澤村伊智さんのホラー小説「などらきの首」をオーディブルで聴きました。
2018年10月発刊。オーディブル版は2020年2月より配信開始。
今作はホラー小説「ぼぎわんが、来る」の比嘉姉妹シリーズ第3弾。
「などらきの首」は短編集になっています。
6篇入っていてどの短編も話が練られていてマジで面白かった!
比嘉姉妹シリーズは第4弾まで読んでいますが、どの話も超おすすめ!澤村伊智さん恐るべし。
ホラー小説「などらきの首」ざっくりあらすじ
6つの短編についてざっくりとあらすじを。(ネタバレはせずに)
ゴカイノカイ
何をやっても仕事が長続きしない主人公。父親はそのことを理解して持ちビルを主人公に相続した。
持ちビルである貸事務所は、なぜか5階だけすぐに退去されてしまう。
困った主人公は不動産会社の伝手でやり手の「沈め屋」を雇う。
その後、バー「デラシネ」で働く比嘉真琴にもお願いすることになる。事態は深刻な状況へ。
真琴の検証で、単なる事故物件の心霊現象ではないことが明らかに。
短編の最初からかなり面白い話です。
第一作目の「ぼぎわんが、来る」でも登場した霊感体質のある比嘉真琴が登場します。映画「来る」の小松菜奈のイメージが強くて真琴=小松菜奈のビジュアルイメージで定着してしまいました。
学校は死の匂い
小学校の体育館でキャットウォークから白い女子が飛び降りて消える、という心霊現象に遭遇する。
どうやら昔からある学校の怪談のようなものらしい。
この小説は「比嘉姉妹シリーズ」というシリーズものですが、次女の比嘉美晴が登場。美晴が小学6年生の頃の話。美晴が学校の怪談の心霊現象と謎を解いていきます。
妹の比嘉真琴と姉の比嘉琴子もチラッと登場。
ホラーというよりはミステリー要素強めの話かな?と思いきや・・・。
居酒屋脳髄談義
タイトルに脳髄とあってなかなかすごそうな談義。
いつもまともに仕事ができず迷惑ばかりかけている女性のはるみ。会社の上司たち3人と居酒屋で飲み会をすることに。
どうやら上司たちは、はるみをいびる為に飲み会に誘ったらしい。
男女の考え方や生き方の違いに関する話題を上司たちが立て続けにはるみに浴びせる。
「こんな知識持ち合わせていないだろ?」と言わんばかりに質問攻めするが、今日のはるみはどうも様子がおかしい。
はるみは豊富な知識で上司たちの講釈を完璧に言い負かしてしまう。
戸惑いを隠せない上司たちは、何か全体的に状況がおかしいことに気づき、恐怖に総立ちする。
この話はめちゃくちゃ面白くて、短編の1つにするには勿体無いくらいです。
悲鳴
ホラー映画同好会に在籍する大学生の主人公(女性)。
同好会ではホラー映画を撮影していて、俳優の一人として主人公も参加している。
同好会は人数こそ少ないものの、脚本を書く人物や俳優、ホラー映画に詳しいOBもいて、一応映画のテイをなしつつ撮影をしていた。
映画撮影が続く中で、ある日、部員の一人が他殺体で見つかる。続けて主人公も黒尽くめの謎の人物に追いかけられる。
その謎を解明する物語。この話はミステリー要素が強めの話でした。
同好会のOBのセリフ「ホラー映画は物語や俳優どうこうよりも、悲鳴と逃げ惑う姿が一番需要」が印象的でした。
ファインダーの向こうに
「ぼぎわんが、来る」でも活躍した心霊ライターの野崎が登場。
野崎の仕事仲間が主人公。一緒に心霊雑誌の記事を書くことに。
昔、写真撮影を依頼していたカメラマン明神(みょうじん)に久しぶりに仕事の依頼をする。
明神は90年代にカメラマンとして随分と活躍していたが、威張り散らしてスタッフをこき使っていた代償として、現在は全く仕事が無くなっていた。
とあるスタジオで心霊現象が起こるということで、そこで撮影をお願いする。
明神はファインダー越しにだけ見える心霊現象に仰天する。
野崎たちは心霊現象の謎を探るべく、バー「デラシネ」の比嘉真琴を訪ねる。
野崎と真琴が初めてここで会うことに。時系列的には「ぼぎわんが、来る」より随分前になるのかな。
真琴は昼間に外に出るとカラスが寄ってくるという体質があるんですが、この話でもバッチリとカラスが寄ってきていました。
めちゃくちゃ泣ける話でこの話もかなりの名作。
などらきの首
最後の短編は表題作なので読む前からハードルが上がっていました。
最後の短編まで読み進めて来て、この短編集は只者ではないということがわかっていたので、気を緩めず読んでいましたが(実際には聴いて)、やっぱりすごい物語でした。
怖さレベルで言うとこの短編が6つの中で一番怖かった。
この作品も野崎が登場して重要な役割を果たします。
野崎が高校受験の頃の話(高校三年生)。
野崎の友人の祖父の住む地域では「などらきの首」なる逸話?、伝承?みたいなものがあって、友人の寺西に相談を持ちかけられていた。
野崎は友人の祖父の家に受験合宿と称して泊まり込むことに(時期は夏休み)。
寺西がいとこにいじめられていた話や、近くの山にある「などらきの首」が祀られる洞窟の話が絡み合って面白い展開に。
野崎は完璧に謎を解き明かしたと思ったが、話は当然のように簡単に終わらなかった。
この物語は途中で終わった感じが強くて、是非とも続きを知りたいな〜。
めちゃ怖、めちゃ面白い。
オーディブルのナレーションについて
「などらきの首」もそうですが他の比嘉姉妹シリーズはナレーションを声優の安斉一博さんが担当しています。
安斉さんは僕が一時期ハマっていたスマホゲームの声優もしていて以前から知っていました。
ベテランなのでやっぱり安定感があって安心して聴けますね。
ただ、この物語の登場人物は口の悪い人たちが多く、聴く人によってはもしかするとこのナレーションに対して不快感を覚えるかも知れません。それだけ演技力が高いということの裏付けでもありますが。
僕自身もなんて口の悪い人たちばっかなんだと苦笑せずにはいられませんでした。
まとめ
「などらきの首」は面白い?つまらない?駄作?と問われれば、自信を持って「めちゃ面白い!」と答えます。
この作品も含めて、澤村伊智さんの小説は、手抜きは一切なくて読者をただただ楽しませることに力を入れていることが伝わってきました。
こうなるんだろうな、という予想を毎回覆されてしかも面白い。恐ろしい作家さんです。一番ホラーかも。
比嘉姉妹シリーズは第一弾から第四弾まで感想を書いていますのでチェックしてみてください↓
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