真藤順丈さんの長編小説「宝島」の感想・解説・考察。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
本は上下巻あって長編です。
戦後の沖縄を舞台に3人の幼馴染が英雄を追いかけつつ、それぞれの戦いをする物語。
戦後の沖縄の立場や、アメリカ兵による複数の事件。戦後の沖縄のことをあまり知らなかったので勉強になりました。
現状を打破しようと戦う主人公たち。シリアスで暗い雰囲気の物語の中、陽気な沖縄弁は癒しポイントでした。
第160回直木賞、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞、三冠を受賞した作品です。
内容をある程度書いていますが、ネタバレはしていません。

オーディブルのナレーションは松本健太さん。とても聴きやすく、作品を聴き終わった後も数日は優しい沖縄弁が耳に残りました。
小説「宝島」のあらすじと感想
物語が長く、章で時代が変わっていきますが、1952年から1960年代の物語になっています。
米軍統治下の沖縄で起こった反戦運動、本土復帰の物語。
物語の序盤
コザでNo.1の英雄、うちなーNo.1の男、オンちゃん20歳。
オンちゃんの親友のグスク19歳。オンちゃんの弟のレイ17歳。オンちゃんの彼女ヤマコ18歳。
この4人がメインの登場人物。
オンちゃんは凛々しい眉と黒い髪が英雄らしい風貌の男。「戦果アギヤー」として連戦連勝をしていた。盗んだ戦果は沖縄住民に配られ、英雄として喜ばれた。(沖縄の米軍基地に忍び込み食糧や物資を盗んでいた)
嘉手納空軍基地に忍び込むオンちゃんたち。今回の作戦はオンちゃん主導ではなかった。
嘉手納基地は巨大なため、他にも仲間がいた。謝花ジョー(ジャハナジョー)という使い手も外部からの仲間に。
作戦は失敗。オンちゃんは行方不明に。
グスクとレイは逃げ切れたものの、後に捕まる。
レイは脱獄し3年服役。
物語の中盤
グスクは沖縄の民間警察になり、アメリカからの誘いでスパイ活動もすることに。
レイは服役後、裏社会の仕事でのしあがる。
ヤマコは教員試験を受け合格。小学校の先生になる。後に沖縄の本土復帰を目指す、復帰協の活動も始めた。
3人ともそれぞれの生活をしながら、オンちゃんを探し続けていた。
トカラ列島でオンちゃんがつけていた首飾りを見つけるレイ。トカラの住民の話では、オンちゃんらしい人物が船上で撃沈されたらしい。
レイは首飾りを持ってヤマコに伝えに行くが、タイミングが悪くまともに話ができなかった。
グスク、レイ、ヤマコの三角関係が複雑。仲の良かった3人に亀裂が走る。
グスクやレイが入手した情報では、オンちゃんは嘉手納基地で「予定にない戦果」を持ち帰ったらしい。この予定にない戦果の謎を追いかける二人。
物語の終盤
ヤマコを好きだったグスクだが、ヤマコはなぜか受け入れてくれず。そうこうしているうちに同じ職場の女性警官と結婚。子供も生まれた。(できちゃった結婚だった)
この時期から、オンちゃんが昔やったように、孤児施設などに無名で物資が届くようになる。
オンちゃんがいなくなって長い。ヤマコは自分が英雄になると決めた。この頃にはコサのジャンヌダルクと呼ばれるようになる。
終盤にはレイがキャンプ嘉手納からVXガスを盗む。日本は沖縄を犠牲にしている。軽視している。そのことが昔から気に食わなかった。本土と話をつけたかったレイ。
レイのようなテロリストを止めるグスク(警察)はVXガスの使用を止めるため、お互いが戦うことに。
オンちゃんがいなくなり20年が経過。最後にオンちゃんを発見する。
わからない言葉がたくさんあった
この物語を聴きながら、わからない言葉がたくさんあったのでインターネットで調べてみました。
