田内学さんの本「お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点」の感想・解説・考察。
この本はKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)で読みました。
著者の田内学さんは金融市場で長年勤務(ゴールドマン・サックス証券株式会社)、トレーダーとして働いてきた方、とのこと。
今の日本ではお金だけあっても不安は消えないようです。その理由がこの本で書かれています。
お金・物・人。この3つの要素の重要性。
本の内容をかいつまみながら、感想を書きたいと思います。

人口が減る一方で、経済的にも日本の円は弱くなっています。お金だけを重視する生き方から、一旦、昔の村社会のような生活に戻ってもいいかも知れませんね。近所の人たちで協力し合っていけば、お金は必ずしも必要ではなくなり、お金に対しての不安は軽減されるかも。
「お金の不安という幻想」の内容
変化する社会をどう生き抜くか?具体的な生存戦略として、4つの行動「整理する」「支度する」「直視する」「協力する」が4部構成で書かれています。
第1部 整理する
最初はお金とモノについて説明があります。
「欲しい」から「買わされる」へ。
戦後から高度成長期はモノを得ることが豊かさだったが、モノが満たされると、今度はカネ(貯金)へと移行してきた。
「モノを売りたい企業」と、「カネを貯めたい消費者」は、いつしか対立し、その距離は広がっていった。かつて「欲しいもの」を作っていた企業は、生き残るために「欲しがらせる」ことに力を入れるようになる。
お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
不安を煽る言葉。焦りを仕掛けるカウントダウン。必要かどうかではなく、損をしないうちに買わせる仕組み。
こうして、購買の動機は「憧れ」から「不安」へと静かにすり替えられた。
企業の思惑を知っていれば、不安を煽る情報に出くわしても冷静でいられる。
大切なのは、自分自身の価値基準をしっかり持つこと。
価格ではなく、自分の満足感を重視することが大事。
不安は、他人のモノサシから生まれる。安心は、自分のモノサシから始まる
お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
この点については、森博嗣さんの本「お金の減らし方」から引用して紹介していました。
「他人に見せられないなら買わない」という発想は、自分の価値観を他人に預けている証拠だ。
お金の減らし方
本当の価値は、自分自身の中にしかない。他人のモノサシや価格のラベルでは測れない。価格はあくまで市場が決めた他人の評価に過ぎないのだ。
※森博嗣さんのこの本については本ブログで過去に記事を書いていますので、気になる方はチェックしてみてください↓
SNSをやっていても、よく投資に関する勧誘というか、不安を煽る内容を見かけます。ですが、「投資をしないこと」への焦りや不安を必要以上に感じる必要はない、と著者は説明しています。
それから、投資とギャンブルの違いについて論理的に書かれていて、この部分も非常に参考になりました。
投資とギャンブルの違いは「誰かの役に立ったことに対する報酬」と「他の投資家をあてにしたお金」この二つの違いの見極めが鍵になる。
努力すれば報われる前提が崩れた社会では、ギャンブル的な投資に惹かれるのもむしろ自然な反応だろう。
お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
「お金」という面だけ見れば確かに八方塞がりで、投資やギャンブルに魅力を感じる人も多いでしょうね。
第2部 支度する
2部では最初に、投資と労働の話が書かれています。
努力で報われるのは圧倒的に労働。だから普通に働いたほうがいいですよ。という話。
そして現在の日本では、初任給がここ数年上がっているので、働いて稼ぐ能力を育てる方が好転できるとも書いています。
文豪・森鴎外は、「しごと」という言葉を、「仕える事」を表す「仕事」ではなく、自ら主体的に「為る事」として、「為事」と書いた。本来、働くこととは、誰かに仕えるのではなく、自分の力で価値を生み出すことだ。
お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
第2部で面白かったのは、「一番頼れるのはお金なのか?」という問いについてです。
著者は様々な場所でお金についての講演をしているそうです。
中学や高校で講演をする際には「お金と愛と仲間」、この3択の質問をするそうです。この3つで最も重要なものは何か?
中学校では「仲間」を選ぶ生徒が多いのに、高校生になると「お金」が多くなる。愛はないんかい!
経済が発展するにつれ、身近な人に頼らず、お金で他人に頼れるようになった。しかし、逆に言えばお金がないと誰にも頼れない。そして、一人でお金を稼ぐのは大変だ。この息苦しさが現代社会に広がっている。
お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
昔の村社会は違った。しがらみはあるが、そこには確かに頼れる仲間が存在していた。
学生時代、「社会のために働く」という言葉を「きれいごとだ」と思っていたが、今ではそれが孤立を防ぎ、仲間とつながるための戦略でもあったとわかる。
お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
仲間がいないとお金に頼るしかなく、お金を追うほどに孤立する。この悪循環を断ち切るには、「共通のゴール」を見つけて、仲間を巻き込むことだ。さもなければ、必要な知識やスキルをすべて自分で身につけるという孤独で厳しい道を進むことになる
第3部 直視する
3部の話が個人的には一番納得感がありました。
お金を稼ぐのがなぜ偉いのか?についての議論。主婦がする家事や育児には価値がないのか?
