森博嗣さんの小説「笑わない数学者」の感想・考察・解説。

紙の本は1999年7月発刊。オーディブル版は2022年6月から配信開始。
紙の本で読んだことがありますが、Audible(オーディブル)で聴いてみました。
オーディブルのナレーションは前作に引き続いて池添朋文さん。相変わらず最高のナレーションです。
犀川助教授と生徒の西之園萌絵のシリーズ(S&Mシリーズ)の3作目になります。

シリーズものは主要の登場人物が固定なので、登場人物たちの物語の変化、成長がわかります。そういうのもシリーズものの魅力なのかも知れません。
小説「笑わない数学者」のあらすじ
小説「笑わない数学者」のあらすじを書きます。ネタバレはしていません。
偉大な数学者、天王寺博士の住む「三ツ星館」。
犀川と西之園萌絵はそこで開かれるパーティーに行きます。
天王寺博士がそのパーティーの余興として、庭にあるオリオン像を消して見せる。
翌日にはオリオン像は元の場所にあり、さらに2人の遺体が見つかる。
三ツ星館はプラネタリウムのような建物で、事件はちょうどクリスマスに起こる。
犀川と萌絵は同じ部屋に泊まることになり、クリスマスにプラネタリウムで2人きりといういいシチュエーション。
二人の仲も気になりますが、いつものように謎を解決していきます。
萌絵がお転婆
3作目にして少しずつわかってきたことがあります。その一つが西之園萌絵について。
萌絵は他人の目からはお嬢様として見られていますが、実は生前の父にも内緒にしていたことが結構あります。
隠れてタバコを吸っていること。よく外に出て怪我をしていること。
上品に振る舞っているのは教育の賜物であって、実は本人、かなりお転婆な性格のようです。
今作も萌絵のちょっとしたヤンチャな行動が自身を危険に晒して、犀川が助けに行くというパターンに。
刑事さんが優秀
今作に登場する刑事さんは、犀川も認めるほど優秀。
シリーズに登場する刑事さんは時々で変わりますが(舞台が色々変わるので)、中には有能な刑事さんも登場するので、個人的にそこも注目ポイントにしています。
犀川は相変わらず
犀川は終盤に事件のアリバイを解明していきますが、犯行を犯した人物の動機には興味がありません。
この点はおそらく、シリーズ通して一貫しているようです。
小説「笑わない数学者」の感想、良かったところ
数学の天才が登場して面白い
1作目の「すべてがFになる」には真賀田四季という天才が登場します。主人公の犀川も天才で(西之園萌絵も頭の回転が早く、特に計算は暗算であっという間に算出する)天才同士のバトルがこのシリーズの見どころです。
2作目の「冷たい密室と博士たち」には相手となる天才は登場しませんでした。この点、天才同士の対決が見れなくて残念でしたが、今作の「笑わない数学者」では数学の天才が登場します。
犀川は天才と呼ばれている人物には、興味を見せます。
しかし、実際に天王寺博士に会って話をしてみると「想定通りの人物で想定外ではなかった。ガッカリした。歳をとったからかもしれない。」という印象を受けます。これはこれで失礼ですが 笑。
ただ、物語終盤ではそんなことをはなかったことに気付かされます。やっぱり天才だったんだと。
犀川と西之園萌絵の関係に少し違和感
序盤から犀川と西之園萌絵の仲が妙にいい。
前作までの流れから考えると、少し違和感を感じるほど距離が縮まっているように感じました。
大学の生徒の中では犀川と萌絵が結婚するらしいという噂まで立っていて、萌絵の友人たちが犀川の教授部屋まで来て犀川を非難するシーンもあります。(結婚するのかしないのか、はっきりしてという非難)
距離が縮まるのはいいんですが、なんかちょっと急すぎる気がして違和感はありました。
謎解きの部分は答えがわかりやすいかも
この作品に触れるのは2回目なので答えはわかっているんですが、最初に読んだ時に、普段ほとんど謎解きをしない僕でも答えがなんとなくわかりました。
ミステリーが好きな方(特に謎解きが好きな方)は多少肩透かしを感じるかも知れません。
僕の場合は謎解きというよりは、人間関係や物語を読むのが好きなので、その点はそこまで気になりませんでしたが、謎解きが好きな方からの評価は低くなるかも知れません。
個人的に印象的だった文章
天才数学者の天王寺博士の言葉が印象的でした。
「学問は虚しい。少なくとも数学者だけは自分たちは役に立つとは言わなかった。それが唯一の名誉であり真理。」
みたいなことを言っていました。(オーディブルで聴いたので、だいたいこんな感じということでご容赦を)
もう一つは、
「人類史上最大のトリック。それは人々に神がいると信じさせたことだ。」
それから、犀川が話していた内容も興味深かったです。
「鏡はどうして左右だけが反転するのか?(上下の反転ではなく)」という質問。
丁寧に説明してくれていたのに、よくわからなかった(笑)。相対的定義と絶対的定義がどうこう。理解できず。
まとめ
このシリーズは10作まであって随分昔に10作全て読んでいますが、「笑わない数学者」だけは、実はいまいちな感想でした。
ですが、改めて読んでみると、終わり方が個人的には好きな感じで終わっていて、トリックに目を瞑れば、かなりいい作品だと思い直しました。
1作目が最高潮で、2作目、3作目と少しトーンダウンしている感じは否めませんが、それでもやっぱりこの物語の登場人物やストーリーが好きです。
以降の作品はどれも面白かった記憶があるので、また続きをオーディブルで聴く予定です。
それにしてもミステリーのシリーズ作品は最高ですね。読んでるだけで幸せになります。
Audible(オーディブル)ではS&Mシリーズ作品を全て聴けるのでおすすめです。最初の30日は無料でお試しができるので、ぜひ聞いてみてください。

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