斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)さんの小説「恋に至る病」の感想・解説・考察。
この小説はKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)で読みました。
著者の斜線堂さんが氷室冴子さんの小説「海がきこえるⅡ アイがあるから」で解説を書いていて、そこで著者のことを知りました。Kindle Unlimitedで1冊登録されていたので今回読んでみました。
本のカバーを見る感じだとライトノベル?恋の話かな?という想像をしていましたが、予想外の物語でした。

「〜に至る病」というタイトルの作品を割とよく見かけますが、この小説がその流れに乗ってタイトル名を決めたのかちょっと気になっています。
小説「恋に至る病」のあらすじ
小説「恋に至る病」のあらすじを、かなりざっくりとご紹介します。
ネタバレはしていません。
小学生時代の二人の出会い
この冒頭の一文で物語に期待する人も多いはず。
「宮嶺は私のヒーローになってくれる?」寄河景がそう言った瞬間から、僕の余生が始まる。
恋に至る病
何か戦争みたいなことでも始まるのか?と想像していましたが、予想は外れました。
小学生で転校を繰り返す主人公の宮嶺望。小学5年生になるタイミングで、父からは最後の転校になると告げられる。
宮嶺は新しいクラスの自己紹介の場面で失敗をするものの、寄河景(よすが けい)に助けられる。
景は美人で学級委員としてクラスをまとめていた(本人がまとめようと思っているわけではなく自然と)。みんな景が好きだったからかもしれない。
コミュ障な宮嶺だったが、その後も孤立しそうな宮嶺を景はさりげなくサポートしてくれた。
自由意志というものについて考える。五年二組の人間は一人残らず景に誘導されていた。しかし、それに導かれた僕らはそれをこの上なく喜んでいた。そこに自分達の意志が無かったと本当に言えるだろうか?僕らは景に導かれることを選んでいたのだろうか?今となってはもうよく分からない。
恋愛に至る病
最初は恋愛小説かな?と思っていましたが、じわじわと狂気じみた話になっていきます。
「青い蝶(ブルーモルフォ)」
中学、高校と進学し、二人は付き合うことに。
宮嶺は景をずっと好きでいたが、まさか景も自分を好きだったとは思ってもいなかった。
景は宮嶺のことが好きという証明として「青い蝶(ブルーモルフォ)」なるゲームを管理していることを明かす。
死ぬべくして死ぬ人間を殺すゲーム「ブルーモルフォ」。誰かから導かれないと何もできない人がいる。そういう人間は死ぬ時でさえ幸せそうに見える、と言う景。
ゲーム上で課題をクリアしていくと死に導かれる。
このゲームで高校生を含む若い人たち30人以上が既に亡くなっていた。
景は宮嶺に「間違っていたら止めてほしい」と告げるものの、宮嶺は景がこうなってしまったのは自分の責任もあった。罪悪感を感じ止めることができなかった。
ブルーモルフォではサイト上で40人を管理していたが、話が進むにつれて、偽のブルーモルフォも登場し、その偽物のサイトでも自殺者が出る。
シリアルキラー&サイコパスな景を宮嶺は止めることができるのか?
途中から警察側の話も入ってきて、社会現象を起こすほど大きな事件に拡大。
結局、最終的には150人の死者を出す恐ろしいゲームに。
小説「恋に至る病」の個人的なハイライト
景の頭が良すぎる
宮嶺は小学生の頃に根津原というクラスのリーダーにいじめられます。根津原は「蝶図鑑」というブログを立ち上げ、いじめた際の宮嶺の「手」の写真を掲載していた。
「覚えてる?あのブログ。蝶図鑑」「…覚えてる」「忘れられるはずがないよね。あれを見た時はびっくりしたよ。人間の悪意と想像力には果てがない。ああなったらもう止められないんだ」
恋に至る病
このセリフもそうですが、小学生の頃から景は頭が良すぎる。随分と大人の思考。そういう意味でも結構怖い。
中学時代にもその片鱗が
中学時代には飛び降り自殺しようとした善名という女子学生を助ける景。
「善名さんも、一人で死ぬのは怖いでしょ?だから、私が一緒に飛んであげる」〜中略〜「私はすごく諦めが悪いんだ。それにエゴイストでもある。自分の思い通りにならないと気が済まない」
恋に至る病
このシーンでも常人ではない行動を見せた。
ブルーモルフォを作った理由
宮嶺のいじめられる姿を見たり(その時の周りの行動や思考も含め)、根津原を殺害したことによって、使命感が芽生える景。
「要するに、流される人間が居るからいけないんだ。そういう人間は意志を失って、自分のことを見誤って、誰かのことを平気で傷つけるようになる。分からないかな?私がブルーモルフォを創ったのは何故か。あのシステムがどうなっているのか」
恋に至る病
ブルーモルフォを通して人を間引いているのか?宮嶺がそう聞くと「そうだよ」と当然のように答える景。さすがに怖い。
小説「恋に至る病」の感想
小説「恋に至る病」は展開が読めず最後まで楽しめました。
あとがきで著者が「景はどういう人物なのか、きちんと読めばわかります。」という趣旨のことを書いていましたが、僕にはちょっとこの部分確信を持ってこうだと言えず ^^;
好き同士で付き合っていたその相手が、実は人の死について無感動な大量殺人犯だったらどうするだろう?
景はこの物語を読む限りかなり魅力的な人物で、僕が宮嶺ならやはり同じことをしただろうなあ。正義の天秤は、身近な人が犠牲になる可能性がある場合、揺らいでしまう。自分にとって大事な人の方が他人より優先度が高くなる。正義や道徳の正常な判断が下しにくくなる。
自分の惨めだった人生で、救いをくれたとても好きな人のために人生を捧げる。素敵なことだけど、どこか危うさもあります。
これは確かに病気かもしれない。



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