矢樹純さんのホラー小説「撮ってはいけない家」の感想。簡単な考察と解説。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
ナレーションは大内櫻子さん。めちゃくちゃクオリティーの高いナレーション。声の使い分けも抜群でした。
内容はミステリー要素強めの本格的なジャパニーズホラー。
ある程度内容は書いていますがネタバレはしていません。

江戸時代から続く旧家にある蔵。その2階には濡れた赤い顔が笑っていた…。ところどころ急激に怖くなるので要注意。
ホラー小説「撮ってはいけない家」のざっくりあらすじ
小さな映像プロダクション「キュープロ」に所属するディレクターの杉田佑季。本編の主人公。
山梨県にある江戸時代から続く旧家「白土家(しらどけ)」を舞台にホラードラマの撮影をしに行く。
現実の話のように見せるフィクションドラマでジャンルとしてはモキュメンタリーフィクション。低予算で2日の撮影を予定していた。
1歳年下の31歳のアシスタントディレクター阿南(あなん)と共に白土家のロケハンをする。だがそこでは不可解なことがいくつかあった。
- 築90年の古い家。蔵には2階があるが梯子がない。住人は蔵の2階の話題になると表情がこわばる。
- 白土家には古い経文があった。祖父の代から捨てないよう言われた経文。禍々しい雰囲気が漂っている。48枚もの半紙に書かれた経文で、その文字はいびつで全く整っておらずかなり不気味。
- キュープロのプロデューサー小隈好生(こぐまよしお)の再婚相手である白土紘乃(ひろの)。紘乃の実家がこの白土家。紘乃の子供の頃のアルバムを見せてもらうと、一緒に写っている犬がどんどん変わる。犬種が10年で次々と変わっていた。いや、怖すぎる 笑。
- 12歳で亡くなった6人の男児の位牌の存在。
その後、日を改めて様々な怪異を体験しつつも、一応、ホラードラマを撮り終える。
撮影の最中にプロデューサーの小隈の息子である昴太(こうた)が失踪。
撮影時にたまたま撮れた蔵の2階に映る赤く濡れた笑顔の女。
48枚の経文には順番があり、並べて繋げてみると大きな女の顔が浮かび上がる。
昴太が子供の頃から何度も見る予知夢のような不思議な夢。目が覚めると必ず大量の涙が。
アシスタントディレクターの謎の自死。
鬼の鏡という呪物の存在。その呪物を作る為に108の少女の眼球と49枚の舌を要し、術師は顔の皮が剥をされた。鬼の鏡を所有している鬼眼の娘が生まれるようになる。代々家系は守られ継続できるが呪いのアイテムなので代償も大きい。
色々と不吉な出来事がたくさん起きて、正直、オーディブルで聴いていて物語を理解するのがちょっと難しかった ^^;
後半は特に謎解き要素が強くなりますが、ところどころに登場する怖いシーンがあって気が抜けません。さらに最後のオチは震え上がるほどの怖さ。
佑季と阿南が鬼の鏡を探しに古い井戸を下っていくシーンがありますが、思わずリングを思い出しました。
ホラー小説「撮ってはいけない家」で個人的に良かったところ
アシスタントディレクターの阿南が有能すぎる
佑季の仕事の相棒でもあるADの阿南。かなりのオカルトマニアだが、中盤以降は謎を解き明かす探偵のような存在に。
頭の回転が早すぎて、佑季も阿南の行動の先が読めず困惑する。
すごく自己中な人物かと思いきや、きちんと佑季に謝るシーンもあって、人の心がわかる人物でホッと一息。
阿南の呪いの定義の話(うんちく)が面白い
通常ではあり得ないことが高い頻度で起こる。「確率の偏り」それが呪い。
世界で今までに起こった呪いの話を阿南が佑季にするシーンがありますが、どの話も面白いのでぜひ読んでみてください。
まとめ
佑季の上司である小隈の妻と前妻、そして息子の昴太。登場人物の多くが白土家と関わりがあって物語が複雑です。また、ミスリードさせる展開もあってオーディブルで聴いていてちょっと混乱しました。
今回の感想を書くにあたって、どうまとめれば良いのかかなり悩みました。話が絡み合いすぎなのよ 笑。で、こんなあっさりした感想になってるからいかんよなあと思いつつ ^^;
オーディブルで聴いた感想としては、まずナレーションがとんでもなく上手で物語の不気味さが伝わってきます。話がややこしいですが、きちんと謎は解明されて、最後は恐怖のどん底に。
王道のジャパニーズホラーが好きな方はぜひ。
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