彩藤アザミさんのホラー小説「読むと死ぬ本」の感想・解説・考察。

2025年9月発行。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
実話を元にした話なのかフィクションなのか、少し分かりづらい作品ですが、フィクション作品です。
著者っぽい名前の人物も出てくるので、実話とばかり思っていましたが、そこも含めての仕掛けだったのかも?
現実なのか非現実なのかわかりにくい部分もあり、全体的に不穏な空気感が漂う物語でした。

彩藤アザミさんの作品は初めてですが、想像していた以上に楽しめました。オーディブルは色々と聞けて嬉しい。
ホラー小説「読むと死ぬ本」のあらすじ
ホラー小説「読むと死ぬ本」のあらすじを簡単に書きます。ネタバレはしていません。
前書きでは、この作品は19世紀のロシアの文豪セージャ・ダビニフスの「読むと死ぬ本」にまつわるドキュメンタリーホラー。と書かれていました。
しかし、この小説を聴き終わった後にネットで調べてみると、該当の作家は見当たらず。
この作品は実話っぽいフィクション、モキュメンタリー作品のようです。
近年はモキュメンタリー作品がトレンドなのかも。最近モキュメンタリーホラーの感想を書くことが多いです。
ダビニフスの本に関わった人たちがどんどん亡くなっていき死が連鎖する、という物語。
こう書くとありきたりな物語になってしまいますが、現実と幻覚の境界線があやふやで、モヤモヤした不快感。ちょっとしたトリックも加わって、展開が読みにくい作品でした。
主人公は10年活動している作家。売れた作品が無いので焦りを感じている。
講談社の編集担当の氷上からダビニフスの「読むと死ぬ本」についての企画があり、そこに主人公も参加することに。
主人公が「読むと死ぬ本」について色々と文献を調べていくと、その作品が本当に複数の死を招いていることがわかる。
編集担当の氷上の死、認知症の母の死、ダビニフスの日本版訳を見つけた女性の死。
本に関わった人たちがどんどん亡くなり、「読むと死ぬ本」の内容について触れた文章を読んだだけで、死が連鎖する。
終盤には主人公もおかしくなり、何度もあの世のような世界に行きます。
途中で時々登場する白髪の老婆も謎で不気味。
最後まで仕掛けがあるので、ぜひ最後まで読んでみてください。
ホラー小説「読むと死ぬ本」の登場人物
オーディブルで聴いているので、登場人物の漢字がわかりません。
カタカナ表記しているので、その点ご了承ください。
- 主人公…35歳で作家としてデビュー。作家になり10年が経過。非常勤の仕事をしながら執筆活動をしている。
- 氷上…講談社の編集者。主人公の担当をしている。
- 母…認知症の主人公の母。
- 教授…主人公の飼っている黒猫。
- セイタロウ…オカルトコラムニスト・ライター。人気の作家でSNSでも多くのフォロワーがいる。
- 岬ナナト…作家志望の女子大生。氷上から目をかけられ執筆に励む。古書好きで、たまたま「読むと死ぬ本」の日本語訳を見つける。本名は岬ナナコ。
- ダビニフス…19世紀のロシアの作家。3作品を執筆し、認知症を患い44歳で亡くなる。
- ソーニャ…ダビニフスの娘。父と一緒に日本語版の本を協力して作る。出産時に20歳で亡くなる。
- 白髪の老婆…主人公やダビニフスの前に、ことあるごとに登場する。主人公は「死そのもの」と思っている。
- シギハラ イト…女流作家。ダビニフスの本を自分で翻訳。私史読本として出版。
- シギハラ ナミ…イトの兄。シギハロウと呼ばれる。ダビニフスの本を手に入れ、妹のイトに渡した。ソーニャとの間に子供ができるが、ダビニフスから結婚を反対される。喘息で28歳で亡くなる。
- 小滝田…氷上の代わりの担当者。
ホラー小説「読むと死ぬ本」の良かったところ
ダビニフスの名前
これは気づいた方も多いと思いますが、ロシアの作家「ダビニフス」の名前は、「荼毘(だび)に伏す」からもじったネーミングっぽいです。
パリ・グリーンの恐怖
読むと死ぬ本にまつわる話を集める主人公。死を招くいわゆる呪物と呼ばれるものに「パリ・グリーンの顔料」がある。
パリス・グリーン(パリ・グリーン)は、19世紀初頭のパリで生まれた明るく鮮やかな青緑色の人工顔料。非常に美しい発色があるが、銅とヒ素の化合物であるため強い毒性を持っていた。
昔の呪物にはこのパリ・グリーンを使った物があり、呪われたアイテムではなく、単純にインクに毒があったというオチ。
非常に面白い話でした。
なぜか、ジョジョっぽい言い回し
主人公が時々「じゃあないか」という特徴的な言い回しを使います。
この言い回しは漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のキャラが使っていて有名ですが、もしかすると作者がジョジョ好きなのかもしれません 笑。オーディブルで聞いた感じだと、「じゃないか」ではなく「じゃあないか」とはっきり言ってます。
ナレーションが怖い
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
ナレーションはくらうち つむぐさん。女性の方です。
このナレーションが結構怖いです。
ホラー小説のオーディブルは何作品も聴いていますが、声であからまさに怖がらせる作品はそう多くなかったので、ある意味新鮮。
オーディブルのホラー作品なら、そもそもこうあるべきなのかも知れません。
終盤の主人公の吹っ切れっぷりが見事
主人公はどうせ人間はいつか死ぬと、あるタイミングから完全に吹っ切れます。
そして、過去に恨みのあった人間に、怒涛の攻撃をする。
この捨て身の行動が鮮烈であっぱれ。読む側としては爽快でした。
実際にやってみると案外あっさりできて、こんなことを長く根に持っていたことに笑えてくる主人公。
原作本から次々に連鎖、王道的な流れ
ホラー小説といえば、鈴木光司さんの「リング」が有名ですが、この作品が登場してから連鎖するホラー作品が多くなったように思います。
本作もダビニフスの原作小説を複数の人が自分流に翻訳して印刷。小さい範囲ですが、死ぬ本のコピー本のような形で、呪いが拡散されていきます。
著者流のあの世の表現が怖い
主人公は終盤に地獄、もしくはあの世のような場所を体験します。
永遠に続くホテルの階段。パラパラとページを捲る音だけが聞こえる真っ暗な部屋。水の流れ。大河の中に呪いで死んだ人たちが流れていく(自分も流される)情景。
この独特な世界観はこの作品の一番の見どころです。
エンディングノートが良さそう
著者が本屋でエンディングノートを見て購入するシーンがあります。
自分が今抱えている悩み、できなくて残念だったことなどを書き出す。書き終わった後にほとんどは実現可能なものばかりなことに気づく。
僕の両親も高齢なので兄がエンディングノートを購入して、両親に渡していました。僕が内容を見ながら協力して書きました。
ふと、別に若い人でもエンディングノートを書くのは良いのでは?と感じたり。
主人公は作家として作品を世に出せたから、それだけでもいいじゃないか、と自分の人生に満足します。
まとめ
この作品に登場するあの世。そこでは「愛などの美しい感情なんて知ったことか」と言わんばかりの死の残酷さ、辛さが描かれていました。
ダビニフスの本に関わった人たち、印刷会社の人たち、本を運ぶ人たちまで危害が及び、割と多くの方が亡くなります。恐ろしい本!
タイトルも含めてありがちな話かな?と思っていましたが、いざ読んでみると想像していない怖さの物語で、良い作品でした。
Audible(オーディブル)で是非聞いてみてください。



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