当ページのリンクには広告が含まれています。

森博嗣さんの理系ミステリー小説「すべてがFになる」の感想

すべてがFになる 小説
この記事は約5分で読めます。

森博嗣さんのミステリー小説「すべてがFになる」の感想記事です。

本作は理系ミステリーの最高峰と言っても言い過ぎではありません。

本の読み放題サブスク「Kindle Unlimited キンドルアンリミテッド」で再読しました。

紙の本と合わせて5回くらい読んでいます。

Kindle Unlimited

gao the book
gao the book

この小説は夏になると無性に読みたくなります。またあの世界に浸りたくなる。

内容について簡単に

工学部建築学科の准教授 犀川創平と、生徒の西之園萌絵が主人公のミステリー小説。

大学生活で起こる殺人事件、その謎を巡る物語。

この作品は第1回メフィスト賞を受賞しています。(ミステリー小説の賞)

10作が1つのシリーズになっていてその最初の作品が本作。10作品の中でも一番面白い作品です。

初版は1996年と古い作品ですが、SF的な要素もあって古さをあまり感じません。

初版が発行されて25年以上経っても全く違和感がないのは、小説の中で予測している未来が割と的中しているからなのかも知れません。

数学やプログラムの話、建築学など理系の話が多く、理系ミステリーと言われています。

天才同士のバトル

主人公の犀川創平はいわゆる天才で、同じく天才の真賀田四季博士との対決が見どころ。

真賀田四季は続くシリーズにも時々、あるいは主人公として登場します。

「頭のいい人の思考回路ってこうなってんだ」と、初めて読んだ時(24歳くらいの頃)随分衝撃を受けました。

随所に出てくるセリフが魅力

森博嗣さんの小説の最大の魅力は登場人物のさりげないセリフにあります。

Time is moneyなんて言葉があるが、それは、時間を甘く見た言い方である。金よりも時間の方が何千倍も貴重だし、時間の価値は、つまり生命に限りなく等しいのである。

すべてがFになる

「たぶん、他の方に殺されたいのね…」四季はうっとりとした表情で遠くを見た。「自分の人生を他人に干渉してもらいたい、それが、愛されたい、という言葉の意味ではありませんか?」

すべてがFになる

建築学について語る犀川先生のセリフも見逃せません。

「日本では、一緒に遊ぶとき、混ぜてくれって言いますよね」犀川は突然話し出した。「混ぜるという動詞は、英語ではミックスです。これは、もともと液体を一緒にするときの言葉です。外国、特に欧米では、人間は、仲間に入れてほしいとき、ジョインするんです。混ざるのではなくて、つながるだけ…。つまり、日本は、液体の社会で、欧米は固体の社会なんですよ。日本人って、個人がリキッドなのです。流動的で、渾然一体になりたいという欲求を社会本能的に持っている。欧米では、個人はソリッドだから、けっして混ざりません。どんなに集まっても、必ずパーツとして独立している…。ちょうど、土壁の日本建築と、煉瓦の西洋建築のようです。」

すべてがFになる

そういえば、つい最近読んだ本(全然関係ない歴史の本)にも似たようなことが書かれていました。

  • 日本は他の国の文化を割とおおらかに受け入れる民族性がある。
  • 日本には八百万の神がいて1つの神様に縛られない。
  • 戦後、アメリカに憧れるかのように文化を取り入れ経済成長をした

などなど。

こういう性質はプラスの面もマイナスの面もあるけれど、何はともあれ日本人はこういう性質があるっぽい。

著者の作品について

著者の森博嗣さんについて、本人のエッセイなどの情報から知っている部分を書いてみます。

二足のわらじ。多作の作家。

森博嗣さんは大学の助教授をしながら「すべてがFになる」を含むシリーズの10作品を書き上げています。10冊ができた段階で出版社に持っていって、小説として出版することが決まったらしい。当時は「すべてがFになる」は順番として1番目の作品ではなかったらしく、順番を入れ替えたり、10作品とも編集を加えて出版されたのだとか。

本業の仕事をしながら小説を書くというだけですごいけれど、とにかく作品数がべらぼうに多い。こんなに精力的に本を出す人はなかなかいません。

本作のようなミステリー小説以外でも、シリーズの小説をいくつか書いています。

飛空艇でバトルする「スカイクロラ」、侍の話「ヴォイド・シェイパ」のシリーズもめちゃおすすめ!

小説は趣味ではなくビジネス

小説を書くのは「完全にビジネス」らしい。

そもそも小説を読まないのだとか。

大学の教授という本業があるから、てっきり趣味で書いていると思ってたら違うんですよね。

「シリーズにする」「ミステリーというジャンルにする」という選択も売れるからという理由からなのかも。

作家の松崎洋さんも同じようなことをエッセイで書いていた気がします。
シリーズにする理由は単純に「定期的に売れ続けるから」。続きがあれば書けるし、とりあえず書くことでお金が入ってくる。これが単発の小説ならそれで終わり。

確かに、続きものになりにくい純文学や単発の作品は、長期的に売るには少し不向きという側面はありそう。

それにしてもここまで割り切れるのはやはりすごい。

まとめ

今回紹介した「すべてがFになる」のシリーズの他にも関連した複数のシリーズが続きます。

ちょっとだけ登場した人物が他のシリーズで重要な役割をしたりもして、読んでいて楽しい。

あの世界観に浸れるだけで、続編が出てくれるだけで幸せになります。

本作は人気でドラマやアニメにもなっています。好き嫌いは分かれるかもしれないけど、個人的にはどちらも良かった。

コメント