梨さんのホラー小説「6」の感想・解説・考察。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
ナレーションは三日尻望さん。湿度がある色っぽい声が怖い。声の使い分けも抜群で聴きやすいナレーションでした。
不可解で怖い話が6つ。それぞれのタイトルに数字が含まれていて、カウントダウンするかのように1つずつ数字が減っていきます。6つの話だから6というタイトルかと思いましたが、読み終わってみるとそれだけでもなかったようです。
微妙にそれぞれの話に繋がりがあって最後の話で不可解さが解けました。

amazonでの評価を見ると酷評が少し目立ちましたが、個人的にはかなり楽しめました。本で読むのとオーディブルで聴くのとでまた評価が変わってくるのかも知れません。
梨さんのホラー小説「6」のあらすじと、感想。
最初は一体何の話なのか、どういう人物が語っているのか不明な話が多かったです。それが不気味さを際立たせていました。
ネタバレしていますので、これから読もうと考えている方はご注意ください。
1話ずつのあらすじと感想を書いていきます。
R00Fy
タイトルの「R00fy」の意味が未だわかっておらず。他のタイトルを見る感じだと数字の6の意味が込められていそうに感じますが、文字の並びを考えるとそうでもなさそう。
「懐かしの昭和レトロの思い出」という名目で投稿された文章。編集部に送られてきたが、内容がホラーすぎて一旦保留に。時間を置いて、送り主と通話したが会話がいまいち通じず様子がおかしい。だが、掲載の許可だけはもらった。
この編集部が一体何なのか、著者が編集部にいた頃の話で、この文章自体が実話なのか、そのあたり全くわからず。
女性が小学生の頃に両親と行ったデパートの屋上遊園地。そこで起こった不思議な話が書かれています。
バブル期の話ということで年代としては昭和の終わり頃。
その女性にとって屋上遊園地は日常と異世界の境界線の場所。閉店を告げるアナウンスが流れるもトイレで時間を稼ぐ。まだ出たくなかった。日常に戻りたくなかった。
トイレから出てみると音が一切なく、そこには両親もそして他の誰もいなかった。遊園地は薄汚れて時間が経過しているようだった。
スピーカーからは感情のこもっていない女性のアナウンスが流れる。
ステージには人形が立っていた。父くらいの年齢の(30代前半)生身のおじさんの顔が貼り付けられていた。
意味不明なアナウンスと、作り笑い、泣き笑いがその人形の口から漏れる。
結局なんとか無事その遊園地から逃れることができましたが、その後その女性がどうなったかは不明。
子供の頃にこんな体験をしていたらトラウマになるな…。
FIVE by five
車通りの少ない田舎の山道。道端に膝くらいまでのサイズのモニュメントが置かれていた。
よく見ると石塔だった。丸い石を積み上げ、受信するアンテナが刺さっている。紙が貼ってあり「拠点A」と書かれていた。
筆者は近隣の高齢女性に話を聞く。どうやら似たような供養塔があるらしい。
別の場所にはきちんと霊園があり、この石塔はそれとは別物。出どころ不明の死体や無縁仏の石塔らしい。近所の人たちが管理を持ち回りでしていた。
筆者とは著者の梨さんのことなのか、これも不明。
もう一人オカルトライターが登場しますが、このライターが本来記事に掲載する情報をごっそり削ってエッセイくらいの文章量に減らし、失踪しています。
オカルトライターの取材の中で、都市伝説の研究家に聞いた話を書いています。
自他一人ずつの密室で、光と影が動く乗り物には不思議なことが起きるらしい。(タクシーの怪談がこれに当たる)これは自動車や電車などの平行移動だけでなく、上下の移動でも考えられるらしい。例えばエレベーター。他人との閉鎖空間、無機質な移動空間は都市伝説が起きやすい。
最後にオカルトライター(だと思いますが)が、石塔があった山道に行きます。
そこには男女の若い人たちがいて、懐中電灯を持って何かの作業をしていた。
オカルトライターの車に気付き、窓越しで話をする。
この山道の峠道は、行き倒れの人が多い場所らしい。その若者たちは人間界以外の話をしきりにしてくる。6つの世界、六道輪廻の話。一度死んで幽霊になったのに自殺した人がいたらしい。六道から逃れるために。
何かよくわからないが、只事ではないと思い、その場から離れるオカルトライター。そこにいたはずの若者たちは風化するように体が崩れていく。
最初の話「R00Fy」と同じく、後の物語に通ずる話ですが、この話を読んだ段階では意味がわからなすぎました 笑。
FOURierists
この作品は所々で時間のカウントが入っています。どうやらビデオカメラで撮影をしているらしい。
二人の若い男が車中を撮影。一人は運転をして、一人はFMラジオのチャンネルをいじったり、アンテナを調整していた。
二人が所属するサークルのメンバーの話をしている。車中でのラジオの受信が目的らしい。
山道の膨らんだ道の端に自動販売機があったのでそこで休憩をする。
