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ホラー小説「ぜんしゅの跫」の感想。シリーズ5作目やっぱり面白い!

比嘉姉妹シリーズ5作目見えない足音が 近づいてくる恐怖!「ぜんしゅの跫」の感想。ホラー小説 ホラー
この記事は約7分で読めます。

澤村伊智さんのホラー小説「ぜんしゅの跫」の感想・解説・考察。

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「ぼぎわんが、来る」から始まる、比嘉姉妹シリーズの第5弾目。

この小説はKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)で読みました。

Kindle Unlimitedで他の本と並行して読んでいるんですが、自然と他の本と比較してしまいます。僕がホラー好きという点もありますが、やっぱり比嘉姉妹シリーズは圧倒的に面白い。

「などらきの首」と同じく「ぜんしゅの跫」も5つの短編集になっています。

過去の物語に関わりがある話も入っているので、できればシリーズを順番に読んだ方がおすすめです。

gao the book
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タイトルの「跫」の読み方がわかりませんでしたが、「あしおと」と読むらしいです。

ホラー小説「ぜんしゅの跫」のあらすじと感想。

「ぜんしゅの跫」の5つの短編それぞれのあらすじと、感想を入れてご紹介します。

ある程度内容は書いていますが、オチなどの重要な部分は書いていません(ネタバレはしていません)。

朝、妻と会話をする主人公。妻のお腹は大きく数ヶ月後には赤ちゃんも生まれる。

二人が会話を交わす中で、夫婦間に微妙な関係の悪さを感じます。最初からどこか不穏な空気。

主人公は取引先の関係で、結婚披露宴会場(立派なホテル)に行く。

ホテルの壁際には巨大で古めかしい鏡があった。高さは2mを超す。

見間違えかと思ったが、確かに鏡に写っていた。顔の半分が無い血だらけの男が口をぱくぱくさせて何かをしゃべっている。

昼間のこんな華やいだ場所にいる異形。この対比にビビる主人公。

そこで不意に会社の後輩に話しかけられ、鏡の人物は消える。

そもそも後輩と一緒に出席することさえ「ど忘れ」していた。最初からずっと主人公の様子が何かおかしい。

この物語の主人公は、シリーズ1作目「ぼぎわんが、来る」に登場した田原(知紗のお父さん)。育児日記を書いてた人です。

披露宴で映し出されるスクリーンに、先ほど鏡で見た右半身がほとんどない男性が写る。他の人には見えてなかったらしいが、隣の席の人物から「変な映像流れてましたね?」と聞かれる。

この男性は50代の野崎。

田原と野崎の年齢が合ってないし、比嘉真琴は既に亡くなっている設定に。

シリーズの過去作は読んでいますが、過去の物語と結びつけてみるも訳がわからない。

終盤に比嘉琴子が「鏡」の話をしに登場。

この鏡は「浄玻璃鏡」。別名「閻魔の鏡」と呼ばれている。過去の罪だけでなく未来の姿、親族や友人知人の過去や未来も見える。

「ぼぎわんが、来る」の前日譚的なストーリーでした。

わたしの町のレイコさん

主人公の飛鳥は母の妹、弥生の怖い話を聞くのが楽しみだった。

弥生は夫婦喧嘩をしてよく飛鳥の家に泊まりに来ていた。オカルト雑誌の編集の仕事をしている。

この物語のメインの話は都市伝説。都市伝説の面白みは「伝わり広まること」。そして都市伝説は地域によって同じ話でもさまざまなバリエーションがあるらしい。

飛鳥に「トイレの花子さん」の話や「カシマレイコ」の話を聞かせた。

似たような話で、飛鳥の学校でも「オカマのレイコさん」なる都市伝説があった。バリエーションとしては珍しい。弥生は記事になると思い調査する。

飛鳥も記事の助けになると考え「オカマのレイコさん」の話をクラスメイトなどから聞き出し、彼氏と一緒に探索をする。

二人はオカマのレイコさんに遭遇し事態は悪い方向へ。

この話はおそらく比嘉姉妹と関係が無さそう。オカルトライターの野崎も登場しません。もしかすると後のシリーズで関わりが出てて来るかも。油断できない 笑。

少し悲しい話ですが、都市伝説の話は面白くてよかった。

鬼のうみたりければ

野崎の元仕事仲間、希代子から電話がかかってきた。10年以上ぶり。電話の後すぐに、話を聞いて欲しいという理由で、兵庫県から東京まで野崎に会いに来る。

希代子の旦那の母が二年前に膜下出血で倒れ、後遺症で要介護に。旦那は職場でクビになる。母はその後認知症になった。希代子は仕事と介護をこなして頑張っていたが半年後に倒れる。

