今村夏子さんの小説「むらさきのスカートの女」の感想記事です。
2019年6月発行。
芥川賞受賞作。ベストセラー作品。
本の読み放題サブスク「Kindle Unlimited キンドルアンリミテッド」で読みました。
小説を読みながら笑うという経験はなかなかないですが、この小説は声を出して笑っちゃいました。
小説「むらさきのスカートの女」の感想。考察。面白い?つまらない?
今村夏子さんの小説「むらさきのスカートの女」は面白いか?つまらないか?で言うと、非常に面白い作品でした。
おそらく誰が読んでも楽しめる作品だと思います。
ミステリーのような、ただ日常を描いたような、ある種のホラーのような、そんな感じの奇妙な小説。
「一体何を読まされているのか?」感が強く斬新な作品でした。
小説「むらさきのスカートの女」のあらすじ
主人公の近所に住む「むらさきのスカートの女」。いつも紫色のスカートを穿いているためそう呼ばれている。
むらさきのスカートの女は、週に一回商店街のパン屋さんにクリームパンを買いに行き、公園の決まったベンチでそのパンを食べる。
そんな「むらさきのスカートの女」の虜になった主人公(自称「黄色いカーディガンの女」)はむらさきのスカートの女と友達になりたいと思い、さまざまな計画を実行する。
主人公の計画がうまくいき、自分が働いている会社に「むらさきのスカートの女」が勤務することになる。
奇妙な女性「むらさきのスカートの女」をずっと追い続けるストーカーの主人公。その主人公の動向を伺う僕たち読者。一体この話はなんなんだ 笑。
みたいな話です。
衝撃のラストも見どころ。
小説「むらさきのスカートの女」の面白さ
この物語が面白い点は、奇妙な「むらさきのスカートの女」以上に、主人公が謎なこと。
そうこうしているうちに、むらさきのスカートの女の無職期間が、ついに新記録を更新した。その期間丸二ヶ月。(中略)
むらさきのスカートの女
そこまで追い詰められるようになったら、もはや手遅れなのだが。あとは開き直るしかない。最近になって家賃を工面することをすっぱり諦めたわたしのように。
あとがきも面白い
あとがきには、新聞や雑誌用に書いたエッセイがいくつか収められていました。
このエッセイは著者の性格や小説家としての生き方がわかってとても興味深い内容になっています。
さまざまなアルバイトをしつつ、誰とも関わらない仕事をしたい著者。
頭に浮かんだことを片っ端から書き留めて、ちゃんとした文章にした作品が太宰治賞の最終選考に残る。その後その作品は三島由紀夫賞を受賞。
小説を書けないことに悩み、アルバイト生活。34歳に結婚。
ある日、小説の執筆依頼が来る。「ご自分の楽しみのために書いてください」と。
なんとか書き上げた作品2つが芥川賞候補に。さらに本作「むらさきのスカートの女」が芥川賞受賞。
これだけ見ても作家としての才能がすごいのに、著者本人は書くことに本当に悩んでいます。
何でもいいから書け!あとのことは知らん!と自分に言い聞かせていて、書くことに対する辛さが伝わってきます。
自分の書いたものを読み返す時、何とも言えない嫌な気持ちになる。気持ち悪い、という言葉が一番しっくりくるように思う。
むらさきのスカートの女
この一文を読んでふとタモリさんも似たようなことを言ってたのを思い出しました。「自分の映像を見返すことは一切ない、気持ち悪くてしょうがない」と。
まとめ
文章を書くことは本来自由で何を書いてもいいと思いますが、訳がわからなすぎると伝わらないし読まれません。
音楽でも絵でも芸術の世界はそういう部分が難しいと思うんですが、この小説は今まで読んできた小説の中でも、非常に自由な型の一つだと思いました。
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