鈴木光司さんのホラー小説「ループ」の感想・解説・考察。

2001年発行。
リング、らせん、と続いて今作のループで完結。シリーズとしてはその後、3作あります。
ハードカバーで紙の本を所有していますが、今回はAudible(オーディブル)で聴いてみました。
オーディブルのナレーションは丸山雪野さん。リングのナレーションも担当されていたので安心感があります。とても聞きやすいナレーション。
ループを最後に読んだのは20年以上前。 ほとんど内容を覚えておらず、初めて読む感じで楽しめました。リングシリーズが6冊ある中で、どの作品も2度以上は読んでいるのですが、ループに関してはもしかすると1回しか読んだことがないかも。
角川ホラー文庫というジャンルですが、リングのようなホラー要素はあまり無く、SFとミステリーがメインになっています。

リングでは高山竜司が「生命の誕生には何者かが介在していないと説明がつかない」と言っていましたが、今作では生命の誕生の謎について、より掘り下げた物語になっています。
ホラー小説「ループ」のあらすじと感想
ループのあらすじを書きます。途中までは割と細かく書いていますが、後半はネタバレになるので大まかな内容だけ書いています。ネタバレはしていませんので、その点はご了承ください。
重力異常と長寿村の分布図の一致
主人公は10歳の馨。
馨の父は大学教授。以前は人工生命開発プロジェクト「ループ・プロジェクト」の研究者の一人だった。
馨はある日、世界の重力異常がある場所と、長寿村の分布が一致することに気づく。
父と母にそれぞれの分布が示された世界地図を見せる。母はもちろん、父の秀幸ですら知らない情報だった。
生命と重力の間には何か関係があるのかもしれない。この問いが物語の発端となります。
10歳ながら直感力に優れた馨、アメリカの民俗学に詳しい母、荒っぽいが聡明な父という家族構成。
転移性ヒトガンウィルスの蔓延
第2章では時間が経過し、馨は20歳の大学生に。
49歳の父は転移性ヒトガンウィルスに感染。臓器の多くを取り除き、もう長くはなかった。
馨が病院に見舞いに行く中、杉浦礼子とその息子亮次と出会う。
亮次も父と同じく転移性ヒトガンウィルスに感染していた。
馨は礼子を好きになり肉体関係を持つ。しかし、礼子もまたガンウィルスのキャリアで、馨にウイルスが感染する。
転移性ヒトガンウィルスはすでに数百万人が感染していた。多いと言っても全人口の1%。しかし父の周りに感染していない人間はいなかった。不思議なことにループ・プロジェクトに関わった研究者たちが転移性ヒトガンウィルスで次々に亡くなっていた。
人工生命開発プロジェクト「ループ・プロジェクト」
父のガン細胞を調べている斉木助教授から、ガンウィルスの塩基配列を教えてもらう。
馨はその塩基配列から、ある一定のルールを見つける。遺伝子は全部で9つしかない。9つの数字はどれも「2のN乗掛ける3」だった。
人工生命開発プロジェクト「ループ・プロジェクト」は生命の誕生をコンピューターで再現する研究。しかしループの世界はガン化してしまい、凍結を余儀なくされる。
馨は父の後輩でループ・プロジェクトを一緒に研究していた天野に会いに行く。父の20年以上前の職場で働く天野。そこでループ・プロジェクトの話を詳しく聞く。
ループ・プロジェクトには、64万台(日米で合わせて128万台)の並列コンピューターを使った。地下空間に並ぶ圧倒的な数のコンピューター。想像するとちょっと怖い。
天野からケネス・ロスマンの話を聞く。一度、馨の家にも遊びにきたアメリカのループ・プロジェクトの研究者だった。ケネス・ロスマン曰く、キーは高山だと言い残した。
「転移性ヒトガンウィルスの正体がわかったかもしれない、カギを握るのはタカヤマだ…、なんだか思わせぶりなセリフでしょう」
ループ
第3章からはアメリカへ行き、ガンウィルスから助かる方法を探す
馨自身も含め、身近な人の命の危機が迫り、転移性ヒトガンウィルスから助かる方法を探すために、単身でアメリカへ行くことを決意。
目的地はアメリカのニューメキシコ州ウェインスロック。砂漠のど真ん中の、ほとんど廃墟のような街へ。
ここからはネタバレになるので割愛しますが、リング、らせんの物語にはなかった事実が明らかになります。
ホラー小説「ループ」の登場人物
小説「ループ」の主要な登場人物を書きます。
- 二見馨…主人公。20歳の大学生。
- 二見秀幸…馨の父。人工生命開発プロジェクト「ループ」の研究員を務めた後、大学教授に。
- 二見真知子…馨の母。大学ではネイティブアメリカンの民間伝承を専門にしていた。かなり詳しい。
