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本郷和人さんの新書「承久の乱 日本史のターニングポイント」の感想

本郷和人さんの新書「承久の乱 日本史のターニングポイント」の感想 新書
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本郷和人さんの新書「承久の乱 日本史のターニングポイント」の感想記事です。

2019年1月発行。

本の読み放題サブスク「Kindle Unlimited キンドルアンリミテッド」で読みました。

Kindle Unlimited

著者の本郷さんは鎌倉時代を専門にした歴史学者です。

本に登場する人物も多く、僕自身ほぼ知識がない状態なので、なんとなく少しだけ理解できたかな〜っていう感じでしょうか。

とにかく歴史に疎いので非常に勉強になりました。

gao the book
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新書を久しぶりに読みましたが、やはり専門家が書いている本は知識もすごいし説得力が違いますね。

本の内容について

源頼朝率いる鎌倉幕府と京都の朝廷の戦「承久の乱」について書かれています。

歴史書「吾妻鏡」に書かれていることを元に、著者ならではの「承久の乱」の解釈をされています。

非常にわかりやすく噛み砕いて書かれていて、読み物として非常に面白かったです。

興味深かったところ、理解できたところ

鎌倉幕府ってそもそもなんだろう?

鎌倉幕府は「源頼朝とその仲間たち」。

そもそも幕府という呼び方は明治時代以降のことで、鎌倉時代当時の人たちとしては、幕府という概念すらなかったとか。

頼朝の作った鎌倉幕府は、東国の武士たちの土地問題を解決すること。これが最重要課題。朝廷の重要課題とはまた違うものだったとのこと。なるほどなあ。

鎌倉幕府というのは一つのまとまったものではなかった?

歴史に疎い僕からすると、幕府と聞けば今の日本のように基本的には一つのまとまったもの(権力を持つ集団は1つだけ)と考えていましたが、鎌倉時代くらいの中世の日本では、歴史学者の中でも意見が分かれているのだとか。

大きく2つあるようです。

  1. 天皇がいて日本が一つにまとまっていたと考える見方。
  2. 日本の権力は鎌倉幕府と朝廷が独立した存在でそれぞれ自立していたとする見方。

この本の著者は2つ目の権力は1つではなかったという見方に近いが、幕府と朝廷が互いに干渉する2つの王権論の見方とのことです。

ちなみに、一般的には最初の「一つにまとまっていた説」の支持者が多いらしい。

武士について

自ら武装し仲間を集めて土地と一族を守る。これが武士の始まり。

武士といえば刀のイメージが強いですが、鎌倉武士にとっては弓こそが武士の象徴。刀はかなり接近しないと出番はないので。

この頃の戦争というのはやっぱりフィジカルな武力が物を言うようです。

また、負けた側は徹底的にやられます。家族含めて一族まとめて葬り去られるので、今の日本は平和でいいなと噛み締めました。

今も戦争が終わらないことを考えると(というか人間は世界で規模で眺めるとずっと戦争をしている)戦は人間の本能でもあるんだろうなあ。

中世武士の自力救済とは、生きるためには他人の命を奪うことなどなんとも思わないという荒々しい感覚に基づくものでもありました。

承久の乱 日本史のターニングポイント

義経がどうして裏切り者だと言われたのか?

この本を読んで義経が裏切り者と呼ばれたのか理由がわかりました。

朝廷(頼朝にもろに敵対している)の官位を無断でもらっていて、これは仲間を裏切ったものと思われても仕方がないでしょうね。

司馬遼太郎さんの「義経」を読んだときは、頼朝が「義経の活躍ぶりに嫉妬していた」と思っていましたが、この本を読むとそうではなかったんだと理解できました。

朝廷について

京都の朝廷側の話として興味深かったところについて少しだけ。

後鳥羽上皇は卓越した能力を持っていた。歌人として超一流、音楽家、武人としても能力が高かった。天皇側の人間でこんな才能ある人がいるのは意外な感じですね。

少し面白かった部分を引用します。

白河上皇や後白河上皇などが行った政治の最大の特徴は、理念が全くないという点でした。「日本をこうしたい」とか「ここを変えたい」という発想はまるで見当たりません。一つだけあるとすれば、自分自身が贅沢したい。それだけです。

承久の乱 日本史のターニングポイント

その他にも

「吾妻鏡」に書かれている兵力は人数をかなり多めに盛っている話が面白い。

まとめ

結局この「承久の乱」は朝廷側が負けてしまいます。

朝廷側はポスト(地位)を大事にして、鎌倉幕府側は人(実力)を大事にしたことによる、最終的な動員力の差によって決着がついたとのこと。

鎌倉幕府側は御恩と奉公のシステムによって、人としての「情」や「絆」も強かったように感じました。昔からよくしてくれた人にはきちんとそのお返しをする。そういうことを大切にしていたからこそ、結束力も強かったんだろうなあ。

この本での最大のポイントは、タイトルにもあるように「日本のターニングポイント」、一時的にでも武士が権力を勝ち取ったこと、だそう。

鎌倉幕府側は承久の乱の後、天皇も退位させています。

何はともあれ

鎌倉幕府の歴史についてほぼ知らないにも関わらず、非常に面白く読めました。

歴史学者によって意見が違うらしいですが、めちゃ面白かったです。

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