森博嗣さんの小説「人形式モナリザ」の感想・考察・解説。

初版は1999年。古い作品ですが時代を感じさせない物語でした。
この小説はKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)で読みました。
瀬在丸紅子と保呂草潤平が活躍するVシリーズの2作目。
今作も終盤の展開にびっくり。3作目以降はもう騙されない!。忘れるな俺!笑
犀川&萌絵シリーズに比べて、このシリーズはページ数が少な目なので物語が終わるのが早く感じます。これくらいのページ数の方が読みやすいかも。
いつもの4人がまた殺人現場に居合わせます。ミステリー小説のさだめ。

最初から最後の終わりまで、個人的に大満足のクオリティでした。
小説「人形式モナリザ」のあらすじ
小説「人形式モナリザ」の簡単なあらすじを書きます。
ネタバレはしていません。簡単に物語の内容をご紹介します。
7月の終わり。小鳥遊練無は長野のリゾート地にあるペンション「美娯斗屋(みごとや)」で短期アルバイトをしていた。
そこに、保呂草潤平、香具山紫子、瀬在丸紅子が遊びに行くことになる。
冒頭は保呂草がストーリーテラーとなって今回の物語について語っています。キーワードは「人形」「操り」「モナリザ」「悪魔」「神」。
人形博物館(人形の館)で乙女文楽という伝統人形の芝居中に殺人事件が起こる。その事件を調べていくうちに、2年前にあった殺人事件と同じ犯人の可能性が高いことがわかる。
また、この事件の数日前には霧ヶ峰美術館(人形の館から割と近い)で絵画が盗まれていた。
過去の事件を含めて3つの事件に巻き込まれるいつものメンバー。
推理したり、危険な目にあったりします。
小説「人形式モナリザ」の登場人物
この物語の登場人物は人数が多く、しかも関係が複雑(特に人形博物館の人たち)です。この記事を書くために整理することで、やっと理解できた感じです。
いつものメンバー
- 保呂草潤平(ほろくさじゅんぺい)…28歳。自称「放浪の芸術家」。フリーター。探偵。何でも屋。アパート「阿漕荘」の住人。謎が多い人物。
- 瀬在丸紅子(せざいまるべにこ)…29歳。かつては令嬢だった。自称「科学者」。小6の息子がいる。シングルマザー。複数の人格を併せ持つ。
- 小鳥遊練無(たかなしねりな)…アパート「阿漕荘」の住人。愛知県那古野市の国立N大学医学部の2年生。空手の心得がある。長髪で趣味は女装。長野県出身。
- 香具山紫子(かぐやまむらさきこ)…アパート「阿漕荘」の住人。私立大学文学部の2年生。背が高く男気のある女性。関西弁がいい感じ。
- 根来機千瑛(ねごろきちえい)…瀬在丸家の執事。練無の空手を教えている。
警察の人たち
- 林…愛知県警捜査第一課の刑事。39歳。紅子の先夫。6年前に離婚。シトロエンに乗っている。
- 祖父江七夏…愛知県警捜査第一課の巡査部長。28歳。林の部下。林との付き合いは5年。林と同じく一度離婚している。
- 本間…35歳。長野県警警部補。林とは仕事で10年ほどの付き合い。
ペンション「美娯斗屋」の人たち
- 大河内弘樹…ペンション「美娯斗屋(みごとや)」の主人。巨漢。30代後半。
- 大河内優美…弘樹の妻。30代。美娯斗屋の厨房担当。
- 大河内翔子…弘樹と優美の子。中学1年生。
- 森川素直…練無と同じ大学の同級生。練無と同じく美娯斗屋で短期バイトをする。
人形博物館に関わる人たち
- 中道豊…芸術家。「微笑む機械」の作者。30歳後半〜40歳前半。
- 江尻駿火…本名は江尻トシヒ。人体専門の彫刻家。最後の作品はモナリザと呼ばれる。亡くなっている。
- 岩崎達治…5年前に亡くなっている。人形博物館を作った人形コレクターのお金持ち
- 岩崎雅代…達治の妻。大河内優美の祖母。乙女文楽の人形師。有名な人物らしい。黒装束をまとい車椅子で文楽をする。駿火の愛人。
- 岩崎毅…達治と雅代の息子。現在の人形博物館の館長。
- ??…江尻駿火と雅代の息子。娘が大河内優美。娘二人が結婚後、妻とブラジルに移住。
- 岩崎巳代子(みよこ)…毅の妻。乙女文楽の継承者。坊主頭の人形を担当。
- 岩崎亮(あきら)…毅と巳代子の息子。悪魔に魂を売る。26歳。岩崎家で2年前にナイフで刺されて亡くなる。新婚だった。白い手の悪魔によって殺された。
- 岩崎麻里亜…亮の妻。雅代が操っていた人形役。22歳。未亡人。
- 中道千紗…中道豊の妻。大河内優美の妹。乙女文楽で女の人形を担当。
- 千葉和子…岩崎家の家政婦。40代。岩崎家では3年ほど働いている。
