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長編小説「イクサガミ」の感想。武士たちの最後をかけた戦いが熱い!

長編小説「イクサガミ」の感想。武士たちの最後をかけた戦いが熱い! Audible
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今村翔吾さんの長編小説「イクサガミ」の感想・解説・考察。

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天、地、人、神の全4巻。全巻を読んでの感想です。

4巻全てAudible(オーディブル)で聴きました。

オーディブルのナレーションは山口恵さん。名前が女性っぽいですが男性の方です。12歳の女性から70代の高齢のおじいちゃんまで、たくさん登場人物がいますが、声の使い分けが素晴らしく物語に没頭できました。

イクサガミは2025年にNetflixのドラマになって話題を集めていますね。

この記事ではイクサガミのネタバレは無しで感想を書いています。

4巻全て読んだ後の感想ですので、ドラマを見て気になった方、ちょっと内容を知りたい方はぜひチェックしてみてください。

正直、物語がかなり長いですが、すべて読み終わった後(聴き終わった)は、とてもすっきり。ちょっと双葉が大人すぎて、やりすぎてる感はありました 笑。非常に面白い作品なので、Netflixでドラマを見ている方も楽しめると思います。

gao the book
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明治初期の話ですが、幕末の人斬りたちも登場します。史実を元にした物語なので、個人的には歴史の勉強にもなりました。

小説「イクサガミ」のあらすじ

イクサガミは様々な伏線が用意されています。かなりの長編なので、読者に途中で離脱されたり飽きさせないように複数の伏線を用意しているのかも知れません。

もともとネタバレするつもりはないのですが、どちらにしても全てを説明するのはなかなか骨が折れます。まずは簡単にあらすじを書きます。

物語の舞台は明治11年。刀の時代はほぼ終わりを迎える。

京都の天龍寺で「蠱毒(こどく)」に参集した292人。最後まで生き残れば10万円の報酬をもらえる。(今で言うと40億円くらい?)

超高額の報酬を目当てに集まった腕に自信を持った者たち。各々の武器を手に武士として最後の戦に挑む。

ざっくりとこんな話です。

蠱毒の知らせは広告新聞で全国に配られ告知。

ただ、報酬が高額過ぎてどうも胡散臭い。話半分で集まった者たちばかりでしたが、天龍寺で実際に運営側の話を聞いてみると、どうやら本当に報酬を貰えることを確信。

「蠱毒(こどく)」は前半と後半がある

「蠱毒」は京都の天龍寺で開始。

そこで蠱毒の運営から、報酬の信憑性、蠱毒のルールが説明される。この運営の人たちがそもそもかなり怪しい。

天龍寺から出発して、決められた7箇所の関所を通過し、東京へ行くこと。そして7つの掟を守ること。

7つの関所を通過するには、それぞれの場所で決められたポイントが必要。参加者全員に配られた「番号が書かれた木札」。この木札1枚が1点。

他の参加者の木札を奪いながら関所を通過。東京への定員は9名(早い者順)のみ。そして東京に一ヶ月滞在すること。

ここまでが前半の蠱毒。

自分の札を守りつつ、必要な点数の札を集めながら進む。前半はHUNTER×HUNTERのハンター試験みたいな(他にもっと今風のいい例えがあるかもしれませんが)物語です。

後半については、内容を書いてしまうとネタバレになってしまうので割愛します。

時代遅れの武士たちの戦いが熱い

1巻から3巻までが蠱毒の前半戦、4巻目は後半戦という構成になっています。

主人公のような剣の使い手はもちろん、拳、槍、薙刀、斧、鎖鎌、様々な武器の使い手が登場。日本だけでなく、海外からの参加者も数人いてその誰もが強者揃い。

この物語のほとんどは、強者たちが蠱毒に参加するに至ったエピソードと、武技の卓越さが描かれています。各々のエピソードがあって、そして戦う。この繰り返しの展開が続きます。

