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川上未映子さんの小説「黄色い家」悲しい話だけど、温かさが心に残る

川上未映子さんの小説「黄色い家」悲しい話だけど、温かさが心に残る Audible
この記事は約5分で読めます。

川上未映子さんの小説「黄色い家」をAudible(オーディブル)で聴きました。感想と考察を書きます。

https://amzn.to/4eoQK2X

2023年2月発刊。オーディブル版は2023年6月配信開始。

Audible(オーディブル)

オーディブルのサイト内でも人気作として紹介されていたので聴いてみました。

19時間を超える長編。オーディブル作品をいくつか聴いてきましたがこんなに長い作品は初です。紙の本もページ数多そう。

gao the book
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全体的に暗い話ですが、自分を暖かく見守ってくれる人がいれば、それだけでなんだか救われる、そんな物語でした。読んだあと数日経っても黄美子さんの「はなちゃん」と言う優しい呼び声がずっと頭に残っています。

川上未映子さんの小説「黄色い家」のざっくりあらすじ

主人公は40歳の伊藤花。

ある日、吉川黄美子(60歳)という人物が女性を監禁、暴行して逮捕されたというネット記事を見つける。(その記事は既に1年が経過していた)

名前や年齢から、一緒に長く暮らしていた黄美子だということに気づく。

自分でも無意識に過去の記憶に蓋をしていたが、この記事を見て全てを思い出すことになる。

9割くらいは花の回想になっています。

花は15歳の頃に黄美子と出会う。母は水商売をしていて(スナックで働いている)お客さんや友人が時々家に泊まりに来ていた。黄美子はその一人だった。

黄美子は母の代わりに食べるものを買ってくれたり、時々一緒に買い物に行ったり、優しく面倒を見てくれていた。母は長い間、家に帰って来なかったし、父は浮気をしてどこかに消えている。

ある日学校から帰ると冷蔵庫の中がパンパンになるくらいに食べ物がつめ込まれていた。黄美子はバッタリと姿を消す。

花は学校や家庭での生活がうまくいっておらず、黄美子をいつも探していた。

17歳の高校生になり、ある日家に帰ると玄関先で黄美子が微笑んでいた。

その後、花は黄美子に誘われて一緒にスナックを始める。スナックで一緒に働く蘭や桃子が加わり4人の奇妙な関係の生活が始まる。

いろいろと物語が進んで、花と蘭と桃子3人は、黄美子の友人から紹介してもらった偽造カードの出し子という仕事に手を出していく。

この小説では「お金」が重要なキーになっています。

花の周辺の登場人物は花も含めて社会的に信用が無い人たちばかりで、そんな人たちにとって「お金」だけが自分たちを守ってくれる。

お金が大事なのはもちろんわかるんですが、社会的立場が弱い人間にとっては、僕が考えている以上にお金の存在は自分達の身を守る上で切実なものなんだなと気付かされました。

花と黄美子のスナックは建物の3階にあり、1階は食堂になっている。食堂の店主えんさんのお金の話が興味深かった。

「誰かから養ってもらったり、親のお金で生活していると支配される側になる。そのお金は自分では自由に使えない」

「自分で稼いだ自分の金だけが自分を守ってくれる」

「お金持ちはずっとお金持ちで貧乏人はずっと貧乏人。なぜならお金持ちが貧乏人から搾り取るルールを決めるから」

オーディブル版の「黄色い家」はナレーションが魅力

オーディブル版の「黄色い家」はナレーションがとにかく素晴らしいです。

ナレーションは声優の大内櫻子さん。

声の使い分け、声の安定感、感情の入り具合。もうこれ以上はないくらいの仕上がりになっています。

オーディブル版超おすすめです。

小説「黄色い家」のちょっとした登場人物がいい味を出している

黄色い家は全体的に物語の雰囲気が重苦しいんですが、ちょっとだけ登場する人がいい味を出していました。こういう人たちの存在が息抜きのように、ほっこりさせてくれました。

ごんちゃま

黄美子の昔からの友人で同じく水商売をしている琴美。

琴美は自分のお客を一緒に連れてきて、花たちのスナックでたくさんお金を使ってくれた。

ごんちゃまという高齢のお客がよかった。

ごんちゃまは様々な会社を経営して馬主でもあった。

かなりの高齢のようでほとんど喋らず、やっと言葉を発したかと思えば「フォッ!」と言うだけ。

にゃーにい

花が桃子と知り合うきっかけになったのが「にゃーにい」なる人物。

にゃーにいは桃子を連れてお客として花と黄美子のお店に来た。

にゃーにいはフリーライターで女子高生の生態について記事を書いている。

話が長くずっと喋り続ける。

そのほとんどが自分の自慢話。自分を大きく見せることに生きがいを感じている。

塾長と、じんじい

花の母親がパチンコ店で知り合った「塾長」と呼ばれる女性。

塾長は矯正下着のねずみ講をしていて、母もその仕事に誘われ、まんまと借金を背負わされる。

塾長というネーミングが秀逸。

じんじいは、花と黄美子のスナック「レモン」を貸してくれている人。

優しいおじいちゃんで、この小説の中では癒しポイントの一つ。

まとめ

長い小説ですが序盤から面白く、後半は怒涛の展開で最後まで楽しめました。

不完全で危うい人たちばかりが登場しますが終盤は泣けます。

生きることは本当につらいことばかりで、ほんの一瞬の楽しかった時を何度も思い出して、自分を慰めて生きる。僕もまさにこんな感じだなあ。

こんなに絶望的で悲しい話なのに、どうしてこんなに感動するんだろう。

花が食糧でいっぱいに詰まった冷蔵庫を開けて呆然とするシーン。黄美子と中学の頃一緒に過ごした日々。一緒にスナックで楽しく働いたこと。

お金が大事だと信じていた花が、結局最後に求めたのは、優しく微笑んでくれた黄美子だった。

読み終わった後も、この物語の映像が消えず、黄美子の「はな」という優しい呼び声が何度も聞こえてきます。

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