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山田風太郎の小説「魔界転生」が面白い!

山田風太郎の小説「魔界転生」が面白い! 小説
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山田風太郎さんの小説「魔界転生」の感想・解説・考察。

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上下巻の長編小説。

この作品は本のサブスク「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」で読みました。

柳生十兵衛、宮本武蔵、天草四郎、宝蔵院胤舜、などなど、江戸時代前期の名だたる剣豪、格闘に秀でた人物たちが登場します。

gao the book
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上下巻の長編小説ですが、あっという間に読んでしまうほど面白かった。

小説「魔界転生」のあらすじ

あらすじをざっくりと書きます。重要な部分のネタバレはしていません。

物語の始まり

最初は宮本武蔵の視点で始まります。江戸前期、島原の乱が終わった直後の物語。

宮本武蔵の元に由井正雪なる人物が訪ねてくる。由井は三国志で言うところの孔明として武蔵をうまく世の中で活躍させたいらしい。

この二人が話をしていたところ、島原の乱の首脳の一人である森宗意軒を見かける。森宗意軒は天草四郎と同じく討たれて亡くなっていた。

森宗意軒は二人の若い女を連れていて、唐突にその二人を刀で縦に切りつける。女の体が裂けその中から別の人間が現れる。

その一人は柳生流の名剣士、荒木又右衛門。又右衛門は去年亡くなっている。

そしてもう一人は天草四郎時貞。こちらも森宗意軒と共に亡くなっている。

森宗意軒は術を使い、死者を蘇らせたらしい。そもそも森宗意軒が死人のはず。

その光景を見た由井正雪は森宗意軒の元に行き、ひれ伏して弟子になるべくお願いする。さっきまで武蔵を説得しようとしていたのに、この素早い変わり身(笑)。由井も只者ではない。

武蔵は接触せずその場を去る。

森宗意軒が、亡くなった剣豪たちを次々と魔界転生していく

森宗意軒と天草四郎、そして由井正雪たちは、存命の名だたる剣豪たちに話を持ちかけ、魔界転生の術を仕掛けていく。

宮本武蔵を含めた5人の剣豪を魔界転生させ、江戸幕府の転覆を図る。

上巻は森宗意軒側(敵側)の話で終わります。

もうこの時点で絶望感がすごいですが、面白いところで上巻が終わっていてとにかくズルい。

主人公の柳生十兵衛登場

下巻からは主人公である柳生十兵衛の視点で物語が始まります。

柳生十兵衛の仲間には柳生10人衆がいますが、剣士としての腕前はそこまでではなく、実質的には十兵衛1人に対する剣豪5人(+天草四郎、森宗意軒)という構図。

明らかに不利と悟った十兵衛は、5人の剣士と1対1での戦いに持ち込むよう策を練る。

この作品では十兵衛は剣士としての才能もさることがなら、策士として有能な点が強調して描かれています。

十兵衛と剣豪同士の1対1の対決は読み応えあり。

柳生10人衆が次々と犠牲になりますが、なんとか敵側の剣豪を一人ずつ倒していきます。

小説「魔界転生」の面白いところ

魔界転生するにはルールがある

魔界転生の術を成功させるには色々と制限があります。

  • 死期が迫ってなお超絶の気力と体力を有する者
  • 人生に大きな悔いがある、もしくは別の人生を歩みたかった者
  • 生涯を通して深く恋慕している女性がいる者
  • その女性にあらかじめ術を施す必要がある
  • その女性の体を媒体に死者を蘇らせるが、その女性は死ぬことになる
  • 1人を魔界転生するには、術士である森宗意軒の指が1本必要になる

どうやら魔界転生の術は、どんな死者でも蘇らせられる訳ではないらしい。

術師である森宗意軒の指も1本失うので、最大でも10人までしか魔界転生できないっぽい。

宝蔵院胤舜の話が面白い

魔界転生される一人に槍の使い手である宝蔵院胤舜が登場します。

この小説はフィクションですが、僕が歴史に疎いのでどこまでが事実なのかわからず。おそらくフィクションだと思いますが、胤舜の話が非常に面白かった。

この物語の胤舜は56歳。56歳まで女性を知らず7日に一度は夢精する。精が溜まり濃縮化して限度に達した時、異常な能力を発現させるらしい。

その能力を常に高いパフォーマンスで出すために、若い女性を一人連れて行動している。女性の誘惑に負けずに、自身の強さを追求するというストイックさ。

女性の刺客(忍者?)。根来の30人の忍法僧もスパイスに

有名な剣豪の他にも、敵側には術を使う女性の刺客が複数います。この存在も物語のいいスパイスに。

一人の女性の刺客は柳生十兵衛の魅力に魅せられて寝返ったりもします。

この物語のメインの舞台は和歌山県ですが、紀州藩には根来寺の屈強な忍法僧というのがいるらしい。30名のこの忍法僧は敵の手下ではなく、かといって柳生十兵衛の味方でもない(どちらかというと敵ですが)絶妙な立場。脇役ですが物語を面白くしています。

宮本武蔵の存在

宮本武蔵が巌流島での佐々木小次郎との決闘を思い出すシーンがあります。

佐々木小次郎は「物干竿」と呼ばれる長大な木剣で戦う。その物干竿よりも長い木刀を武蔵は作っていたらしい。物干竿は聞いたことありましたが、まさか武蔵はそれよりも長い木刀で闘っているとは知りませんでした。

また、決闘の際には太陽を背にしていた。太陽の光で小次郎の目を弱らせるため。武蔵の徹底した戦略がすごい。決闘にわざと遅刻する話も有名ですね。

武蔵は佐々木小次郎について剣の天才と評していますが、柳生十兵衛と相対した時に、小次郎と同等くらいの剣士という評価をしています。

終わり方がかっこいい

終盤まで行くと最後どういう風に物語を終わらせるのか気になりながら読んでいました。

色々と問題が山積みな状況なのに、なんともあっさりと物語が終わります。

こんな物語の畳み方あるんだ、とそのかっこよさに痺れました。

そもそもがフィクションなので、きちんと終わらせる必要もないですもんね。個人的にはとてもかっこいい終わり方だと感じました。

センシティブだからポピュラーではない?

この物語はおそらく子供の頃でもかなり楽しめる内容だったと思いますが、そこまでポピュラーな作品ではありません。

その理由は結構センシティブな内容が多めなので、そこがネックなのかも知れませんね。殺戮シーンが残酷ですしエロいシーンも多め。

映画版が気になっています

調べてみると魔界転生は2回実写映画化しているようです。

どちらも見たことがないので、どこかのタイミングで見てみようと思います。

1981年版

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どちらも面白そうな予感。

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