- 杉浦礼子…30代前半。息子が転移性ヒトガンウイルスに。自身もキャリアを持つ。馨と恋人になる。
- 杉浦亮次…12歳。転移性ヒトガンウイルスに感染。
- 斉木助教授…馨が在籍する大学の病理学教室の助教授。父のガン細胞を調べてくれている。
- 天野徹…40代後半。秀幸の後輩で一緒にループ・プロジェクトの研究者をしていた。微生物学を専門とする。
- ケネス・ロマン…アメリカでのループ・プロジェクトの研究者。馨の家にも一度遊びに来ていた。
- クリストフ・エリオット…ループ・プロジェクトの創始者。高齢だが子供のような目をしている。
- ハナ…31歳の看護師。子供が二人いる。
- 高山竜司…リング、らせんでも登場したキーマン。今作ループでもやはり鍵になる人物。
ホラー小説「ループ」で怖かったシーン
ループではほとんど怖いシーンがないですが、唯一怖かったのは、良次が亡くなるシーン。白目になり病院の非常階段から飛び降りる。
飛び降りに至るまでの物語、母の礼子が泣き叫ぶ、一体何が起きようとしているのか馨が理解しかねている状況からの、唐突な飛び降り。
かなり不気味な怖さがありました。
リング、らせんの物語と繋がり、完結
らせんのラストでは、リングウイルスが世界中に蔓延し貞子が増殖。絶望的な終わり方をしました。
今作のループでは、この絶望的な世界の終わりを主人公が救うべく動きます。
著者はこの完結までを考えて、リング、らせんを作ったのかな?
それにしても壮大な物語。
小説「ループ」で良かったところ
リング、らせんを読んでいなくても楽しめる
リング、らせんを読んでいなくても、ループから読んでも楽しめます。
と言うのも、中盤にリングとらせんのストーリーがまとめてわかりやすく書かれているので、読んでいなくてもほぼ問題ありません。
それは別として、リング、らせんはそれぞれがとても面白い作品なので、ループを読んだ後にじっくり読んでみるのもおすすめです。
リング、らせんで描かれていなかった新事実
リング、らせんの物語を追体験する主人公。
そこでは、リング、らせんで描かれていなかった高山竜司の物語が明らかになります。
小説「ループ」でよくわからなかったところ
インディアンの生活のVRは意味があったのか?
主人公の馨がウェインスロックへ行き、コンピューターを使ってVR体験をします。生々しいインディアンでの生活を体験。
この物語は何か意味があったのか、読んだ後も理解できず ^^;
家族の死の疑似体験をすることによって、ループ世界を助ける使命感を得た、ということだと思いますが、それにしても結構ページを割いていたので、少し疑問が湧きました。
NSCSなる装置がよくわからない
NSCSなる装置が登場し、馨は別次元の世界へ行きます。
NSCSは、ニュートリノ・スキャニング・キャプチャー・システムの略。脳の活動状態や心の状態、記憶を含めた、生体が持つすべての情報を三次元情報として記述できる装置。らしい。
馨がバラバラに細かくなり別世界へ行くシーン。このシーンはまさにSFでした。
ぶっ飛んだ内容なのでちょっと理解が及びませんでしたが、こういうこともきっとあるんでしょう。
まとめ
この小説を読みながら、学生の頃に理科の実験で顕微鏡を使って小さな世界を覗いていたことを思い出しました。
量子世界もまたもう一つの地球のような感覚がありますし、宇宙規模で見ると地球で生活している人間も、顕微鏡で誰かが覗いているような感覚があります。
マトリョーシカのような、入れ子構造のように無限に続く世界。
ふと、この世界も誰かが作ったものでは?と誰もが一度でも考えたことがあると思いますが、そんなSF物語でした。
スケールがデカすぎて、ちょっと置いてけぼりになった感覚。はえ〜、という感じで二の句を告げず…みたいな感じです。
個人的には、リング・らせんくらいの同じレイヤーに住む物語がしっくりきました。
物語としてきちんと完結しているので、リング、らせんと読んでいる方は是非ループも手に取ってみてください。
Audible(オーディブル)ではリングシリーズが全て聴けます。最初の30日は無料でお試しができます。30日以内に解約すれば料金は発生しません。

また、電子書籍の読み放題のKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)でも読めるタイミングがあるので、こちらもおすすめです。

そう言えば、ループだけ映像化されていないので、その点は謎です。なかなか映像化が難しそう物語ではありますが。
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