奥田英朗さんの小説「サウスバウンド」の感想記事です。
2005年6月発行。
本の読み放題サブスク「Kindle Unlimited キンドルアンリミテッド」で読みました。
小説を読んでいると途中からストーリー展開がなんとなく分かることがありますが、この作品は終盤近くになっても予測できずに最後まで楽しめました。
正義とは何か、自由とは何か、国とは何か、とても考えさせられる一冊でした。
この小説は直木賞受賞作品です。
奥田英朗さんの小説はどれもおすすめですが、この小説もかなりおすすめです。
ざっくりあらすじ
小学6年生の男の子が主人公。
国家権力大嫌いな父が登場します。
主人公の父は無政府主義者(アナーキスト)で、現代の日本の生活を覆すような価値観を持っています。
このお父さんが物語を面白くしています。ただ、身近にこんな人いたら困るだろうなあ。フィクションならではのエンターテインメントという感じです。
途中から主人公の家族が沖縄の西表島に引っ越します。ここからこの小説の魅力が全開に!
物語の魅力が詰まった部分を引用
無政府主義(アナーキー)という考え方はこの本を読んで初めて知りました。権力が嫌いな考え方という感じでしょうか。
日本では1960年代に学生運動というのがありましたが、この小説ではそのあたりのことも書かれています。
国という単位から外れて、小さなコミュニティーの中で平和に暮らす、そういうユートピアみたいなものは現代社会ではなかなか実現が難しいそう。
アナーキストっていうのは無政府主義者のこと。簡単に言えば国家も指導者もいらないっていう考え方
サウスバウンド
「革命は運動では起きない。個人が心の中で起こすものだ」
サウスバウンド
「集団は所詮、集団だ。ブルジョアジーもプロレタリアートも、集団になれば同じだ。権力を欲しがり、それを守ろうとする」
「個人単位で考えられる人間だけが、本当の幸福と自由を手にできるんだ」
「歳が離れている人で、おまけに奥さんもいる人で、おとうさんは激怒していたけど、好きなものはしょうがないの。二郎も大人になったらわかる。本気で人を愛するって、人生を賭けるようなところがあるの」
サウスバウンド
「上原君も大人になればわかりますが、大人の世界にはこういうインチキがいっぱいあります。大人は正義より、自分の利益を優先します。大人は基本的に臆病でずるいのです。それをここに認めます。上原君のお父さんのように、正々堂々と異議を唱える人は、百万人に一人ぐらいです。自慢に思っていいと思います。」
サウスバウンド
「二郎。世の中にはな、最後まで抵抗することで徐々に変わっていくことがあるんだ。奴隷制度や公民権運動がそうだ。平等は優しい権力者が与えたものではない。人民が戦って勝ち得たものだ。誰かが戦わない限り、社会は変わらない。お父さんはその一人だ。わかるな」
サウスバウンド
「お前はお父さんを見習わなくていい。お前の考えで生きていけばいい。お父さんの中にはな、自分でもどうしようもない腹の虫がいるんだ。それに従わないと、自分が自分じゃなくなる。要するに馬鹿なんだ」
個人的な感想
無政府主義という考えは、今の便利な世の中の生活を根底からひっくり返すような考えで衝撃的でした。
極端にこの考えを通すなら、資本主義も反対なのでお金を使わず、どこかでひっそりと自給自足で生活していくしかありません。
僕自身もどちらかというと会社のような集団や、何かしらの組織に所属するは苦手で、自給自足の生活もチラッと頭をよぎったことはあります。とは言え、なかなか極端にそこまで吹っ切れた行動ができないですよね。
この本のメッセージは上記の引用文にあることかな。正義を貫くのは難しい。
まとめ
世の中には色々な思想や宗教、考え方の人がいます。自分が考えている価値観とは全然違った方向性の思想に触れるのも悪くないと感じました。
本を読むことは(もしくは人と話す)例えば、一つのリンゴを見るにしても、いろいろな角度から見れるようになることだと思います。よりたくさんのアングルからリンゴを見ることで、リンゴのことがより正確に認識できるのではないかと。
そういう意味合いでこの本は面白いです。物語もいいですしね。
この小説は映画にもなっているようです。
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