルが住む町には3つの大きなガスタンクが見える。時折、眺めてはいつか爆発するんじゃないかと思うテル。終盤にテルと水絵はこのガスタンクが見える場所で再開するんですが、このガスタンクのある風景がいい感じ。絵になるというか。

こんなやつ↓

口笛を吹く少年の話

テルがおばあちゃんから聞いた「口笛を吹く少年の話」が心地よい。

ふわふわした物語で掴みどころがない話ですが、「生きていればいろんなことがあるけど、まあ、なんとかなる」個人的にはそんな話だと受け取りました。

映画ではこの話がイラストレーターのMAYA MAXXさんの絵で語られています。すごくいい絵なので、映画を見たことない方はぜひ見てほしい。

原作小説と映画との比較

この小説を最初に読んだ後に映画館で映画を観にきました。

映画を観て感じたのはサリー役のイメージが小説と違うということ。サリーは山賊のようなイメージでしたが(笑)映画では内藤剛志さんが演じていて、普通にかっこいい人物だったので、そこだけ少し肩透かしな感じでした。

主役は窪塚洋介さん。2002年の映画ですがこの頃は窪塚洋介さんが映画やドラマに出まくっていた時期ですね。

主題歌も映画の雰囲気に合っていて、全体的にすごくおすすめです。小説も映画も比較できないくらいどちらもいい。

映画を再度観たいんですが、amazonのサイト上で観ることもできず、サブスクもどこも扱ってないので、レンタルかDVDを購入するしかないようです。

小説「ランドリー」は非常に読みやすい

著者の森淳一さんはロボットという映画制作会社の方です。映像を専門にしている方という先入観もありますが、映画を作る前提の小説という感じがしました。

小説は想像していた以上にページ数が少なく、無駄がありません。映画1本(2時間くらい)にまとめられるような内容になっています。

かなり読みやすく、さっと読み終えます。ちょっとした空き時間におすすめ。

あとがきで

今回読んだ電子書籍版にはあとがきはありませんでしたが、所有している文庫本には、著者のあとがきがありました。

2001年に書いたあとがきで、内容は物語についてと、最後に自身の子供が来年に生まれることについて書いていました。

とてもいい言葉だったので引用しておきます。

世の中は嫌なことたくさんあるけれどそればかりではなく、少しの良いことが悪いことを帳消しにしてくれるような気がします。だから何も気にせずに、のんびりと生まれてきて下さい。待っています。

ランドリー

この言葉はランドリーの物語を象徴している言葉でもあると思います。

最後に、あまり関係ないですが、個人的な思い出

大学3年、4年の頃に就職活動をしていたんですが、無謀にも僕はランドリーを作った映画制作会社のロボットの新卒採用に応募しました。映像を作ったこともないし、大学の専攻もほとんど関係ないのにほぼミーハーな気分で応募したように記憶しています。

当たり前のように速攻で書類選考に落ちました。

応募した際に、ロボットの会社案内が送付されてきて、その立派な冊子に驚きました。特に印象的だったのは社長の顔写真。1ページ丸々大きく扱っていて、いかつくてかなり迫力ありました。

話が少しそれましたが、小説「ランドリー」おすすめです。

Kindle Unlimitedでも読めるのでぜひ。

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