澤村伊智さんの小説「予言の島」の感想、解説、考察を書きます。
2019年3月発行。オーディブル版は2020年1月から配信開始。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
ナレーションは乃神亜衣子さん。ホラー小説にぴったりのナレーションで良かったです。
最初は本格的なホラー作品のように感じましたが、段々とミステリー要素が強くなって、途中で横溝正史の小説に似ていることに気づきました。作中でも横溝正史の話が出てくるので著者も確信犯ですね。
ただ、終盤に色々な要素が加わって、結果ホラーに落ち着いた感じはします。
ホラーとミステリーが交互に押し寄せてくる不思議な作品でした。
ざっくりとしたあらすじや、個人的な感想、最後にネタバレを含む解説をしていきたいと思います。
閉鎖的な島、そこに住む村民たちのじめっとした居心地の悪さに恐怖を感じました。終盤に大きく展開が変わるので、ぜひ最後まで読んでほしい作品です。
ホラー&ミステリー小説「予言の島」のざっくりあらすじ
主人公は母親と同居する天宮淳。37歳。
幼馴染で友人の大原栄作がブラック企業でパワハラを受け、精神的に参ってしまい自殺未遂をする。
もう一人の幼馴染、岬春夫と気晴らしも兼ねて3人で一緒に旅行をすることに。
岬春夫は瀬戸内海に浮かぶ小さな島「霧久井島(むくいじま)」に行くことを決めた。
霧久井島は、90年代半ばに一世を風靡した霊能力者「宇津木霊子」とテレビ番組の撮影陣が島を訪れていた。島での撮影が終わった後、宇津木霊子はすぐに亡くなり、撮影スタッフも次々に不幸なことに。結局、その撮影した映像はお蔵入りに。
3人は島に住む「ヒキタの怨霊」を確かめるべく、島での宿泊を楽しむ。つもりだったが…。
みたいな話です。
最初からかなり横溝正史っぽいホラー感があります。謎の伝承に恐れ慄く島民、そんなものは無いと思っている来訪者。田舎ならではの奇妙な風習、妙な怖さがあると横溝正史っぽい雰囲気出ますね。※金田一耕助シリーズなど
3人と同じ日に島に来た、虚霊子(宇津木霊子の大ファンで自身も霊能力者と自称する)、看護師経験がある江原数美が登場して、物語はより盛り上がっていきます。
「予言の島」の登場人物
一応、予言の島の登場人物を書いておきます。
主人公を含めた同級生3人と霊能者
- 主人公:天宮淳 強力な守護霊が守ってくれている、らしい。
- 同級生:大原栄作 仕事で鬱になり自殺未遂をする
- 同級生:岬春夫 定職につかずバイトをしながら日本のいろいろな場所に移り住む生活をする
- 宇津木霊子:90年代半ばに一世を風靡した霊能力者。テレビで活躍し、本もいくつか出版。
霧久井島に同じ日に来た旅行者
- 虚霊子:宇津木霊子の熱狂的なファン、信者。名前も微妙に似せている。自称霊能力者。
- 江原数美:元看護師。主人公は数美に最初の出会いから惹かれている。
霧久井島の人々
- 麻生:民宿の経営者。主人公たち3人が泊まる予定だった宿が謎の理由でドタキャンされる。急遽、麻生の民宿に世話になり助けられる。元々は島民ではなく、脱サラして霧久井島に。霧久井島の昔からある風習などに興味があり移り住んだ。
- 橘:霧久井島の駐在(警官)。民宿麻生のコーヒーが好き。
- 古畑:霧久井島の町長っぽい?気難しそうな人物。仙人のような見た目。
他にもいくつか登場人物はいますが、大きくは上記の人たちがメインになります。
「予言の島」は面白い?つまらない?考察を含む個人的な感想
ホラー小説「予言の島」は面白い?つまらない?駄作?と聞かれれば、面白いと答えます。
特に序盤はホラー要素が強くていい。世代的にわかる方であれば、90年代の心霊番組の話もワクワクすると思います。90年代のテレビ番組ってギラギラして面白かった。
途中から段々とミステリー要素が強くなって、犯人探しがメインの展開に。
正直なところ、中盤から終盤にかけては話が妙に長くて疲れてしまいました。
ですが、終盤に展開が大きく変わって違う意味でのホラーを味わえます。
食べるほどに新しい味を楽しめる、何層にも重ねられたパフェみたいな小説でした。
途中ダレるかも知れませんが、この小説を読む方はぜひ最後まで読んでいただければ感想も変わるはず。
最後にネタバレを含めて個人的な感想、解説を書きたいと思います。
ネタバレはダメな方はご注意ください。
「予言の島」ネタバレ部分について感想と解説
実在するのかどうかが気になって
僕は愛媛に住んでいるので、瀬戸内海の島が舞台ということもあって、少し気になる部分がありました。
まずは「霧久井島」。この島が実在するのかが気になって調べてみると、どうやら架空の島だったようです。
もう一つは、ベネッセが展開するアート活動で有名な直島や豊島などの島々。「この島々は1970年代から1990年まで産業廃棄物が不法投棄された島」と春夫が言っていたけれど、調べてみるとこれは本当だったようです。
直島や豊島は僕の家からそんなに遠くない距離ですが行ったことがありません。観光に行ったことのある友人たちの感想を聞くと誰もがすごく満足していましたが、まさかそんな過去があったとは ^^;
この話が実は伏線になっているとは思いもよりませんでした。
宇津木霊子は本物の霊能力者だったのか?
宇津木霊子の孫である江原数美(さちか)は心霊などの話を一切信じておらず、宇津木霊子の能力はインチキであることを確かめるために島を訪れた。
結局、「ヒキタの怨霊」なるものは存在しなかったことがわかります。
ただ、宇津木霊子の予言だけは当たっていて(6人亡くなるという予言)、宇津木霊子が本物の霊能者かそれともインチキだったのかは不明のまま。
90年代の霊能力者と言えば宜保愛子さんが有名ですが、宇津木霊子のモチーフは宜保愛子なのかな?このあたりちょっとわかりません。いずれにしてもホラー好きにはたまらない展開でした。
今までの話をすっ飛ばすくらいの終盤のインパクト
物語の終盤あたりまで読み進めて「この小説は結局、ミステリー小説だな」と確信をしていました。
ところが最後に大きく展開が変わります。
著者は「叙述トリック」と「ヒトコワ」を最後にぶっ込んできます。
主人公には「強力な守護霊がついている」と、霊能力がありそうな江原数美(さちか)や虚霊子に言われていました。家系的に何かそういう特殊な力を持った感じなのかな?と思っていましたが、まさかその守護霊が実在していて、しかも母親だったとは 笑。
この母親がまた結構怖くて、最後はヒトコワで終わるというまさかの展開。
足跡が2人分あったり、最後の主人公とさちかの会話で「?」と思うことはあったけれど、まさかなあ。
にしても、結構設定に無理があるような感じがしますし、それまでの物語をすっ飛ばすくらいに全部母親が持っていってしまって、びっくりしました。
でもまあ、面白かったしいいか〜。
本で読んでも面白いと思いますし、オーディブルも良かったです。
気になる方は是非。
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