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村田らむさんの新書「ホームレス消滅」の感想。ホームレスのリアル。

村田らむさんの「ホームレス消滅」長く活動した形跡がわかるリアルな一冊 新書
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村田らむさんの新書「ホームレス消滅」の感想記事です。

近年のホームレスについてリアルに知ることができる良書でした。

2020年5月発行。

本の読み放題サブスク「Kindle Unlimited キンドルアンリミテッド」で読みました。

Kindle Unlimited

著者の村田らむさんはホームレスについて20年以上取材していて、その活動内容がこの本で書かれています。

著者自身が一定期間ではあるものの、ホームレスと一緒に生活して、ホームレスの仕事も体験していたらしい。

かなり内容も濃くボリュームもたっぷり。これぞ新書という感じで勉強になりました。

gao the book
gao the book

僕が知っているホームレスの情報はどうやら古いようで、近年のホームレスの実情についても詳しく書かれています。勉強になりました。

この本の内容

内容の一部ではありますが、2000年から2020年までの東京と大阪のホームレスの状況を、市役所などが出している数字をもとにして、ホームレスの変遷が書かれています。

ホームレスの人口はオリンピックが契機になって増減することが多いらしい。

2021年の段階では都市に住むホームレスは極端に減って、生活保護を受けている方が増えているらしいです。

タイトルの通り「ホームレス消滅」の傾向にあるようです。

メインの内容としては、村田らむさんが実際にホームレスの話を聞いたり、一定期間であるもののホームレスとして活動したりしていて、リアルなホームレスの生活が伺えます。

ドヤ街

ドヤ街という言葉は聞いたことがありますが、意味はよくわかりませんでした。この本で丁寧に説明されています。(ドヤは宿から来ている言葉で、簡易宿泊施設がまとまった場所をドヤ街と言うのだとか)

簡易宿泊施設を利用する人は日雇い労働者が多く、ホームレスが溜まりやすい場所でもあるらしい。

大阪の西成という場所は危険な場所としてよく耳にするけど西成もドヤ街。なんとなく危険な場所という意味がわかりました。

近年は日雇い労働も極端に少なくなって、安く宿泊できて交通の便が良いため、外国人の滞在場所として使われているらしいです。

ホームレスは働き者

著者が長期に渡ってホームレスの取材をしていて分かったことは、ホームレスは働き者だということ。

空き缶を集める仕事はあまりお金にならないため、たくさん動いて量を稼がないといけない(たくさん仕事しないといけない)。

その他、勉強になった部分を引用

とても興味深かった部分を引用します。

物乞いは法で罰せられるらしい。知らなかった。

日本で物乞いをすること、またはさせることは「軽犯罪法」に抵触する。
憲法に基づくと解釈の仕方によっては、日本では働かないで、一定の住居を持たないホームレスの存在そのものが犯罪だともいえる。

ホームレス消滅

アルミ缶を集める仕事について

「ホームレスの仕事ってのは“儲からない”ってとこがポイントなんだよ(河川敷に住む60代のホームレス)」
効率よくルートを回るベテランホームレスや元気に動ける若手ホームレスでも、自転車を使って一日目いっぱい働いて3000円が限界だという。

ホームレス消滅

取材をしていても、服だけ見るとホームレスとわからなくても、靴を見れば大体わかる。

ホームレス消滅

ジャストサイズの靴を配られたり、ゴミの中から見つけるのは難しいという理由から納得。

可視化されていない障害者がたくさんいる。
精神的疾患や知的障害を抱えた結果、仕方なくホームレスになっているのだとすれば、それは、ホームレスというよりも、単に福祉からこぼれてしまっている人だ。

ホームレス消滅

もしかするとお金に困ってホームレスになるというよりは、身体的な理由からなるべくしてなった、というパターンのほうが多いのかも知れませんね。

それと、犯罪歴のある人は家を借りるのが不可能(もしくはかなりハードルが高い?)なので、犯罪歴のある方もホームレスになってしまうのかも。

田代まさしさんがニコニコ動画で「犯罪をして捕まってしまうと、かなり色々な面で制限があり社会生活が難しくなるので、身内の手助けがないと生きていけない」と言っていたのを思い出しました。

ホームレスが死んだ場合について。そこに住んでいる自治体が立て替えるらしい。

引取人が現れない場合、合葬にされる。たとえば川崎市の場合、高津区にある無縁納骨堂でなされる。火葬や官報の掲載料などの費用については、自治体が立て替えることになる。

ホームレス消滅

排除アートについて。排除アートという言葉自体知らなかった。

渋谷マークシティには、ホームレスが横になりづらいように段差がつけられており、石の突起物が並べられている。

ホームレス消滅

ホームレスの方はある意味ホームレスになるべくしてなった方ということなのかも。

ホームレスは、高齢であることに加えて、精神的疾患、アルコール依存症など、さまざまなハンディキャップを抱えているケースも少なくない。短期間、寮のような場所に入れて、職業訓練をしたからといって簡単に仕事が見つかるわけでもないのだ。

ホームレス消滅

何年も前からホームレスによる暴行の事件はある。殺人まで至るケースもあって、世の中世知辛い。

一般の人には見えない“隙間”で生活しているホームレスは少なくなかった。そのような見えない場所で生活している理由を尋ねると、多くが通行人から暴力を避けるためと答えた。

ホームレス消滅

まとめ

時々、昼間に河川敷沿いをウォーキングしています。
川があるので橋があり、橋下駄のところは雨風が凌げるのでホームレスが住みやすそうに感じます。だけど、段ボールなども全くなく綺麗です。
僕が10代の学生の頃はダンボールがあってホームレスが住んでいた記憶があるけど(少ないですが)、この本の通り通行人の暴力などから逃げるため、もっとひっそりとした場所で生活しているのかも知れませんね。

それから、川沿いには休憩用の長椅子があるけど、横に寝ることができないように肘掛けが邪魔をするようになって工夫されています。これは一種の排除アートかも知れません。公園ではもっと露骨な排除アートの長椅子も見かけます。

この本を読んで色々とホームレスの生活を知ると、ホームレスめちゃ大変だと思いました。

通行人の暴力がある、排除アートがあり住む場所を探すのが難しい、ホームレスの人はお酒やギャンブルで失敗した人が多い、精神的・知的疾患を持った人もいる、などなど。考えていると、体がきちんと動けるうちはきちんと仕事を頑張ろうと思いました。(ホームレスになる気だったんかい)

興味深かったのは、ホームレスはロックバンドのTシャツを着ていることが多いということ。

その理由は衣料品店で売れ残った商品をボランティア団体が集めていることも少なくないそう(新古品が送られてくる)。ロックバンドのTシャツが売れ残りがちなのは、悲しいような、可笑しいようなエピソードですね。

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