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藤木稟さんのホラー小説「イツロベ」の感想。謎の恐怖がじわじわ迫る

藤木稟さんのホラー小説「イツロベ」謎の恐怖がじわじわ迫る ホラー
この記事は約3分で読めます。

藤木稟さんのホラー小説「イツロベ」の感想記事です。

初版の単行本は1999年発行。

20年近く前に一度読んで、今回改めて読んでみましたが物語が非常に面白いです。

本の読み放題サブスク「Kindle Unlimited キンドルアンリミテッド」で再読しました。

Kindle Unlimited

gao the book
gao the book

主人公のアフリカでの生活や文化が興味深かった。日本に帰国してから一気にホラー色が強くなります。

ざっくりあらすじ

産婦人科で働く主人公がボランティアでアフリカに行きます。

禁断の森に棲む謎の部族・ラウツカ族と出会い、超現実的な体験をする。

そして日本に帰国してからもおかしなことが起こり続ける…。みたいな話です。

この小説で登場するラウツカ族のことを調べてみましたが、どうやらフィクションのようです。

ですが、ラウツカ族に近い民族がいるようで、ディンカ族という民族(2mくらいの長身の民族)をモチーフにしているのかも知れません。

アフリカの民族と聞くと、槍を持っていて、顔や体に模様(ペインティングなのか、タトゥーなのか?)があって、手足が長くて、顔のイラストのついた大きな盾を持っていて…みたいな古典的なイメージがあります。まさにそのイメージの民族が登場してちょっと驚きました。やっぱりそのイメージで合っていたんだ。

とても面白いけれど

アフリカでの生活の話はめちゃくちゃ面白い。

物語の中盤から日本に帰国して、そこから現実の話なのか主人公が幻を見ているのか境界線が分かりにくくなってきます。

そして、終盤はちょっとよくわからないまま終わります(僕の理解力不足の可能性大)。

気になった部分を引用

アフリカの民族ってなんかこう、不思議な力を持っているイメージがあります。

そのイメージに近い文を引用します。

ターパートゥニに手を引かれて歩くと、木々は道を譲るように断ち分かれていった。
木立が分かれ、次の空間が現れる様は、森がラウツカ族にだけは特別な神秘の扉を用意しているかのようだ。しかも目の錯覚か、ターパートゥニの身体が時々、幽霊のように揺らいだり、消えたりして見えるのだ。
やがて私が理解したのは、全身の幾何学模様が森の陰影に同化する迷彩作用を持っているということだった。
おそらくこういった錯覚が、ラウツカ族を精霊的存在だと思わせた仕組みなのだと、私はひとり納得した。

イツロベ

似たような物語展開は他にもある

この小説を読んでいて物語の展開が近いものを2つ思い浮かべました。

中島らもさんの「ガダラの豚」もアフリカに行って、日本に帰国してから不可思議なことが起こる話。

それと貴志祐介さんの「天使の囀り」もロケーションこそアマゾンですが、日本に帰国して同じくおかしなことが起こるので、こちらもちょっと似ています。

実はフォーマットとして結構確立していたりするのかも知れませんね。

上記の2冊が好きな人はこの本もかなり楽しめるはずです。

他の国の文化を知るとやっぱり面白いし、この小説はさらに謎の怖さがじわじわ迫ってきます。ホラー小説好きにも楽しめる一冊。

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