津谷一さんの長編小説「結界」上下巻の感想記事です。
2022年10月発刊。
この小説は本の読み放題サブスクのKindle Unlimited キンドルアンリミテッドで読みました。
上下巻ありボリュームがありますが、めちゃくちゃ面白くて一気に読んでしまいました。
この物語はフィクションですが、とても非現実とは思えないほどリアルです。国のあり方、どうして戦争が起こるのかなど勉強になりました。
小説「結界」のざっくりあらすじ
日本が30年以上かけて密かに進めていた「国家機密」。
その国家機密が高度な訓練を受けたプロの集団によって奪われる。
新聞記者の主人公が真相に辿り着くも、次々と周りの人たちも大きな陰謀に巻き込まれていく。
みたいな話です。
話の中では政治家の派閥や宗教団体が登場しますが、架空の名前ではあるものの現実社会の団体に非常に似ています。
この小説で現代日本の政治問題や社会問題、大きな世界の流れを少しだけ知れたような気がします。
日々平和に暮らしているだけでもとても幸運だなあ。
小説「結界」の面白いところ
日本にはスパイ防止法がない。国を守る対空ミサイルは3割被弾する。国土の狭い日本で3割は壊滅的。自給自足ができない。などなど、日本はアメリカによって独立するのが難しい国に仕立て上げられている、らしい。
兵隊同士が大砲や戦車で派手にやる戦争なんて、実は表面上の話に過ぎない。今の戦争は、地下資源、金融、災害、病気、宗教、条約、貿易、食糧など、この世にあるすべてを兵器として使用する。その上で、我々日本の首根っこを押さえるには、この国をいつまでもスパイ天国の状態にしておき、いざという時にはこの国土を消滅させられるだけの核ミサイルがあれば十分なんだ
結界 上巻
ディープステートなる存在が世界を操っている?
「今回の事件は、すべてワシントンDCやニューヨークの金融街に棲んでいる彼らが発案し、さらに彼らのために働く情報機関内部のあるグループが実際の作戦を計画し、光の社を使って実行させたんだ」
「彼らグローバリストは長年アメリカを裏から支配し、覇権国家に仕立て上げ、世界の資源や金融、経済を支配しようとしてきた。そんな彼らは、日本が独立国家としてあのような装置を持つことを絶対に許すつもりはないんだよ」
結界 下巻
「戦後のアメリカの対日対策は、完全な『統治』だった。周辺国との間に領土問題を作り上げて軍事的緊張を維持しつつ、その一方でまともな独自の防衛力を持たせず、生存のために必要な食糧や資源の完全自給をも認めない、ということだ」
「つまり、無差別空襲と二発の原爆で国土を焦土にした後、日本人を精神的に骨抜きにしてアメリカ崇拝に誘導し、徹底的に吸い尽くすってことだよな。そしてアメリカ政府を動かしてやらせていたのが、グローバリストたち、言うなれば、俺たち大手マスコミが嘲笑していた陰謀論者たちの言う『ディープ・ステート』ってことか」
結界 下巻
ディープステートはアメリカだけでなく中国にも存在していて、近年はアメリカよりも中国の力が強くなっている、らしい。
少し別の話ですが、同じ党内でも政治家の派閥があります。どうして同じ党なのに派閥があるんだろ?と疑問でしたが、この小説を読んでちょっとだけ理解できたように思います。
スパイの話や政治家のプライベートが筒抜けな話などが衝撃的でした。自分の人生は自分で選択して生きてきたと思っていたら、実は全部仕掛けられていた、と知ったら愕然とするよなあ…。
小説「結界」は面白い?つまらない?
小説「結界」は面白いか、つまらないか、と問われると、めちゃ面白い!と答えます。
自信を持って人に勧められます。
最後にネタバレですが、個人的な疑問について
小説「結界」のネタバレになってしまいますので、読もうと考えている方は以下は見ないようにお願いします。
終盤に主人公が闇に葬られますが、これが本当なのかどうか疑問を持っています。
海外に逃げるというルートを厳重体制で与えられていたにも関わらず、死後の状態が確認できないまま亡くなったことにされています。
主人公に関わった友人や恋人も全て亡くなりバッドエンド。疑問を残したまま終わってモヤモヤしました。
もしくは、本当にみんな亡くなっていて、日本もこれから大きな陰謀の流れに巻き込まれていく、という不安を残したかったのかも知れませんね。実際ここ3年くらいは経済的にも治安的にも良くない方向に進む力が強まっているように思います。
小説として非常に面白いんですが、フィクションとして楽しめない不安も後味として残ります。読んだ後、妙に気が引き締まりました。
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