ジュースを飲んでさらに道を進むと、緩やかなカーブの道に入り、ラジオが一瞬音声らしきものを受信。
道はなぜか行き止まりだった。門と金網に遮られ、ドラム缶やコーンが置かれている。
サークルのメンバーの話ではこんな物はなかったはず。ひとまず、引き返すために車を迂回させる。
そこでクリアな音声でラジオが繋がる。女性がラジオの進行役で、こっくりさんに関するお便りを読んでいた。
なぜだかわからないが、車中の二人の話をしている(さっき自動販売機でジュースを買ったことなど)。恐怖に慄く二人。目の前にはいつの間にか車があり、道を塞いでいる。クラクションを鳴らし、どかそうとするも、ビデオカメラでは衝撃音とともに映像が止まる。二人は亡くなる。
この二人の話をフリーペーパーの編集の方に聞く(誰に向けて話しているかは不明)。このフリーペーパーの編集者が先ほどの二人が所属していたサークルの部員の一人。
随分昔にミニFMというものが流行っていた。ネットラジオが普及するもっと前の話。
フリーペーパーの編集者も大学時代にラジオ専門のサークルに入っていた。
サークルの男女のカップルが山中をドライブしている時にラジオの電波を拾う。サークルの古参メンバーの高原という名の人物もその場所に行き、その後人が変わってしまった。死を喜ぶ性格に。
時を置いて、二人の男性(車内を撮影していたさっきの二人)もその場所に行ったが、先ほどのビデオカメラだけを残して行方不明。もちろん道を塞ぐ金網もなかった。
フリーペーパーの編集者はそのビデオカメラの動画のコピーを持っているが、怖くて一度も見たことがない。
随分後に、最初にそのラジオを受信したカップルの女性から電話があった。ラジオを放送していた人物からコンタクトがあったらしい。カップルの女性も高原のように性格が変わってしまい、電話越しには他の女性の声が聞こえた(ラジオのパーソナリティーの女性の声)。
録画時間のカウントの不気味さ、話の奇妙さが際立っていました。山中のある場所のみで受信する個人のラジオ番組。もうこれだけでゾクゾクします。
個人的にはこの話が一番好きです。
THREE times three
愛の新世界。苗のガイドライン。
何かの宗教団体?のガイドライン。
どうやって人を誘うのか、合宿へ誘う方法、お金を出すタイミング、合宿ではどのように振る舞うか。そういう細かいことが書かれたガイドラインの内容が延々と読まれます。
「キャラバンさらい」「スプレンディングセッション」「幹部増愛者」「畜生様」「チャネリング」「トランス」などのワードが出てきて意味不明。
7日間、自然の家のような隔離された場所で少しずつ食事や睡眠時間が減らされ、極限状態で体験する神秘体験。他との連絡手段は一切絶たれ、まさに新興宗教が行いそうなガイドラインの説明が続く。
こっくりさんを使った儀式が登場したり、「畜生様」と呼ばれる教祖?が登場するあたり、どうやら動物霊を崇拝した宗教っぽい。
全体的に意味がよくわからない話でしたが、短編ならではの新しい手法を試みた感じは伝わってきました。
TW0nk
高齢の女性が語る幽霊譚。
その女性は幽霊の死体を触ったことがあった。液体のような感触だったらしい。
幽霊は1度死んだ状態なので死体の死体ということになる。
女性の曽祖母の話の回想から話が始まる。
曽祖母の家の近くで3歳くらいの男の子を見かける。その男の子は女性と曽祖母以外には見えず、曽祖母はよくその男の子に話しかけていた。
座敷童では?と考えたが、一緒にその子供も歳を取り大きくなっていった。
その男の子は女性の6歳下くらいの年齢で、弟ができたようで嬉しかった。
女性が11歳になった年に曽祖母が白寿で亡くなる。
お通夜に曽祖母の部屋に行くと、あの時の子供がいた。話しかけると後ろに曽祖母が立っていてかなり怒っていた。そして少年はいつの間にか壮年の男になり、曽祖母と言い合いをする。部屋ではラジオが流れていた。3話目の「FOURierists」で山の中に流れていたFMラジオの番組だった。怖いって 笑。
曽祖母の49日の納骨の日に、男の子が首を吊った状態で曽祖母の部屋で見つかった。一緒にいたお坊さんは恐怖に戦慄する。これは霊でも死体でもない。輪廻から外れた死体の死体だった。
どんな人でもお祓いをすることができず、その死体は以後ずっとこのままの状態に。
49日が過ぎた後、曽祖母の部屋で女性の両親が二人とも壮絶な姿で亡くなっていた。
親戚の家で生活し、時は流れ、大人になってからまた曽祖母の家に帰ってきて、それからそこでずっと生活してきた。
女性は高齢になったが、幽霊の死体は曽祖母の部屋であのままの状態。
家の立ち退きの話が出て、建築会社が家を取り壊そうにも事故で死者が続出。家を取り壊せず。
少しファンタジー寄りですが、全体的にずっと暗い話でしんどかった。
それにしても、今までの5つの短編のタイトルも著者の造語っぽくて意味不明ですし、短編1つ1つが謎。
ONE
最後の話。この話の主人公はオカルト雑誌の編集部の社員。