それぞれのエピソードを読んでいると、その一人一人を応援したくなりますが、東京に辿り着けるのは9名のみ。

最後に報酬をもらうのは誰になるのか?気になるところです。

謎が多い

上記の剣豪たちのエピソード、戦いも面白いですが謎も多く存在します。

  1. 蠱毒の主催者は何者なのか
  2. 蠱毒参加者に一人一人につく監視者が何者なのか
  3. 主人公たちが持つ奥義「京八流」の謎
  4. 「朧流」の謎

こういった複数の謎の存在によって、長編でも最後まで楽しめました。

小説「イクサガミ」の登場人物

「イクサガミ」の登場人物で主要な人たちを書きます。

京八流の面々(太字アンダーラインの3人はメインの人たち)↓

  • 赤池一貫(あかいけいっかん)…4年前に亡くなる。京八流奥義「北辰(ほくしん)」を継承。目の奥義。視野が広がり、相手の一瞬先を予測できる。
  • 嵯峨愁二郎(さがしゅうじろう)…主人公。28歳。京八流奥義「武曲(ぶきょく)」を継承。脚の奥義。舞うように軽やかに動く。人斬り刻舟(こくしゅう)と呼ばれる。蠱毒の参加理由は、妻と子のコレラを直すための高額なお金。10年以上土佐藩に在籍していた。駅逓局(郵便局)にも勤めていた。
  • 祇園三助(ぎおんさんすけ)…京八流奥義「禄存(ろくぞん)」を継承。耳の奥義。遠くの音を感知し、自身の足音を消せる。蠱毒に参加。
  • 化野四蔵(あだしのしくら)…京八流奥義「破軍(はぐん)」を継承。腕の奥義。触れた剣をことごとく破壊する。田中次郎という仮名で蠱毒に参加。
  • 壬生風五郎(みぶふうごろう)…京八流奥義「巨門(こもん)」を継承。胴の奥義。筋を硬化し斬撃を守る。蠱毒に参加。
  • 蹴上甚六(けあげじんろく)…京八流奥義「貪狼(とんろう)」を継承。肌の奥義。自動的に攻撃を感知し攻めを跳ね返す。過去に2回も岡部幻刀斎に襲われたが、2回とも凌ぎ切る防御力を持つ。蠱毒に参加。
  • 烏丸七弥(からすましちや)…京八流奥義「廉貞(れんじょう)」を継承。口の奥義。独自の呼吸法で身体能力を高める。数年前に岡部幻刀斎に斬られ亡くなっている。
  • 衣笠彩八(きぬがさいろは)…京八流奥義「文曲(ぶんきょく)」を継承。指の奥義。剣の動きをありえない方向に曲げることができる。23歳。蠱毒に参加。愁二郎に懐いていた。

蠱毒参加者(300人近くいるのでメインどころだけ。太字アンダーラインの人物は主要キャラ)↓

  • 香月双葉(かつきふたば)…12歳の少女。短刀を扱える。病気の母を助けるために高額なお金が必要になり蠱毒に参加。
  • 岡部幻刀斎(げんとうさい)…仕込み杖を使う。朧流の使い手。関節を自在に動かせる、骨の変形など、他にも様々な技を隠し持つ。70代だがまだまだ元気。ラスボス的な存在。
  • 貫地谷無骨(かんじやぶこつ)…「乱切り無骨」と呼ばれる。旧時代の亡霊。右目は義眼。愁二郎と何度も戦うことに。
  • 柘植響陣(つげきょうじん)…ざんぎり頭の伊賀忍者。声色を変えたり、腹話術、変装もできる。蠱毒に参加した理由は助けたい女性がいるから。普段は新聞記者として働いている。
  • カムイコチャ…アイヌ人。100年に一度の弓の名手。神の子と呼ばれる。北海道の土地を買い戻すため蠱毒に参加。嘘が嫌い。
  • 狭山進次郎…23歳。父の仕事(銃の修理)を手伝っている。銃に詳しい。途中で仲間になる。
  • 菊臣右京(きくおみうきょう)…長い太刀を使う。美形の長髪。卑怯なことを嫌う。
  • ギルバート・カペル・コールマン…イングランド出身。ワイバーンの異名を持つ。小さい頃から騎士として育てられる。180cmを超える大男で腕っぷしが強い。様々な戦争を経て、薩摩藩の軍事顧問になる。手斧とサーベルを扱う。
  • 秋津楓…会津出身。婦女隊。薙刀の名手。
  • 陸乾(りくけん)…中国出身。素手で戦うシーンが印象的だが、様々な武器も高いレベルで扱える。幼い頃から武闘の天才。天龍寺では幻刀斎を引かせたほどの強さ。
  • 天明刀弥(てんみょうとうや)…父は仏生寺弥助。背中に立ち上がる陽炎(オーラのようなもの)が見える。素早い斬撃が得意。剣術の天才。
  • 眠(ミフティー)…台湾出身。女性。毒の使い手。台湾の伝説と呼ばれる。

