中山七里さんの社会派ミステリー小説「テミスの剣」の感想記事です。
2017年3月発行。
本の読み放題サブスク「Kindle Unlimited キンドルアンリミテッド」で読みました。
主人公は刑事の男。青くさい正義を貫き通す姿がかっこいい。
冤罪をテーマにしたミステリー小説です。
刑事の捜査が怖い
この小説では容疑者を逮捕して取り調べをするシーンが出てきます。
刑事の取り調べの仕方がすごかった。長時間で食事もなく暴力を振るう。
フィクションだと分かっていても、昭和や平成の中期あたりまでは、実際にあり得そうな内容。
色々と新しく知ったところ
- 弁護士には国選弁護士と私選弁護士がいる。国選弁護士の方が安く雇えるらしい。
- 裁判官も同じ人間で、人間が人間を裁くことの辛さが書かれていた。
- ピッキングは元々、鍵前技師の仕事。鍵前技師は民間資格。ピッキングって泥棒の裏技みたいなものかと思っていました。
良かったところを引用
良かったところを引用してみます。
真摯な思いを誰が嗤うものか。わたしたち検察官や君たち警察官は権力を与えられている。権力を持つ者が真摯でいなければ正義はいずれ破綻する。
テミスの剣
正論はいつの世も愚鈍で、生真面目で、幼稚な心理だ。だからこそ子供にも理解できる。どんな浅学の人間にも通用する。
テミスの剣
正しいことは面倒臭がられるし、現実の社会では白けられることも多いですね。
ただ、警察官や裁判官、検察官のような職業はその立場で市民に対して権力を使うことができるから、青くさい正義感は持っていてほしいよなあ、と都合よく思ってしまった。
マスコミが司法・立法・行政に次ぐ第四の権力と呼ばれて久しい。ー中略ー
しかし如何せん、マスコミのほとんどは市場原理に支配されている。売上部数と視聴率が神であり、指針であり、絶対だ。そうした構図では必ず全体の意識が易きにつき、つまり論理よりは感情に流れる。
テミスの剣
確かにSNSで炎上とかもよく見るけれど、冷静に論理的に考えて意見を言うというよりは、感情に流されていることが多いように思います。
まとめ
新しく知ることが多い小説でした。
フィクションだけど、それにしても現実世界でもあり得る話だなと。
犯罪を犯した人間はかなり高い確率(約6割)でまた捕まって刑務所の中に入る。結局のところ社会で生活するよりも、刑務所の中の方が落ち着いてしまうらしい。
犯罪者の性格・性質は基本的には治らない。再犯率は高く、結局刑務所に収容される。その間、一般市民の税金が無駄遣いされ続ける、と。
冤罪、裁判官や警察官の苦悩が重々しい内容でしたが、非常に面白い内容で一気に読んでしいました。
こういう小説はそんなに読む機会はないですがドラマを見るようで面白かった。
最後の解説は俳優の谷原章介さんが書いていました。
俳優さんが解説を書くのは結構珍しいので、もしかすると著者の作品で実写化したドラマや映画の役になっていたのかも知れませんね。
この作品はドラマにもなっています。
コメント