久坂部羊さんの新書「人はどう死ぬのか」の感想と考察。
2023年3月発刊。
この本はサブスクのKindle Unlimitedで読みました。
久坂部羊さんは医者として日本だけでなく海外のいろいろな場所で医療に携わった方です。
この本では特に終末医療について書かれていて、人の死に方について色々と考えさせられる内容でした。

非常にテンションの落ちる内容でしたが(笑)、死と向き合うことの重要さを知ることができてよかった。
「人はどう死ぬのか」
この本で著者が何度も書いていることは、
人はどうやってもいつか死ぬし、医療も万能ではない。だから自分の死を受け入れて、高齢であれば医療にかからずに自宅で亡くなるのが良いとのこと。
もう一つは、普段から死を受け入れること。
死の恐怖にも慣れがあって、普段からリアルに死を意識することで恐怖心も薄れていく。らしい。
在宅で最期を迎えるには
在宅で看取るというのは家族の理解も必要。
救急車を呼んでしまうと、医者は治すためにあらゆる手段を施さざるを得なくなる。医者は万能ではないので、できることは限られている。
最期を迎えることを受け入れ、無意味な医療行為をしないほうが、死にゆく当人のためであることを、事前に十分、理解していたからだと思われます。
人はどう死ぬのか
死の直前には点滴も酸素マスクも効果がなく、むしろ当人の負担になるだけで、それをすることで当人が楽になったり、ましてや寿命が延びたりすることはあり得ないと、わかっているからこそ、静かに見送ることができるのです。
在宅医療は思っていたほどお金がかからないようです。こういう情報も有難いですね。
在宅医療は一割負担の場合、月額六千円から一万円程度、訪問看護は回数と時間によりますが、数千円から一万円前後と考えておけばいいでしょう。
人はどう死ぬのか
死をタブーにしない
著者はオーストリアで仕事をしていた時にウィーンの「死の肖像展」に行ったそうです。
展示の入り口では著名な音楽家(ベートーヴェン、ハイドンなど)の90個ほどのデスマスクが展示されていたとか。
ウィーンでは至る所に死にまつわる場所があって死をタブーにしていない。
それと、オーストリアでは人間ドックは無いそうです(現在はわかりませんが)。
オーストリアの医者の話
「日本人はほんとうにありがたいお客だよ。何しろ、どこも悪くないのに検査を受けてくれるんだから」
心配や不安はキリがないし、いくら熱心に人間ドックを受けていても、調べない臓器や病気もあるので、百パーセント安心というわけにはいきません。
人はどう死ぬのか
人生100年時代の意味について
人生100年と言われるようになりましたが、正直、そんなに生きたくないよなあ…。
元気ならいいけど、体のあちこちはガタが来て悲鳴を上げてる可能性は高そう。
この言葉の意味するところは、「百歳まで生きられる」ではなく、「百歳まで死ねない」ということだと私は思います。それがどれほど恐ろしいことか。
人はどう死ぬのか
想像してみてください。あとはもう死ぬ以外ないとき、耐えがたい苦痛だけが続いている状況で、その苦しみを体験していない人から「頑張れ」「生きろ」と言われたら、どれほどつらいか。
人はどう死ぬのか
ピンピンコロリ(元気に老いて死ぬときはコロリと逝く)について。
ピンピンの部分は見かけるが、その後、コロリと逝けたのか?という部分はほとんど見かけない。
冷静に考えればすぐにわかることですが、若いときから健康に注意して、節制しながら生活していれば、内臓が丈夫な分、コロリとは死ねません。コロリと死ぬのは、若いうちから不摂生をしてきた人です。
人はどう死ぬのか
体が丈夫な分、医療で延命できてしまうが、その分苦しみも増す。
健康的な生活も考えものだなあ…。
安楽死について
全く知らなかったですが、安楽死が合法化している国や州が結構あるようです。
世界で最初に安楽死法を可決したのはオランダ。2001年。オランダの他には、ベルギー、アメリカのワシントン州、カリフォルニア州、オレゴン州ほか数州、ルクセンブルク、カナダ、オーストラリアのビクトリア州、ニュージーランドなどが安楽死を合法化しているとのこと。
死そのものには恐怖はそこまでないけれど、死に至る苦痛がやっぱり怖い。安楽死できるなら選ぶ人はかなり多そう。
がんについて
がんで死ぬ時に大事なことは、無理に治ろうとしないことです。過激な治療ではなく、ほどほどの治療でようすを見て、治療の効果より副作用のほうが大きくなったら、潔く治療をやめる。これががん治療の要諦です。
人はどう死ぬのか
がん検診で発がんすることもあるらしい…。
がん検診の検査被曝による発がん。日本では世界中でダントツに多いとか。
それから
がんの確定診断をつけるための生検は、鉗子で腫瘍の一部をちぎり取る。出血しがん細胞が剥がれる。その剥がれた細胞が血管内に入る。そこでがんが転移している可能性は捨てきれない。
こんなことを言われると、がん検診やそもそも人間ドックですら、必要ないと思ってしまいます。
著者は膨大な数の人の死を看取ってきたからこそ、医療にかかって延命することの悲惨さを訴えているんでしょうね。
久坂部羊さんの小説はめちゃ面白くておすすめ
この本をKindle Unlimitedで発見して読もうと思ったのは、久坂部羊さんの本だったからです。
医者としての実績もすごいですが、実は小説家としても活躍しています。
小説もめちゃくちゃ面白い。
僕が読んだことがあるのは「無痛」と「老乱」。どちらもかなりおすすめ。
漫画家の手塚治虫さんも医師免許を持っていたそうですが、久坂部羊さんは小説界の手塚治虫と言ってもいいかも知れません。(医師としての実績が長いのでちょっと違うかもですが)
本のサブスクKindle Unlimited初月無料でおすすめです。
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