中島らもさんの小説「今夜、すべてのバーで」の感想・解説・考察。
初版は1991年。吉川英治文学新人賞を受賞。
紙の本を所有していますが、今回は本の読み放題サブスクKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)で読んでみました。
初めて読んだのが24歳の頃。当時アルバイトをしていて、同じ職場でバンドのボーカルをしていた方から薦められた本です。
個性あふれる登場人物ばかりですが、とても心が温かくなる物語。
いろいろな人生があって、どんな生き方をしてもいいんだなと、なんだか妙に肩の力が抜けて、その後の人生に大きく影響を受けたように思います。
とても好きな作品で、紙の本と合わせて5回以上読んでいます。

中島らもさんの小説やエッセイはどれも面白いですが、内容的に万人受けしやすそうな本書は特におすすめです。
小説「今夜、すべてのバーで」のあらすじ
小説「今夜、すべてのバーで」のあらすじを書きます。ネタバレはしていません。
18歳から17年間毎日大量にお酒を飲み続けた主人公。肝硬変になり病院で診察を受けるシーンから物語が始まります。
医者と主人公の会話が既にかなり面白い。
主人公はフリーライター。幼馴染の友人(亡くなった)の妹を秘書として雇っている。
幼馴染の友人とその妹のエピソード、アルコール中毒に向き合う病院での生活、アルコール依存からの脱却と再生。
読むたびに最後は泣いてしまいます。
この作品は中島らもさん自身の物語もかなり入っているように思いました。半分くらいは実話かも知れません。
文章のリズムが素晴らしい
中島らもさんの文章は、どの作品も読みやすいのが特徴です。
文章のリズムが良くて読んでいて心地いい。
こういう文章はいざ自分が書こうと思っても、なかなか書けなさそうに思います。
小説「今夜、すべてのバーで」で、個人的に良かったところ
アルコール依存症の話
アルコール依存症には禁断症状が色々あるようです。特に幻覚の話が興味深かった。
主人公と同じ部屋で入院する患者の一人が、自分の体が爆発した幻覚を見る。爆発して散らばった自分の破片を、主人公たちが一生懸命に探してあげる。きちんとその幻覚に乗っかって幻覚を終わらせてあげることが大事らしい。一緒にみんなで演技をしているシーンは心が温まりました。
高齢の患者の話
長く生きていると大体のことは自然と知っていることが多い。
若い人たちは良かれと思って新しいこと(おそらく知らないであろうこと)をお年寄りに教えてあげるけれど、もちろんお年寄りは知っている。けれどわざと知らないふりをする。
「そんなことは知っている」と、威張りたいだけの人間と思われるのが嫌だから、あえてとぼける。そういう上手な生き方をしているらしい。
アルコール依存症の話
この小説はアルコール依存の話がメインですが、アルコールに限らず依存症は多かれ少なかれ誰でもあると書かれています。
恋人だったり、友人だったり、親だったり、美味しい食べ物だったり、ゲームだったり。
僕の依存はなんだろう。寝るのが好きだから睡眠?。それはさすがに寂しいか…。
依存そのものは誰にでもあって、アルコール依存だけを悪く言うものでもない。アルコール依存については、怒りと共に詳しく書かれていました。
会社の上司の話
主人公が以前勤めていた会社の上司の話が面白かった。
メスを入れて手術して以降、体から生気が抜けて一気にガタが来たという話。
人間の体はできる限りメスは入れないほうがいいらしい。
フィクションだと思いますが、妙に記憶に残るエピソードでした。
まとめ
電子書籍版では最後に町田康さんが解説を書いていました。
この解説が非常にわかりやすくて面白い。
この小説もそうですが、中島らもさんの小説にはどうしようもない人たちがよく登場します。
ですが、どうしても憎めず、不思議と読んだ後は優しい気持ちになります。
どんなに惨めな人生でもどこか救われる、そんな物語が多いからかもしれません。
中島らもさんの作品に初めて触れる方は、この作品が最初の一冊におすすめです。
本作を含めてKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)の読み放題で読めるタイミングがあります。らもさんの他の作品も読み放題で読めることが多いです。最初の30日は無料でお試しができるので、ぜひ読んでみてください。

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