そして、著者の創作「アリとキリギリス」の話が面白い。
この創作話は、いくらお金を貯めても、働いてくれる誰かがいないと意味がないというオチ。
老後に必要な資金2000万円問題は、お金ではなく人不足の方が怖い。
それから、日本人の給料が上がらない問題について。
例として、小麦の値上げ。値上げされた100円は誰の収入になるのか?
問題は、そのお金が海外に流出していく構造にある。日本人に恩恵がないため給料が上がりにくくなっている。
海外に頼っているものが多いほど、その問題が顕著に。
もう一つ、私たちの生活にはヒト・モノ・カネの三要素が必要。
ここでの財務省の話が面白い。財務省ってなんか頑固で融通が効かないイメージがありますが、なるほどカネを優先しているから、そうなっているのかと一人納得しました。なるほどな〜。
働く人が減っていて、経済の重心がお金から働く人へとシフトしている。
お金さえあれば安心という幻想。 働き手不足。
などなど。
第4部 協力する
効率化により仕事を減らす話。
昔は高額だったシイタケは効率化によって安く提供できるようになった。
効率化により社会を良くすることが重要。
銀行がお金を融資したいのは「新たな価値を生み出す」会社。その結果、日本の経済が成長するから。
ここ何十年かの日本は、守ることで経済成長を失った。
未来のために挑戦する会社を応援する世の中に。出る杭を打つ社会は成長を止めてしまう。
みんなで新しいことに挑戦する。効率化を考えて仕事をしていくこと。
そうすれば、また昔の日本のような成長を取り戻せるかもしれない。とのこと。
いつしか「お金さえあれば、ひとりでも生きていける」と錯覚し、そのせいで「お金の不安」を大きくふくらませてしまった。人の役に立つ喜びや新たなことへの挑戦する勇気よりも、お金を増やす焦りばかりが先走るようになった。
お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
「お金の不安という幻想」で、個人的に良かったところ
「お金の不安という幻想」の中で、著者が「投資で100億を稼いだ男」を追い、その稼ぎ方を探し求めます。(金融会社に勤めていたので仕事として)
「うまい話」を真似ても、うまくいかない理由が書かれていてこれが面白い。
投資で100億稼ぐ男なる者の存在。他にもビットコインで「億り人」なる人たちの存在も一時期、話題になりましたね。
この100億の男を追った話、オチがすごかった 笑。
その100億なる男は不正利用して逮捕される、という末路。
どれだけ必死にその方法を探しても見つかる訳はない。その方法が不正だったから。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」松浦静山の言葉
お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
現代の工学研究に「失敗学」という分野があるように、失敗には明確な原因がある。そこから学ぶことができる。
だが、成功は違う。偶然性、特殊な状況、本人が自覚していない努力。それらが積み重なっていることも多く、成功の原因は見えにくい。
「真似しやすそうな成功例」ほど、成功に必要な要素が抜け落ちている。だから、再現性が低く、失敗を招きやすい。
お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
コラムにある「知らないと損する投資術は存在しない」も面白い。
それから、ピケティの話が良かった。
ピケティといえば、『21世紀の資本』で格差拡大の仕組みを解明した著名な経済学者だが、彼自身が、本当に「労働よりも投資をがんばった方が良い」と主張しているだろうか?
お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
~中略~
富裕層が稼げたのは、労働より投資をがんばったからではなく、1億円の資産を最初から持っていたからだ。
一時期ピケティの本が流行っていて、僕も気になってわかりやすそうな本を一冊読みました。
身も蓋もない話ですが、お金を持ってないと増やすことができない、と書かれていた。これは「自分には関係ないな」と思った記憶があります。
それからもう一つ。
必要とされる老後資金は2000万円(2019年)だったらしいですが、今では3000万円、4000万円が必要と増える一方。
本来は国が制度としてやるべきことが、個人の責任になっている。若い人は減ってるし、日本の円も弱いから貯金しといてね、じゃないのよ…。お金の問題は個人的な悩みで、なかなか口にするのも難しい。
この話を読んで、そう言えば確定拠出年金も今の年金制度がまあまあ崩壊しているから、個人の責任で貯めといてね、と言ってたのを思い出しました。
まとめ
人手不足の現代。
お金が大事と貯金してきたが、いくらお金があっても働く人がいないと意味がない。
食べ物もないし、病院も、何かのサービスを受けることもできない。
お金がないなら近所の人たちを交流を深め、支え合っていくのもいいかもしれない。
愛や仲間、人として大事なこの2つのことを、また取り戻す時期に来ている。
そして、新しいことをするチャレンジが大事。そういう芽を摘まないこと。
この本では冒頭に「具体的な戦略が書かれている」とありましたが、果たして自分ならどうすべきだろう…。
個人でできることはもはや少ないと思いますが、現状、極貧の僕は、お金をあまり必要としない生活、スキル(自給自足)を身につけるのもいいかもしれない、と思ったりしました。



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