森博嗣さんの小説「夏のレプリカ」の感想・解説・考察。
とうとうシリーズ7作目まで読み終えました(聴き終えました)。
この作品も毎度お馴染みAudible(オーディブル)で聴いています。
オーディブルの朗読はこのシリーズ通して池添朋文さん。相変わらずの安定感!

今回もさっぱり犯人がわからず ^^; 最後はとてもセンチメンタルな気持ちになりました。
小説「夏のレプリカ」のざっくりあらすじ
オーディブルで聴いているので名前の漢字がわからず、カタカナ表記していますのでご了承ください。
序盤が妙に怖い
前作「幻惑の死と使途」は奇数章のみで物語が進行。今作は前作と並行して進む物語で、偶数章のみの構成になっています。
前作では西之園萌絵と学生時代からの親友、簑沢杜萌(みのさわ ともえ)がマジックショーを見に行きました。今作はその後の杜萌視点の物語。実は萌絵に恋人のことを話したかったが、うまく着地しない恋だったため、話をできなかった。
夏休みを使って実家に帰省した杜萌。事前に帰ることを伝えていたのに、家には誰もいなかった。
翌日、3階の兄の部屋に行くも鍵がかかっていた。そして、結局朝になっても誰も帰って来ない。家政婦に連絡すると、父から家政婦へ電話があり「3日間は来なくていい」という連絡を受けていた。
杜萌本人には誰からも連絡がなくモヤモヤする。家のインターホンが鳴るが出てみると誰もいない。部屋から物音がするも勘違い。不穏な空気が漂う中、結局、家の中で仮面をした若い男に拘束される。
序盤のこのシーンですが、仮面の男が登場するまでかなり怖かった。何も出てこない方が怖い。森博嗣さんがホラー小説を書いたらヤバそう ^^;
二つの謎の死体。行方不明の兄。
仮面の男が言うには、昨日の夜に両親と姉を蓑沢家の別荘に拉致したらしい。
そして杜萌もその男と車で別荘に行く。
仮面の男は別荘に着くとすぐに去り、その後、車内で若い男女の死体が見つかる。
その若い男女は杜萌の両親と姉を拘束していた犯人グループだったため、ひとまずは全員無事解放される。
しかし、杜萌の兄は行方不明に。
この誘拐拉致事件では、杜萌の行動にいくつか不審な点があったり、杜萌の兄の不在がかなり不気味。
今作では別荘が長野にあったため、長野県警の刑事、西畑警部が捜査をします。この警部が非常に有能で、西之園萌絵も好意的に接します。犀川の登場は遅く、いつもは犀川が考えているところを代わりに西畑警部が謎を解く(中盤くらいまで)、みたいな展開になっています。
ちなみに、杜萌の父は県会議員をしていて裕福。過去に汚いお金に手を出していたこともあるらしい。犯人グループは人質を取り身代金を要求していましたが、何者かに殺害され失敗しています。
杜萌の兄
杜萌が実家に帰ったのは2年ぶり。兄に最後に会ったのは3年前。この時点で杜萌が家族とまあまあ疎遠なことが分かります。
兄のモトキは目が見えない。美形の詩人で詩集を何作が出版していた。4年前にはテレビにも出て人気があった。
3年前の夏、杜萌とモトキの間に起こった出来事がきっかけで、兄の部屋には鍵をかけるようになる。食事も母だけが持って行くという徹底ぶり。
蓑沢家の拉致事件は長野県警が担当し、兄のモトキの失踪事件は那古野県警の管轄となる。
西之園萌絵は杜萌とは学生時代からの友人で、家にも行っていたことがあり、過去にモトキと面識があった。モトキの詩集も2冊持っていた。萌絵は前作のマジシャンの事件と並行して、杜萌の家の事件の話も聞き、いつものように那古野県警の人たちから情報を収集する。
仮面がなぜか二つあった
蓑沢家では時々(定期的に?)パーティーをしている。親族が集まっていた。父が県会議員という仕事柄、さまざまな人たちと交流があるらしい。
その中に佐々木睦子(愛知県知事夫人で、旦那は西之園萌絵の叔父)もいた。
物語の中盤あたりは蓑沢家の親戚が登場します。杜萌と杜萌の姉はモトキと血が繋がっていない(母が違う)。
西畑警部は犯人が残した車の中に仮面を発見。杜萌を拘束した男が被っていた仮面と合わせてなぜか2つあった。(この仮面は両方とも蓑沢家に飾っていたもの)
1つは目の部分に穴が空いていない仮面。被ると見えなくなるので、なぜこの仮面を選んだのかがわからない。
二つの仮面と、二人の死体、兄のモトキの失踪。この3つの謎が今作のキーになっています。
終盤にやっと犀川が登場
今作は前作のマジシャンの事件が並行してあり、萌絵も犀川もマジシャンの事件で手一杯でなかなか登場せず。
犀川先生に至っては終盤にやっと登場。萌絵から杜萌の事件の話だけは聞いていたが、かなり初期から答えを見つけていたっぽい。
前作で萌絵は杜萌に犀川を紹介したいと思っていたが、やっと時間が取れ東京で3人会うことができます。この3人の会話が面白く見どころの一つ。
この時点でマジシャンの事件はほぼ解決していて、萌絵も杜萌の事件に向き合う時間を作れるようになる。