友人でもある社内の専属ライターが失踪した。この失踪したライターは2話目の「FIVE by five」に登場したオカルトライターのようです。ある日からエレベーターに乗らなくなり、主人公に「地獄に落ちたくない」という話をしていた。
社員数の少ない会社なので1人の穴を埋めるのが大変。残業をしていた主人公は明け方に6階建てのマンションに帰る。(5階に住んでいる)
エレベーターに乗ると随分と長い。作動はしているが5階に着かない。なぜか最上階の6階まで行く。
6階に着くものの扉は開かず、アナウンスが流れる。エレベーターにアナウンス機能はない。
エレベーターの窓越しに人形が立っていた。その顔は失踪した友人のライターだった。第一話に登場した人形はどうやらこの友人のようです。
ここまで読んでおおよそ今作「6」のタイトルの意味がわかりました。仏教で説かれる世界、六道輪廻(ろくどうりんね)がテーマになっているようです。
下の箇条書きはGoogleで検索した際のAIの解答をコピーしています。
- 地獄道(じごくどう):激しい苦しみを受ける世界。→第6話今の話
- 餓鬼道(がきどう):常に飢えと渇きに苦しむ世界。→第5話
- 畜生道(ちくしょうどう):本能のままに生きる、動物の世界。→第4話
- 修羅道(しゅらどう):争いや戦いが絶えない世界。→第3話
- 人間道(にんげんどう):苦しみと喜びが混在する世界。→第2話
- 天上道(てんじょうどう):幸福な世界だが、永遠ではない。→第1話
アナウンスは天上道について語ります。天上道は天国ではなく、天国に近い場所。ここでも死があり、生まれ変わりもある。天上道にも苦しみがあり、必ずしも人が目指す理想の場所では無い。とのこと。
エレベーターは5階に降り人間道へ。エレベーターの窓からは第2話に登場した石塔がいくもあった。
3階にはコックリさんの儀式の紙が落ちていた。2階では男性が首を吊っている最中だった。その男は友人のライターで、どうやら天上道から何度も生まれ変わり、餓鬼道でも苦しんでいるらしい。さすがに友人が可哀想すぎる。
1階に着き、とうとうエレベーターの扉が開く。地上に降りてみると、人が上の階から何人も飛び降りて死んでいる。声は無く落ちる音だけが延々と続く。
エレベーターを振り返ると背の高い女性のマネキンがいて、しゃべっていた。アナウンスと思っていたがずっとこの女性の人形が喋っていたらしい。
その後、エレベーターに乗り、今度こそ5階の自室に戻ることができた。
部屋に入ると大量の睡眠薬をアルコールで飲んだと思われる自分の死体がそこにあった。
過労による精神的な病気で既に自死していた。
最後に窓から飛び降りて終わる。
梨さんのホラー小説「6」の解説と考察
最初に読んだ時は、なんとなくでしか物語がわかっていませんでしたが、この感想記事を書いていくうちに、6つの物語がきちんと繋がっていることが理解できました。
それぞれの話を単独で読むだけでは何のこっちゃかわかりませんが、話が進むにつれそれまでの話との関係性がわかり、最後の6話で意味がわかるという仕掛けのようです。
ですので、この小説は最後の話まで読まないと、ただただ意味不明な怖い話で終わってしまいます。(個人的にはそれでも十分楽しめましたが)
3話目にフリーペーパーの編集者が登場します。大学生の頃にラジオ配信のサークルに入っていた人です。もしかするとこの方が所属する会社宛に送られたのが、1話目の女性からの投稿なのかも知れません。この小説ではオカルトライターの編集者も登場しますが、「懐かしの昭和レトロの思い出」の題で送られた投稿なので、フリーペーパーの企画ならあり得そうな内容です。
また、幽霊の状態で死亡した餓鬼道の少年(時にはおじさんにもなる)は、修羅道の若者たちの間で噂になっていて微妙につながりがあります。
他にも気になったのは、ラジオパーソナリティーをしていた女性。もしかするとエレベーターでアナウンスしていた女性と同一人物なのかも?などなど色々と考えてみたり。
まとめ
第1話と第6話で登場する女性のアナウンスでは、六道の世界を説明していました。
この説明で一番嫌なのは、死の後に生まれ変わったその世界は天上道であろうが苦しみは続く、ということです。
六道どの世界にいたとしても苦しみからは逃れられない。だから、その脱法方法として、幽霊になった状態で死ぬという行動を取る者もいた。世界にほころびができるので、女性のアナウンスでは厳しく叱責していました。
仏教にも様々な宗派がありますが、ある宗教では、この六道輪廻の上にあるのが菩薩界、さらにその上にあるのが仏界という考えもあるようです。必ずしもどの世界にいても苦しむ、とはならないことを信じたいなあ。
梨さんの「6」。奇妙な話ばかりでしたが、ホラー作品としてしっかりと楽しめました。
かなり内容を書いてしまいましたが、理解した状態で読むとスッと内容が入って読みやすいかも知れません。



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