柚木麻子さんの小説「終点のあの子」の感想・解説・考察。

2010年5月発刊。
この小説はAudible(オーディブル)で聴きました。
オーディブルのナレーションは東海林亜祐さん。とても聞きやすいナレーションでした。
女子高生たちの物語が4つ収められた短編集。
オーディブルを契約していなければ、おそらく手に取らなかった作品です。映画化されると言うことで気になって聴いてみました。
柚木麻子さんの作品がそもそも初めてだったので、新鮮な気持ちで物語を楽しめました。

カバーのイラストがとてもいい。
小説「終点のあの子」のあらあすじ
小説「終点のあの子」の簡単なあらすじを書きます。ネタバレはしていません。
4つの短編ですが物語は一つに繋がっています。
フォーゲットミー、ノットブルー
物語は高校の入学式から始まる。
主人公の希代子と、外部の学校からきた朱里がメインの物語。
この学校の生徒の多くは家族と海外旅行の経験があり、お金持ちの学生が多いようです。お嬢様学校なのかな?
朱里の父は有名な写真家で、朱里自身も海外生活の経験が豊富。美的センスがあり、クラスの誰とでも話をしてかなり社交的。だが、空気を読まない性格で(KY)、よく学校を休んでもいた。
希代子は真面目な性格なので、そんな朱里に惹かれるが、段々と朱里の身勝手さに嫌悪感を覚え、敵対するようになる。
クラスでのグループ、カーストなど、学生なら誰もが経験したことのある人間関係がリアルに描かれています。
タイトルは絵の具の色。希代子も朱里も美術(芸術)を学んでいるので、物語に美術系統の話が出てきます。
なかなかに壮絶な内容で、読んでいるだけで心をすり減らされました。
甘夏
主人公は奈津子。希代子とは中学時代からの幼馴染で、クラスも一緒だが段々と疎遠になる。
物語は奈津子が夏休みに一ヶ月だけ市営プールでバイトをする話。
バイト先のおばさんから配られる甘夏。大量にあるが、名前とは裏腹に酸っぱさしかない果物。他のバイトたちからは人気が無く、余る甘夏。奈津子は申し訳ない気持ちから毎日少しずつ持って帰るものの、家の冷蔵庫は甘夏だらけになる。
おばさんは仕事に厳しいが、甘夏を気に入ってくれたと思い、それ以来、奈津子と仲良くなる。
プールのバイトを紹介してくれたみっつー(あだ名)。ガソリンスタンドでバイトをしている。バンギャで、推しがガソリンスタンドに給油したという噂を聞き、その理由だけでそのガソリンスタンドでバイトをしている。推しが給油しにきた際には「最高の仕事をしたい」と頑張る。
プールのバイト先にいる大学生の男との恋。みっつーの恋の行方。
タイトル通り、酸っぱさしかない夏の物語。
前向きな感じで終わるので、1つ目の物語よりもすっきりとして良かったです。
ふたりでいるのに無言で読書
主人公は恭子。
希代子や奈津子と同じクラスで、美人でかっこいい彼氏がいる。
下校時には彼氏の車が迎えてくれ、学校でも憧れの的の恭子。
しかし、夏休み前に別れ、荒れていた。
恭子の家はクリーニング屋をしている。店名は「おしゃれ帝国クリーニング菊池」。お嬢様の生徒ばかりなので、恭子は家のことをあまりおおっぴらにはしていない。
彼氏と別れたことで、夏休みはやることがなかった。
暇つぶしに行った図書館で、早智子と遭遇する。早智子はオタクグループの一人で、恭子はまず関わらない生徒だった。
やがて二人は仲良くなり、読書をしたことがない恭子だったが、本を読むことで一人で何かを楽しむ、という新しい発見をする。
二人とも全く違う世界観を持っていたので、お互いに新鮮な発見があり、それぞれの立場で良いところが見えた。
恭子に変化の兆しが見えたので、いい終わり方でした。
オイスターベイビー
主人公は朱里。高校を卒業して大学生に。
大学4年になり就職活動を背景にした物語。
大学生になってから親友になった杉ちゃん。杉ちゃんはアルバイトをしながら絵の仕事をしていた。素晴らしい絵の才能を持ち、住んでいる地域でも人気があった。
朱里は同じ大学の彼氏と付き合っているが、ちょっとしたことですれ違いになり、同じ大学の学生と付き合ったりもする。
高校時代の朱里と変わりはなく、やはり自由奔放。しかし、センスや才能は高校の頃に比べて色褪せていた。
なんでもできるというあの自信と才能に、かげりが見え、さらに周りからどんどん人がいなくなっていくのを実感する。自分を顧みる朱里。
終盤の杉ちゃんと本音で言い合うシーンは見どころの一つ。
小説「終点のあの子」の登場人物
- 立花 希代子…高校生。父はドバイで単身赴任、母はアンティークショップの店長をしている。夏休みにはドバイに旅行へ行く。
- 瑠璃子…希代子の母のお店でバイトをしている。美術大学の大学院生。美人で希代子にとって憧れの存在。
- 奥沢 朱里…高校生。父は有名な写真家。桃のようなほっぺをしている。海外での生活や旅行経験が多く社交的。さまざまな事に対してセンスがあり、クラスでも浮いた存在。
- 森 奈津子…希代子と中学生の頃からの幼馴染。一緒に登校をしていたが、高校生になってから疎遠気味。
- 菊池 恭子…クリーニング屋の娘。美人でかっこいい彼氏がいたが別れる。クラスでのカーストを最も意識したキャラクター。
- 保田 早智子…オタクグループに属する一人。父は大学教授。読書が大好き。
- 杉ちゃん…朱里の親友。バイトをしながら絵を描く生活をしている。絵の才能は地元でも評判。男気のある熱いキャラクター。
小説「終点のあの子」の感想
読み終わった後は、妙にどっと疲れが来たのと、新鮮な甘酸っぱさが残りました。
僕の高校は共学でしたが、女子校や男子校もおそらく同じか、それ以上に人間関係で色々ありそう。
短編のそれぞれにこれといったオチはなく、さらっとした感じで終わります。読者にその後の物語を想像させる余白。自分の高校時代をついつい思い出してしまう作品でした。
思えば、学生時代の人間関係に比べれば、社会人になってからの人間関係の方が楽な気がします。
嫌な人間がいれば距離を取ればいいですし、最悪会社を辞めるという手段も取れなくもありません。しかし学校は同じクラスであれば、なかなかに逃げ道がない。
ただ、学生時代のこの経験は、人との接し方を育てるいい場所だったと思います。
もう学生の頃には戻りたくないな〜 笑。
Audible(オーディブル)では聴き放題で聴けるので是非聴いてみてください。女性のナレーションが心地よく青春物語とマッチしていました。最初の30日は無料でお試しができます。30日以内に解約すれば支払いは発生しません。



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