終盤に萌絵と杜萌がチェスをするシーンが印象的。
チェスをしながら萌絵が全ての謎を解明して終わります。
かなり話を飛ばしながら書いていますが、大まかにはこんな感じでの物語です。
小説「夏のレプリカ」の主な登場人物
オーディブルで聴いているので名前の漢字がわからず、カタカナ表記しています。
N大工学部側の人たち
- 犀川(さいかわ)助教授…N大工学部建築学科助教授。35歳。天才的な頭脳を持つ。多重人格者。
- 西之園萌絵…N大工学部建築学科4年生。記憶力がすごい。チェスも強い。
- 国枝桃子…N大工学部建築学科助手。萌絵にちょっと仕事を手伝ってもらう。かなり脇役。
- 佐々木睦子…愛知県知事夫人。旦那は西之園萌絵の父の妹。若い頃は萌絵に似ていたらしい。
蓑沢家側の人たち
- 簑沢杜萌…23歳。T大学大学院生。情報工学を専攻。萌絵とは学生時代からの幼馴染で親友。
- 簑沢サナエ…杜萌の姉。24歳。杜萌とは生活が正反対だが妹思いの優しい姉。
- 簑沢モトキ…杜萌の兄。24歳。目が見えない。杜萌とは血のつながりがない。詩人でルックスも抜群。過去にはテレビ出演もしていた。
- サエキチエコ…家政婦。簑沢家で働き始めてまだ八ヶ月ほど。
- 蓑沢ヤスシ…杜萌の父。県会議員。
- 蓑沢ショウコ…杜萌の母。杜萌とサナエの母親。モトキは前妻の子。
- ミズタニ…蓑沢家の別荘の管理人。
- 蓑沢コウキチ…82歳。
- 蓑沢ミキオ…50代。コウキチの一人息子。画家で絵を教える仕事もする。
- スギタコウゾウ…議員秘書。お金の管理などもしている。身代金を用意していた。
犯人側の人たち
- アカマツヒロノリ…杜萌を拘束した犯人。グループのリーダー格。
- トリイケイゴ…蓑沢家の別荘にいた犯人グループの一人。車内で死体で発見される。
- シミズチアキ…同じく、蓑沢家の別荘にいた犯人グループの一人。車内で死体で発見される。
警察の人たち
- 西畑…長野県系警部。三浦警部より2つ先輩。思考が犀川に似ていて萌絵も好意的。
- ホリコシ…長野県系警部。西畑の部下。
- イマオカ…長野県系警部。西畑の部下。杜萌の家を見張る。
- 三浦…那古野県警警部。切れ者の刑事。
- 鵜飼…那古野県警警部。萌絵に好意を抱く刑事。熊のようにでかい。
小説「夏のレプリカ」面白かったところ
小説「夏のレプリカ」で面白かったところをご紹介します。かなりサブ的な要素ばかりでネタバレはしていませんが、一応内容に少し触れるのでご了承ください。
佐々木睦子の登場
杜萌の父が県会議員をしている関係で、今作では愛知県知事夫人の佐々木睦子が登場します。シリーズでも何度か登場している萌絵の叔母。
この物語では萌絵の父が偉大で、父の弟も那古野県警のトップ。権力があり、お嬢様である萌絵に強く出れる人物は少ない。そんな中、萌絵や犀川にバンバンと物申す佐々木睦子の存在が頼もしい。
佐々木睦子の登場が今作の面白さに一役買っています。
犀川の研究室に佐々木睦子が行き、萌絵の話をするシーン。いつもはクールでローテンションな犀川も睦子にはタジタジ。事件に首を突っ込む萌絵に、犀川から首を突っ込むなと言ってほしいとお願いされる。
でもでもと反論する萌絵に睦子が放った言葉が強い。
デモもバリケードもありません。
夏のレプリカ
事件に対して「どれも算数のように答えがあるわけではない。あまり首を突っ込むな」と言われ、しょぼんとなる萌絵。
犀川からも「事件に首を突っ込まない方がいい」と言われショックを受ける萌絵。この姿もなかなか新鮮でした。
犀川の車が来る
前作で犀川は萌絵が薦めた車を購入していました。その車が今作で到着したようです。
まあ、本当にどうでもいいっちゃいいですが 笑。
儀同世津子が妊娠
犀川が東京に行った際に、兄妹である儀同世津子の家に行く。
犀川も知らなかったが世津子が妊娠していることを知る。これはめでたい。
儀同世津子もシリーズを通してちょいちょい登場していて、いいキャラクターです。
まとめ
今作は蓑沢杜萌が主人公ということもあって、シリーズ作品の中ではスピンオフみたいな印象を受けました。いつものメンバーの活躍が少な目。
ネタバレするのであまり書けませんが、個人的には序盤のストーリーはホラー要素が強くて楽しめました。
キーである杜萌の兄がほぼ登場しないことと、杜萌自身の言動や行動に不可解なことが多く、全体的にモヤモヤしながら読んだ(オーディブルなので聴いた)感じです。
最後に犀川と萌絵が無言で電車に乗って帰るシーンが非常に良かった。言葉にできない感情が伝わってきました。
シリーズも残りあと3作。次作も楽しみです。
Audible(オーディブル)ではシリーズ作品全てが聴けるのでチェックしてみてください。
前作の感想も書いています↓









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