中山七里さんの小説「ふたたび嗤う淑女」の感想・解説・考察。
前作「嗤う淑女」の続編。今作では国会議員が標的になります。
この作品はKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)で読みました。
実は前作のオチがよくわかっていませんでした ^^; ですが今作を読むことでやっと理解ができました。よかった。
「ふたたび嗤う淑女」の内容をある程度書いていますが、重要な部分のネタバレはしていません。

シリーズとして全部で3作あるようです。3作目もKindle Unlimitedで読めるっぽいので読む予定です。このシリーズ面白い!
小説「ふたたび嗤う淑女」のざっくりあらすじ
前作「嗤う淑女」に登場した悪女、蒲生美智留。共犯の野々宮恭子は蒲生美智留そっくりに整形し、蒲生美智留本人は恭子の弟に殺害される。美智留の顔を持った恭子は刑を逃れた。前作のネタバレにもなるのでこの部分はざっくりとご紹介。
今作「ふたたび嗤う淑女」では野々宮恭子が、国会議員とその周りの人たちを含めて次々と罠に落とします。前作もそうでしたが、直接手を下さないから非常に狡猾!
NPO法人の事務局長が最初のターゲット
NPO法人「女性の活躍推進協会」事務局長の藤沢優美。
この協会は国民党が掲げた公約の流れを汲んで設立された。しかし実態は柳井耕一郎議員の資金団体。会費や寄付金は柳井の政治資金として流れていた。
優美は柳井耕一郎の政策秘書の咲田彩夏をライバル視し、いずれ自分も秘書になることを野望にしている。
しかし協会発足から2年が経過し最初のような盛り上がりはなくなる。年々資金繰りが厳しくなり優美は困っていた。
そんなおり、協会スタッフの神崎亜香里から野々宮恭子を紹介される。
野々宮恭子から提案されたのは「FX投資」。
恭子はトレーダーとしてまずはお試しで5割以上の利益を出してみせた。それにすっかり騙された優美は、柳井の事務所から1億円近い資金を引き出し、FXで大きな利益を目論む。
もちろん詐欺で、1億が振り込まれた時点で野々宮の事務所は空きテナントに。
優美は協会の事務局長をする前は製造工場のラインで働く派遣社員だった。それが、ボランティアで参加していたNPO法人で大抜擢。報酬の桁が変わり自信をつけた。
派遣社員から一気に上り詰めたのに、嫌いな彩夏に頼み込んだのに。もう顔を合わせることもできない。到底返済できる金額でもない。正常な精神状態を保てず、建物から飛び降りる。
他人のためを思って行動したことは皆無だった。いつも身の丈に合わないものを望み、合わないことを思い知って落胆し、また別の身の丈に合わないものを追い続けてきた。つまらない人生だった。
ふたたび嗤う淑女
この話ではFXの話が詳しく書かれていました。全然知らない分野なので興味深かった。
FXでは臆病者が勝ち残る、という理屈は清新に響いた。ギャンブル性は否定せず、慎重であるなら大きな損はしない。それに、戦場で生き残るのは臆病者というフレーズも耳に残った。
ふたたび嗤う淑女
恭子の豊富な知識と巧みな話術でまんまと騙される。FX怖い。
2人目のターゲットは宗教団体の副館長
宗教団体「奨道館」の副館長が次の餌食に。
この宗教団体は国会議員である柳井の組織票としての役割も大きい。
副館長の伊能典膳は新しい信者の獲得や財務を任せられていた。年々新規の信者は減り、脱退者も出る始末。教団の資金繰りに困窮していた。
一ヶ月前に入信し、愛嬌の良さと機転の早さで館長の侍女になった神崎亜香里。またこの子きた 笑
伊能は亜香里から野々宮恭子を紹介される。
今度は教団から本を出版し、信者に10冊ずつ買わせることで、11億7千万円の利益を提案される。
本の印刷代として1億1千万の資金を館長に頼み込んだ。(館長が銀行にお願いして借りる)
館長と副館長はお互いに牽制し合う仲で、伊能はいずれ館長になることを目論んでいた。
しかし、実際に納品された本は、チェックした時とは内容が異なるものだった。教団の暴露本のような内容で、激怒した館長から解雇を言い渡される。帰り道に教団の汚れ仕事をする信者たちにボコられ、最後は陸橋から落とされる。
かわいそすぎる…。しかも今回はきちんと本は印刷はされていて、野々宮恭子には何の利益もない。何か目的がありそう。
ちなみに、この話から野々宮恭子と神崎亜香里のタッグに加えて、久津見という人物が仲間に加わります。
3人目のターゲットは後援会の会長
3人目の犠牲者は国会議員の柳井の後援会会長、倉橋兵衛。65歳。
倉橋は父から受け継いで不動産業を営んでいる。ただ、商才が無く父の資産を食い潰していた。