上記で「??」の人物がいますが、江尻駿火と岩崎雅代の息子です。名前が出てこなかった(多分)のでこのような表記にしています。妻も登場せず。
小説「人形式モナリザ」の良かったところ
乙女文楽とは?
人形博物館では乙女文楽という人形芝居が観劇できます。
乙女文楽というのは初めて聞きましたが、基本的には人形浄瑠璃と同じらしい。(人形浄瑠璃もあまりよくわかっていませんが ^^;)乙女文楽の方が圧倒的に歴史は浅く、大きな違いは女性が人形を操ること。そして、1つの人形を一人で動かす点、らしい。
瀬在丸紅子はこの芝居を見て、人間と人形について思考します。このシーンは印象的でした。
自分が作ったものが、自分の手から離れても作動する。自分の力が切り放されて、独立した生を持つ。生まれるという意味がそこにある。これが、神に少しでも近づきたいという夢を人間に見せる。永遠への一瞬の幻想を与えてくれる。
人形式モナリザ
現在、最高の人形とはコンピュータである。人に最も近い機械だからだ。人を真似ることが、この機械を作り出したのだから、当然である。
人の形に魂が宿る、と最初は考えた。
それが、いつの間にか、この形が失われる。
さて、「形」とは、何か?
人形とは、何だろう?
そしてこの人形の考察シーンは、きちんと伏線になっています。
人は、生きている他人を見て「生」を感じる機会は少ない。それなのに、人形にそれを見る。私には、これがとても不自然、不思議に感じられるのだが…。
人形式モナリザ
女性同士の戦いが凄まじい
今作で一番インパクトがあったのは瀬在丸紅子と祖父江七夏の争いです。
紅子の元夫の林は部下の七夏と今回の舞台に二人で休暇に来ていた。
たまたま遭遇したとは言え、怒りが収まらない紅子と、紅子に対立する七夏のシーンが見どころ。林さんめちゃモテる 笑。
精神的に疲弊する二人。紅子も七夏も泣くシーンがあるんですが、そこに居合わせた小鳥遊練無もタジタジに。
そうか。大人になってもやっぱり、誰かが誰かを泣かしているんだ、と彼は思った。
人形式モナリザ
小鳥遊練無と香具山紫子の関係が微笑ましい
小鳥遊練無と香具山紫子は、仲の良い兄妹のような関係性だと思っていましたが、実は紫子は練無が好きなのかもしれません。
今作では練無が七夏とデートをしに行き、紫子が荒れまくります。
大好きな保呂草と二人きりというシチュエーションにも関わらず、練無のことを気にしていた。
「小鳥遊君と喧嘩?」
人形式モナリザ
「まさか」紫子は微笑んだ。「眼中にないね。あるのはコンタクトのみ」
なんだかんだで
なんだかんだで、このシリーズは保呂草潤平と瀬在丸紅子が主人公という感じ。
物語の中で発せられる二人のセリフがいい。
二人とも似たような思考回路だし、自作以降の物語も気になります。
子供のときに持っている鋭敏さの多くは、蒸発するように失われる以外に行き場がない。そもそも社会の価値観とは、そのような麻酔的な機能のためにある。逆に、それを意図して社会が構築されている、と言っても過言ではない。
人形式モナリザ
失われることは、悪いことではないのだ。
削り取られて、そこに形が現れることだってある。
万が一にでも、美しい形が生まれることがあれば、尚更だろう。
その希望こそが、生きる動機ではないか。
「これは、一般論だけどね。最も困難な問題。最も複雑そうに見える問題を最初に解決すること。もしも本気で問題を解決したいのなら、それが最も近道。どうしても、簡単な問題に逃避してしまうの。小さな問題を解決しても、それは前進には寄与しないことが多い。
人形式モナリザ
まとめ
神や悪魔、オカルトな話も登場しますが、やはり要所で登場する「人形」がこの作品のメインです。
僕は相変わらず推理が苦手で、犯人は答えが出るまでわかりませんでした。
物語全体を通して思うのは、やはりこのシリーズはクオリティが高いですね。
現在はS&Mシリーズ(犀川と萌絵のシリーズ)もまだ途中で読み進めています。(厳密にはAudibleで聴いています)
今作はS&Mシリーズの次のシリーズのVシリーズですが、Audible(オーディブル)にも無いし、おそらくKindle Unlimitedでも読めそうにない感じです。
3作目以降は本を買って読むか、図書館で借りて読もうかな〜。どうしよ。
このVシリーズは以前に何作か読んでいて、面白いのはわかっているので、またじっくりと作品を楽しんでいこうと思います。
1作目の「黒猫の三角」についても感想を書いています↓



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