中山七里さんの小説「嗤う淑女」の感想と解説を書きます。
初版は2015年2月。電子書籍版は2017年12月発行。
この小説はKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)で読みました。
本の紹介では「史上最恐の悪女ミステリー」という謳い文句。
悪女の名前は蒲生美智留(みちる)。頭が切れる上に誰もが驚くほどの美貌の持ち主。この二つの素質に加えて躊躇なく悪に手を染めるから恐ろしい。
既視感のあるストーリー展開ですが面白い。続編も2冊あって人気作のようです。
ジャンルは全然違いますが、ホラー漫画の「富江」のような恐ろしさを感じました。
小説「嗤う淑女」のあらすじ
小説「嗤う淑女」のあらすじをご紹介します。ネタバレはしていませんがある程度内容を書いていますのでご注意ください。
中学生の野々宮恭子は太っていて不細工、病欠気味ということでいじめに遭っていた。ある日、同い年の従兄弟である蒲生美智留が転入し同じクラスになる。
美智留の登場でいじめの標的は恭子から美智留に変わる。(標的が変わるのは色々と理由がありますがここでは省略します)
様々ないじめに遭うも全く意に介さない美智留。最終的にはいじめのリーダー格であった女子生徒を不登校に追い込む。
その後、恭子は学校で倒れ、骨髄移植が必要な難病を発症する。骨髄移植可能なドナーを探していたが見つからず。そこで、親族である美智留が了承する。
骨髄移植の手術はかなりの痛みを伴うらしいが快く引き受けてくれ、恭子は手術に成功し病状が回復。
命の恩人である美智留に恭子は恩返しをしたいと思ってた。
ある日、美智留から父親の虐待を受けているという悩みを打ち明けれらる。(美智留の母は随分前に逃亡したらしい)
美智留と恭子は共謀して父を殺害。
その後、大人になり美智留はファイナンシャルプランナーの資格を持ち会社を立ち上げる。恭子も社員として働く。
さまざまな悩みを解決する会社という名目だが、美智留の大きな策略に続け様に犠牲者が増えていく。
みたいな話です。
決して自分の手は染めずに詐欺や殺人の幇助をする美智留。巧みな話術と圧倒的なルックスがあれば人を操ることができる。現実社会でも十分あり得る話で臨場感があります。
小説「嗤う淑女」の気になった部分
美智留の最初の犠牲者(父を除いて)は銀行員の女性。
個人的には銀行員は給料も良く安定したイメージを持っていますが、この女性はストレス発散にブランド物を買う癖が抜けられず、そこをうまく利用されてしまいます。
巧みな話術で誘導していくから怖い。
あなたが大事に思っているほど、会社はあなたを大事には思ってくれません。真面目な人ほど錯覚しがちですが、会社はあなたを決して護ってくれません。
嗤う淑女
物語とあまり関係ないですが同窓会についてちょっと気になったので引用してみました。
卒業して十年近くも経てばお互いの環境は激変し、既に高らかに笑う者と陰で笑われる者に分かれてしまう。同窓会というのは、自分がどの位置にいるかを確認できる場であり、そんなところに顔を出せるのは現状を誇りたい者か、自分より不幸な人間を見つけて安心したい者しかいない。
「嗤う淑女」
二人目の犠牲者は恭子の弟。
弟はかなりの数の面接をしたがどこからも採用されず、実家で暮らしながら親の仕事の手伝いをしている。
美智留はドミノ理論の話をしたり、しきりと親を超えるよう話をする。よさそうな話だが実は裏があった。
「親と同居しているのは悪いことだって?」「少なくとも居心地はいいでしょ。飢えることはないし、雨露に困ることはないし」「そりゃまあ…」「人間ってね、不満や危険がなかったら絶対に成長しないのよ」
嗤う淑女
美智留の言葉には力があった。従えば、どんな困難も克服できるような自信が湧いてくる。カリスマというのは、彼女のような存在を指すのだと思った。
嗤う淑女
考えてみれば、自分の人生は逃げることの連続だった。
嗤う淑女
他人との競争から逃げ、社会の中で生きることから逃げ、評価されることから逃げた。自分自身を見つめることから逃げ、他人と比べられることから逃げ、最後には家族からも逃げている。
3人目の犠牲者は保険金詐欺をさせられる。
実父殺し、銀行預金横領と鷺沼紗代殺し、共犯者の抹殺、そして保険金詐欺。
およそ二十年もの間、数々の罪を犯しながら他人の陰に隠れて一度も事件の表面には現れなかった女。その美貌と話術で幾人もの男女を手玉に取り、自分の傀儡として操り続けてきた女。
まとめ
結局、美智留は警察に目を付けられて裁判沙汰になります。
続編もあるのでなんとなく想像はできてしまいますが、それにしても面白かった。
Kindle Unlimitedで続編も読めるようになるといいな〜。
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