蠱毒参加者の監視役↓

  • 槐(えんじゅ)…監視役のリーダー。
  • 橡(つるばみ)…愁二郎と香月双葉の監視担当。双葉を気遣い援助する。
  • 椒(はじかみ)…蹴上甚六の監視担当。女性。
  • その他多数。やまなし、くちなし、しきみ、さらい、などが登場。
  • 監視役は、木偏(きへん)と呼ばれ、全て植物の名前で構成されている。その誰もが卓越した技を持つ忍者集団。

有名な人斬り↓

  • 桐野利秋(中村半次郎)…幕末の薩摩藩士。薩摩示現流の使い手。何度も愁二郎たちの前に立ちはだかる強敵。剣術が好きな明るい人斬り。
  • 田中新兵衛…幕末の薩摩藩士。過去の回想で少しだけ出る。
  • 岡田以蔵…幕末の土佐藩士。過去の回想で少しだけ出る。

蠱毒運営側の人たち↓

  • 川路俊道…蠱毒の主催。警視局長。大久保利通の暗殺を企てる。
  • 榊原…三菱財閥に所属。
  • 諸沢…住友財閥に所属。
  • 神保…三井財閥に所属。
  • 近山…安田財閥に所属。
  • 平岸…調整役。多数の達人を揃えている。

その他の人たち↓

  • 大久保利通…愁二郎が薩摩藩にいた頃からの顔馴染み。愁二郎は薩摩藩時代には人斬り刻舟(こくしゅう)と呼ばれていて、大久保の護衛をしていた。愁二郎の手助けをする。中村半次郎に襲われる。
  • 前島密(ひそか)…内務省駅逓局長。愁二郎とも古くからの知り合い。
  • 他にも伊藤博文、乃木希典なども登場します。

小説「イクサガミ」の良かったところ

達人たちの戦いが熱い!

あらすじにも書きましたが、物語のメインである京八流の8人以外の人物も強敵ばかり。

メインどころの人物はそれぞれにエピソードがあって、1章を丸ごとそのエピソードに割いています。

蠱毒には300人近くの猛者が登場して、脇役も魅力ある人物が多数。

監視役の凄腕の忍者たち、蠱毒運営側が従えている剣豪たち、幕末の人斬りまで登場して、もうお腹いっぱい。

次から次へ強敵が登場してバトルが繰り広げられるので、ビジュアルでアクションシーンを楽しめる映像作品であればより楽しめそうです。

ということで、Netflixのドラマが盛り上がっている理由もわかる気がします。

双葉がチート

おそらく物語を読んだ方なら理解できると思いますが、香月双葉がチートキャラです。

蠱毒という危険なイベントに参加する12歳の少女。これだけでもかなり異質ですが、殺伐としたイベントの中で唯一、人としての心を維持させてくれるバランサー。

この作品自体が、双葉の成長物語と言い換えてもいいかも知れません。

菊臣右京がかっこいい

序盤で登場する剣豪の菊臣右京。右京という名前から、僕は「サムライスピリッツ」という昔のゲームに登場する橘右京のイメージしかありませんでした。居合の達人で投げたりんごを切り刻むキャラ。

まさかとは思いましたが、イクサガミに登場するこの菊臣右京、サムライスピリッツの橘右京に結構似ていました。

大きな太刀を扱います。「太刀」と「刀」は同じものと思っていましたが、太刀は大きく湾曲した刀らしい。そして、この作品の中でも太刀を使う人はかなり珍しいと書かれていました。

正義感が強く、何度も双葉を守ってくれる長髪のイケメン剣士。

双葉を「お嬢さん」と呼び、敵に対して「卑怯な真似はおやめなさい!」というセリフも痺れました。

不利な状況の方が強くなる人たち

主人公たちの前に何度も立ちはだかる剣豪、貫地谷無骨(かんじやぶこつ)。旧時代の亡霊と呼ばれたり、様々な名前で呼ばれる。

戦うたびに強くなる強敵。片目は義眼ですが、義眼を外すとなぜかより強くなります。

そして、ちょっとしか登場しませんが、高齢の一刀の使い手「轟重左衛門(とどろき じゅうざえもん)」も好きです。聴覚を失っているが、失ってからの方が強くなった。正々堂々と戦う様もかっこいい。

