町田そのこさんの短編小説集「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」の感想記事です。
非常に個人的な偏見ですが、女性作家さんの小説は生々しいものが多い気がします。
2021年3月発行。(電子書籍版)
本の読み放題サブスク「Kindle Unlimited キンドルアンリミテッド」で読みました。
恋の物語(短編)が詰まった作品です。
生々しい文章が感情を揺さぶってくる
若い男女が主人公の短編小説。恋愛と人生についての物語。
フィクションなのに妙に生々しくて、異様に感情を揺さぶられました。
実際に物語の世界に入って、セリフが聞こえてきそうなくらいに没入できます。
短編のタイトルは魚の名前(熱帯魚)や海をモチーフにした話でまとめられているっぽい。
良かったところを引用
印象に残ったところをちょこっと引用します。
「昔は、こんな場所消えちまえと思うくらい、嫌な場所だったんだけどな」「嫌な物が全部、廃れて消えちゃったんだよ」
カメルーンの青い魚
永遠にある気がしてたけどな、とりゅうちゃんはぽとんと呟いた。私はその言葉を拾って、頷いた。永遠だと思ってたけど、びっくりするくらいあっさりと、なくなっちゃったよ。
生きるとか生きていけないとか、大人でも考えて苦しむものなんだ。だったら俺や晴子が苦しいと思うのは当たり前なんだ。大人が苦しみながら泳いでいるのだとしたら、それはとても厳しい現実だと思うけど、でもそういうものであるなら、仕方ないよな。これからも、もがきながら泳いでいくしかない。
夜空に泳ぐチョコレートグラミー
俺が生きていけるのはここなのかもしれないって。何も残らない、淀んでいないここで息を吐いて、大事なものの幻を見てちょっと幸せになる。それが一番、生きやすいんじゃねえかなって。
溺れるスイミー
水中にいるみたいに酸素が足りなくて息苦しいシーンがあって、まさに人が魚になったかのようでした。
人生の悩み、恋愛のしんどさが伝わってくる物語が多い。
まとめ
この短編集では色々な女性(もしくは男性)の人生を垣間見れます。
「ここではないどこか」を求める話。
結局どこへも行けなかったけれど、それも決して悪くないと思う。
著者の町田そのこさんは若手の作家さんなのかな。
他の作品も読んでみようと思います。
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