上條一輝さんのホラー小説「深淵のテレパス」の感想・解説・考察。
2025年宝島社「このホラーがすごい!」で1位にランクイン。創元ホラー長編賞を受賞。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
著者の上條さんはこの作品で作家デビュー。Webメディア「オモコロ」のライター出身。オモコロ出身の作家さんと言えば品田遊さんもそうですね。
非常に読みやすい(聴きやすい)文章で、オカルト好きにはたまらない物語でした。
ある程度内容は書いていますが、ネタバレはしていません。

近年、YouTubeの怖い話・オカルト系の動画や、ホラー小説、ホラー映画が盛り上がっているように感じます。僕がそのジャンルに注目しているからそう感じるだけかも知れませんが、いずれにしても嬉しい限りです。
ホラー小説「深淵のテレパス」の登場人物
「深淵のテレパス」の登場人物をご紹介します。
- 芦屋晴子…「あしや超常現象調査」の代表。超常現象やオカルト系の相談を受けて、専門家を呼び原因を探る。その様子をYouTubeに投稿している。男勝りな性格で頼れる姉さん的な存在。
- 越野草太…本編の主人公。晴子と同じ会社に所属する部下。「あしや超常現象調査」の撮影担当、サポートをする。メインの仕事でもないのに、すごいこき使われてる。真面目で内向的だが、推察能力が高い。
- 高山カレン…家で謎の現象が起き、「あしや超常現象調査」に調査を頼む。イギリスと日本のハーフで美人。
- 桐山楓…大学生2年生。大学の怪談イベントで会談を話す。テレパシーを感知したり予知能力を有する。
- 犬井…晴子とは古い知り合い。テレパシーの送信と受信ができる超能力者。
- 倉元…晴子の知り合いの探偵。元警視庁の捜査官。あらゆる手段を使って高い捜査能力を持つ。
晴子の容姿と性格がこの小説を引き立てています。個人的には超能力者の犬井が良かった。
どうやら続編もあるらしいので、このメンバーでの話なら面白そう。(カレンと楓は本編だけかもしれません)
ホラー小説「深淵のテレパス」のざっくりあらすじ
「深淵のテレパス」について簡単にあらすじを書きます。
高山カレンは会社の後輩である橘ゆかり(オーディブルで聞いたので漢字間違ってるかも)から、大学のオカルトイベントに誘われる。ゆかりの弟がオカルトサークルに所属していて、怪談師の一人として怪談を話すらしい。
カレンは30代の営業部長。幽霊は全く信じていない。
「変な怪談」が聞けるということで来たものの、ゆかりの弟の話も含め、どこにでもあるような話ばかりで期待はずれのクオリティだった。
最後に清楚な雰囲気の女学生「桐山楓」が登場する。
怪談を始める前に客席をじっくり眺め、カレンに目を合わせた。カレンだけに向けた怪談を披露する。どうやら桐山楓は毎回このスタイルで怪談を話すらしい。
怪談の内容は「暗い水の底から何かがあなたの前に現れる。暗いところを避けてください」という内容。
後日、夜な夜な水のバシャリという音(濡れた雑巾で叩いたような音)や、ドブ川の生臭い匂いがする。照明を当てることでその怪異は防げたが、クローゼットや物置などのちょっとした小さな場所でも怪異が発生するため、部屋中は照明だらけになる。
害獣を疑い調査をするも異常なし。お祓いに関することをWeb上で検索するも高額すぎて怪しいので却下。
あるYouTubeチャンネルでポルターガイスト現象を調査してもらう動画を見て、ここに調査を依頼することに。
ここで主人公の越野草太と芦屋晴子が登場。二人は「あしや超常現象調査」という名目でYouTubeに動画を投稿している。霊感はないが、怪異があれば専門家を呼んでその様子を動画に収めていた。
越野も春子も本業が別にあり、趣味でこの超常現象調査をやっている。この部分は作品を聴き終わった後もちょっと謎です。さすがに副業にしては力を入れすぎのような ^^; 本業どうなってんだろ。