後援会の会員の一人である久津見から、倉橋が議員になるべきだとヨイショされる。その気になったものの、選挙にはお金が必要。
久津見から野々宮を紹介され、今度は地面師詐欺に嵌められる。
この話はネットフリックスでも話題になったドラマ「地面師たち」を見ているようで面白かったです。
今回も億単位のお金をJAから借りる。柳井議員と関係が深いJAなので借りることができたらしい。
いつもは司法書士の国枝に登記申請をしてもらっているが、国枝は最近本業をおろそかにして過払金請求の仕事ばかりしていた。お金になるらしい。
このことが命取りとなり、国枝は地面師詐欺を見抜けなかった。
そしてやっぱり壮絶な亡くなり方をする。
倉橋の妻は最初からうまくいかないと信じ、倉橋に文句を言っていた。
「頭絞って、額に汗して、もっと実入りをよくしようっていうんでしょ。だったら商売も政治も一緒じゃないのよ。いい?あんたは間近に先代やボンボンを見ているから議員から近しい存在に思えているかもしれないけど、それってアイドルのファンが取り巻きにいるうちに、自分も芸能界の関係者だって勘違いするようなものよ。特別な商売には特別な資格が必要なの。気づいてんの?あんたは酒が入るとこの国がどうとか政府がどうとか、まるで世界を動かしているみたいにクダ巻いてるけど、今あんたがしようとしているのはその延長でしかないんだったら。あんた今、雰囲気に酔っ払っているだけなん」
ふたたび嗤う淑女
過払い金請求の話も面白かった。実際にこういう司法書士も多いのかも知れませんね。
司法書士法の改正以来、本来は弁護士の仕事であった過払い金請求を、訴額百四十万までなら司法書士が行えるようになった。過払い金請求は計算ソフトさえあれば中学生にもできる仕事である一方、手数料や報酬に厳格な規定がないので仕事として旨味が大きい。
ふたたび嗤う淑女
4人目は柳井の秘書
4人目の犠牲者は柳井の秘書咲田彩夏。
柳井耕一郎と不倫関係の彩夏。伴侶になりたいと思っているがもう34歳。かなり焦っていた。秘書としての仕事ぶりはかなり有能。
これまた、久津見から野々宮を紹介され、いつものごとく、彩夏は騙され秘書を解雇されます。
久津見がなぜこんなに意欲的に動くのか?。実は娘を柳井耕一郎におもちゃにされ殺されていた。その復讐。
人間は欲に溺れると隙が生まれるっぽい。そこをうまく突くから詐欺師は恐ろしい。
最後は政治家の柳井
短期間の間に立て続けに柳井の身の回りの人物が4人も亡くなった。
悪夢を見るほど精神的に参っていた。
そこへ神崎亜香里が訪ね、100万円で情報を買ってほしいと提案される。
柳井に久津見の復讐の話を打ち明ける。
しかしこの情報提供も裏があり、久津見は無事復讐を達成。
最後は衝撃的なラストに。
小説「ふたたび嗤う淑女」の面白かったところ
小説「ふたたび嗤う淑女」は前作に引き続いて、どんでん返しがあって最後まで楽しめました。
今回も様々な詐欺の話が出て面白かった。それにしても悪女は賢すぎる。
不動産の専門家が地面師詐欺に遭う物語も含めて、読んでいて耳が痛い言葉がたくさん。
昔から不動産屋は〈千三ツ屋〉と揶揄されてきた。千に三つしか本当のことを言わないという意味だが、その伝で言えば千三ツ屋だからこそ自分が騙されるとは思いにくいのだろう。実際、倉橋は自分の商売の領域で呆気ないほど簡単に騙された。
ふたたび嗤う淑女
自分も騙されそう。
「自己評価の高い人間ほど騙しやすい人種はありません。そして自己評価が無意味に高いから、自分の無能さを思い知った時の絶望はより大きくなるのです」
ふたたび嗤う淑女
途中から刑事側の話も登場しますが、結局今回もうまく逃げられることに。
最初の話で藤沢優美は1億の借金をして飛び降り自殺をしますが、刑事の話では意味のない死だと言われます。
死を選ばずとも破産宣告や民事再生の手続きを取れば、少なくとも法律上の支払義務は免除ないし軽減される。どうしてその方途を選択しなかったのか。
ふたたび嗤う淑女
僕も人生やばくなったら上の引用文を思い出そう。
まとめ
今作を読む前から3冊目があるのを知っていたので、悪女は生き残るだろうという予測はできていました。
一応、3冊目で終わるっぽいので、最後どうなるか楽しみです。
詐欺がうまくいく条件の一つに美人(ビジュアルがいい)ということを刑事が言っていました。自分に近づいてくる美人がいたとすれば、それはもうきっと詐欺だと肝に銘じておこうと思います。
前作の感想はこちら↓




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