- コザ…米軍基地に隣接した沖縄市中心市街地。アメリカ文化を強く受けた場所
- うちなー…沖縄、沖縄人
- 戦果アギヤー…沖縄の米軍基地から食料などを盗んで、沖縄の住民に配っていた人たち。占領下で生きる誇りや反抗を示す意味もあった。
- エイサー…沖縄の伝統的な踊り
- ユタ…沖縄のシャーマン
- ノロ…ユタと同じく沖縄のシャーマン
- ゆかりのうたき…神聖な場所
沖縄弁
- あきさみよー…色々な意味を持つ感嘆詞
- たっくるせー…叩き殺せ(物語中に連呼するシーンがあるんですが、こんな意味だったとは…)
- なんくるないさー…なんとかなるさ
- ちゃーいー…とても、ずっと
沖縄弁は語尾を伸ばす言葉が多い?この伸びた語尾に暖かさや親しみを感じます。
完全に全てフィクションだと思っていましたが、後で色々と調べてみると、この小説の話は史実に基づいた部分も多いようです。
沖縄は日本本土も見放していた節がある
小説では沖縄に駐在するアメリカ兵が沖縄住民を襲う事件が複数描かれていました。
特に女性や子供への犯罪は聞いていてキツかった。なぜか捕まってもアメリカに帰還されるだけという処罰。現在日本で起きている外国人の犯罪も処遇が軽いように思うけど、このあたり似てるかも知れない。
ヤマコが教師として働いている小学校に米軍の飛行機が墜落し、生徒に多数の死者が出る場面もかなりきつい。
アメリカ兵がVXガスを秘密裏に持ち込み、使用しようとしていた事実にもどこか日本政府の反応は鈍い。
沖縄の神聖な場所が興味深い
「ゆかりのうたき」なる場所が登場します。これは実在するそうで沖縄でも神聖な場所らしい。
他にもユタやノロなどのシャーマンの話、ヤマコがその血を引いている話なども登場して興味深かったです。
それから、レイがトカラ列島に行くシーンがあって、島にあったお面が気になったので調べてみました。
インターネットで調べてみると、悪石島のお祭りのお面らしい。画像で見るとかなり怖い 笑。
ちょっとした謎
物語の最初から語りべの存在があります。
僕がいまいち聞き取れてなかったかもしれませんが、おそらくこれはグスクのようです。
3人の視点で物語が描かれているので、主人公が分かりにくかったですが、グスクが主人公なのかな?
この点だけちょっと気になる謎でした。
タイトルの「宝島」について
「宝島」というタイトルですが、これはトカラ列島にある宝島(初めて知りましたがそういう名前の島があります)が由来かもしれません。
トカラ列島は英雄のオンちゃんが船上で撃沈した場所なので、意味のある場所でもあります。
著者の思惑は別にあり間違っているかも知れませんが、少しくらいは関係があるかも知れません。
まとめ
終盤の話ですが、1972年に沖縄返還がされ、沖縄の通貨もドルから円に変わります。
グスクから見れば、結局ほとんど変わり映えはしなかった、という感想が無念さを感じます。
この物語をオーディブルで聴き始めた最初の頃は、米軍基地は日本を守るためにあるから、基地反対というのはちょっと違うのでは?という気持ちがありました。
日本全体から見れば、日本を守ってくれる(とされている)米軍基地は必要だと感じます。
ただ、基地があるその場所の住民にとっては迷惑でしかなかった。アメリカ兵による犯罪は起こるし、軍用機の墜落、VXガスの問題などなど。
正直に言って、僕が非常に知識が浅いので、なかなか難しい問題だと感じました。
戦後の沖縄の歴史を少しでも触れることができたので、そういう意味で個人的に価値のある小説でした。
そう言えば映画にもなって話題になっていたので、映画はまた機会があれば見てみようと思います。U-NEXTで見る予定です。


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