仏生寺弥助と新撰組の戦いが熱い

2巻目で登場する仏生寺弥助。強い剣士を見ると、背後に陽炎のようなオーラが立ち昇っているのが見える。

京都に出張のような形でいた際に、新撰組の芹沢鴨から組の一員に誘われるが断る。

新撰組の若い面々を見て、弱いと馬鹿にしていた弥助だが、沖田総司に遭遇。沖田の背中からはオーラが立ち上っていた。

弥助と沖田の戦いはかなりの見どころ。弥助は沖田の鋭い突きに翻弄され、こんな強い奴がいたのか!と驚く。

特にこの作品では記載がなかったですが、沖田は実際に「三段突き」を得意としていて、この「三段突き」をかわす人は滅多にいなかったらしい。

そして、沖田総司以外にも、岡田以蔵、中村半次郎という剣豪の存在を知り、世の中まだまだ捨てたものではない、と喜ぶ姿がまた良かった。

上記の話は過去の回想になるんですが、蠱毒では仏生寺弥助の息子の天明刀弥(てんみょうとうや)が参加します。親が親なら子もすごい。刀弥は主人公たちが束になっても敵わないような強さを見せます。

京八流の謎

京八流の剣士は幕府の「為政者の剣」として仕える。700年の歴史がある。世間にはほぼ知られることがない流派。

京八流の奥義は主人公含めた8人に一つずつ伝授された。しかし、13年前に師から殺し合いを命じられる。生き残った1人だけが8つの奥義を1人で継承することに。

ここでわかるのは、師匠は過去に継承戦で生き残った一人、ということ。

一緒に剣技を学んできた友人たちと突然殺し合いをさせられる。漫画の「あずみ」を思い出しました。

奥義の継承方法は特殊で、なんと、口伝で継承できます。この部分は、なんとなく腑に落ちないというか、議論の余地ありです。

主人公も含めて、京八流の剣士は奥義を複数持っています。(何人か亡くなっていて奥義を継承している)

主人公たちは物語の途中で「奥義は1人1つを扱う方が強い」ことに気づきます。つまり8人で戦えば最強。なぜ継承戦をして一人に集める必要があったのか?

そして、岡部幻刀斎(げんとうさい)なる老人が京八流の面々に襲いかかってきます。朧流という流派の幻刀斎。継承戦を破棄した場合、8人を襲うための流派という設定ですが、これもまた終盤に色々と分かります。

とにかく謎が多いので最後まで楽しめました。

タイトルでもある「イクサガミ」の謎

岡部幻刀斎(げんとうさい)は京八流の剣士と戦うたびに、「ハンガミ」という言葉をよく口にします。

おそらく半神の意味だと思いますが、タイトルの「イクサガミ」にもちゃんと意味があったようです。

戦いまくる話だからイクサガミなんだろうなと、安直に考えていました 笑。

ここは京八流の謎にも関わる話ではあるので割愛しますが、朧流との関わりも深く関係しています。

まとめ

最初は勘違いして2巻目から読んで読み終わった後に「え?これ続編あるんだ?」と気付きましたた。仏生寺弥助(豊次郎)が主人公と思っていたくらい 笑。息子がめちゃ強くて活躍するのは間違いはなかったんですが。
※ちなみに後で知りましたが、仏生寺弥助は実在していたようです。興奮しました。

そして、1巻から読み直して3巻を読み終えても途中で物語が終わる。後半戦は?と思っていたら、4巻まであったようです。勝手に3巻で完結と勘違いしていた自分も悪い 笑。ただ、天、地、人、神という巻名は分かりにくくない!?。

大まかに個人的に面白かった部分をピックアップしましたが、他にも柘植響陣(つげきょうじん)、ギルバート、カムイコチャの過去の話もかなり面白いのでぜひ読んでみてください。

それから主人公の嵯峨愁二郎ですが、非常に肩書きが多いというか、28歳という年齢の割に経験していることが妙に多い。

戊辰戦争の時には十二支隊という新政府軍の中で腕の立つ者だけを集めた隊に所属していました。「子」「丑」みたいな形で十二支の名を冠しています。

蠱毒に参加していた者の中にもこの十二支隊の元隊長たちがいます。鎖鎌を使う中桐傭馬(なかぎりようま)、貫地谷無骨(かんじやぶこつ)もその一人。

このあたりの話はイクサガミのスピンオフ作品「イクサガミ 無」でも少し描かれています。「イクサガミ 無」もオーディブルで聴き終わっているので、感想を書く予定です。

いずれにしても「イクサガミ」、非常に面白い作品でした。

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