鈴木光司さんのホラー小説「タイド」の感想記事です。
2016年3月発行。
本の読み放題サブスク「Kindle Unlimited キンドルアンリミテッド」で読みました。
リングシリーズの5作目で完結編の作品です。
ホラー小説というジャンルですが怖さで言うと「リング」に比べるとそこまでという感じでした。リングの怖さを超える小説はなかなか無さそうに思います。
リングシリーズの完結編ということで貞子のルーツがわかり謎もほぼ解明できた?のかな。古事記と超能力者の物語が非常に面白かった。
ざっくりあらすじ
貞子はこのシリーズを知っている方は言わずもがなの強力な超能力者ですが、母親もまたすごい能力者です。ここまでは今までの作品でわかっていましたが、母親がどうしてそんな能力を持つことになったのか、本編の主人公が過去を探っていきます。
完結編らしく色々と謎が解ける内容でした。
物語の中で役小角という飛鳥時代の呪術師(まさに超能力者という感じ)が登場します。
この人物が今回の物語のキーになる人物で、インターネットで調べると実在の人物っぽい。いやー、めちゃ恐ろしい。
良かったところを引用
本編の内容とそこまで重要な部分でもないですが、個人的に気になったところを引用します。
柏田は、この国の成り立ちが記述された神話を読んでいて、死と再生の場面が多いことに幾度なく驚かされてきた。日本のみならず、ギリシア神話も同様である。
タイド
古代の神話では、霊、あるいは魂が、人間の身体に戻ってくる前に、中宿として他の物質に一旦宿ると考えられていた。それはたいがいの場合、石だった。古代において、石は唯一の情報記述装置でなかったかと、柏田は推測する。
四十億年の時間をかけた意識の進化を追体験したとき、柏田にはホモサピエンスとしての使命が、理解されてきた。
タイド
……宇宙のことわりを言語によって明晰に記述すること。
自分がもうひとりの自分を見てしまう現象は、ドッペルゲンガーと呼ばれ、古今東西、多数の例が報告されている。
タイド
日本においても、江戸時代には「魂が離れてしまう病気」と言われ、死の予兆であると恐れられた。
この家の構成員は最大で三人のはずである。にもかかわらず、椅子は四脚あった。座る人間の数は、三人からふたりとなり、ひとりになり、とうとう誰もいなくなってしまった。
タイド
まとめ
ストーリーの中で古事記の話が出てきます。古事記の物語がとてもわかりやすく書かれていて、非常に興味を持ちました。日本という国がどうやって生まれたのか、ファンタジー風に描かれています。
僕の見ている現実世界は非常につまらないけれど、この本の話はとても面白い。そして、そんな面白い本の登場人物が現代にも実在していた。ということは、気づいていないだけで現実世界も本当はもっと素晴らしいのかも知れません。
現実逃避にももってこいの一冊でした。
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