さておき、カレンはこの二人に相談して、超常現象の原因を探ります。
春子は昔からの知り合いの犬井という超能力者と、有能な探偵の倉元に協力を依頼し、カレンの部屋で起きている現象について調査する。
桐山楓についても調査を進めていくと、怪談イベントは今まで6回開催されていて、桐山楓に怪談を話をされた人物はカレンを除いて全員(5名)失踪してることが判明する。
あしや超常現象調査班はカレンを救うことができるのか?という物語です。
怪談で有名な中山市朗さんの名前が出てきたり、リングなどのジャパニーズホラー作品の名前が登場してオカルト好きならきっとニッコリしてしまうはず。
ホラー小説「深淵のテレパス」個人的に面白かったところ
エスパーの由来
この小説ではESPというワードが頻繁に登場します。
Extra Sensory Perceptionの略でESP。「超感覚的知覚」という意味で、テレパシーや予知、透視などがESPに当たるらしい。
ちなみに、ESPに人の意味のERを加えてESPER(エスパー)らしい。はえ〜。
いわゆる念力、例えば石とかを粉砕するような力(サイキック)はESPとは別のようです。
千里眼実験
御船千鶴子(みふね ちづこ)という人物の話が出てきます。
福来友吉博士が千鶴子に行った透視能力の実験。これは実話らしく、鈴木光司さんのホラー作品「リング」でも似たような話がありました。伊熊平八郎と山村志津子(貞子の母)のESP能力の実験。リングのこの部分が実話を元にしたフィクションだったとは!
深淵のテレパスでは大学教授が犬井に対して似たような実験をします。
それ以外にも、日本では本格的に呪いや超能力について研究をしていて、戦争でも使われていたという話があったり。
超能力者の犬井がいい
ESP能力を持つ犬井は少年時代に超常現象などを扱うテレビ番組に出演していた。
作中で年齢は書いてなかったと思いますが、おそらく50代くらい?になってもその超能力は健在。
テレパシーの送受信ができる能力。
ただ、春子いわく、1/4の確率のものが1/3の確率になる程度のしょぼい能力とのこと。
犬井は送信側を得意としていて、受信側もESP能力者の場合は、テレパシーを正確に送る確率が跳ね上がる。
またESP能力者には得意なシチュエーションがあるらしく、犬井は暗く水がある場所であれば能力が上がる。
ラプラスの悪魔
春子や犬井が言うには、未来予知はESPの中でもグレー(眉唾もの)らしい。
ほんの少し先の未来ならあり得るが、例えば一ヶ月先の未来は見え過ぎる。
「ラプラスの悪魔」なる未来計測器の話が出てきます。なんとなく名前だけ聞いたことありますが、100%の確率で未来予想ができる概念、みたいなものだとか。
名前の重要さと、鉛筆の呪物
昭和の戦争時代の話まで遡る場面があります。戦時中に超能力部隊を作ろうとしていて、その中の一人が本物の能力者だったらしい。
その部隊の中でもお互いに名前だけは決して言わないようにしていた。名前が非常に重要だった。
作中で「火星鉛筆」なる呪物が登場します。これ、本当に昔あった鉛筆の商品名なのかな?
名前を書くと効果が発動する鉛筆。怖すぎる ^^;
まとめ
他にも、丑の刻参りで有名な貴船神社の話(藁人形に五寸釘打ち付けるやつ)や、陰陽師の呪詛返し、年季の入った市松人形などが登場して面白い。
超常現象を求める春子はオカルトに関してかなり詳しいものの、冷静な考察をしている点も見どころです。
こじつけであったり、寄生虫のような(寄生宿を誘導する)パターンもあり、必ずしもオカルトを信じてはいない。
今回の話は再現性に乏しいので、オカルト現象と認定しているっぽい。
終盤にかなりピンチになるので是非最後まで読んでみてください。
ホラー小説ですが正直なところあまり怖くはないです。ただ、オカルト好きの方はかなり楽しめる1冊だと思います。



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