なんとか体調は戻ったものの、旦那は仕事が見つからず大変な状態ではあった。

ある日、旦那から打ち明け話を聞かされる。

実は双子の兄がいて小学生の頃に二人で山に行った際に、兄が行方不明になった。その後ずっと行方不明のままらしい。

詳しく話を聞くと、山の中で着物を着た行列がいて、何人かが大きな荷物を協力して抱えていた。こんな山の中で? 優しい顔で微笑んでいた行列の人たち。兄はふらふらと列に入りそのまま振り返らずついていった。旦那は動けなかったらしい。

そんな奇妙な話を聞いた後日、旦那の兄と言う旦那そっくりの顔の男が家にやって来た。

その後、一緒に生活をすることになる。しかし、普通の会話はできるものの、家電や食べ物などを全く知らない。

奇妙で怖い話の中でボソッと出てくるこのセリフが面白かった↓

「ほんまや、辛そうで辛くないけど少し辛いわ」って嬉しそうにご飯にラー油かけて食べてんねんもん。

ぜんしゅの跫

その後、兄はバイトをしてお金を入れてくれつつ、母の介護も手伝ってくれて希代子は助かっていた。

だが、忽然と兄がいなくなって、また戻ってきて、という何度かの繰り返しがあった。

終盤の旦那の話がかなりエグいです。

わざわざ遠いところから野崎の元にやってくる理由がわかった。これは只事ではない。

タイトル通り鬼の話も絡んできますが、この話はめちゃ怖くて面白い。超おすすめ。

赤い学生服の女子

主人公の古市は、高速道路で営業車を走らせていたところ、玉突き事故に遭い、落ちてきたワゴン車の下敷きになる。頭以外は怪我はなかったが開頭手術をした。

同じ病室の患者の人たちは病院にいる「赤い学生服の女子」に会い、どんどん亡くなっていく。

最初は2つ目の短編と同じく都市伝説の話かな?と思っていましたが、ちょっと違いました。 

この物語では比嘉姉妹の一人、比嘉美春が登場します。古市は美春と小学時代の同級生だった。中学は別になったが古市は美春のことが好きだった。美春は中三で亡くなっていたことを後で知る。

いつも看護してくれる看護師にその話にすると、なぜか妙にオカルト話に詳しい。

「直接人間の姿に化けないオバケも結構いるんです。人間は虚像で、本体は灯りに化けたりする。行灯とか、提灯とか。今回は蛍光灯」

ぜんしゅの跫

悲しくて残酷で、めちゃ泣ける話!

ぜんしゅの跫

最後は表題の物語。この話、めちゃ面白いです。

オカルトライターの野崎、比嘉姉妹の比嘉真琴、比嘉琴子も登場。

2作目の「ずうのめ人形」の話から四ヶ月後の話。

野崎と真琴は結婚式と披露宴を開催。真琴の友人の田誉にウェルカムボードを書いてもらっていた。無事披露宴が終わった後、姉の琴子も仕事の合間に祝いに来た。泣きじゃくりながら喜ぶ真琴。

煉瓦のような分厚さの御祝儀を渡す琴子 笑。

この話では「見えない通り魔」あるいは「足音の怪」なる化け物が登場。

最初から野崎も琴子も死に直面するほど大ピンチに。

何より、百戦錬磨の琴子ですら見たことがない姿の化け物らしい。

歩道橋が窮屈に見えるほど大きく、丸々とした影だった。高さ三メートルは下らない。全身が毛に覆われ、腕も足も丸太のように太いのが、輪郭でわかる。熊のように思えたが、決定的に違う箇所がある。
大きな頭に湾曲した角が生えていた。

ぜんしゅの跫

街の人たちも多数、見えない何かに突進され怪我をしたり犠牲者が出ていた。

この化け物が最後に消えた場所には巨大な家があった。そこに住む変な兄弟、そしてその家にある襖に描かれた2匹の異形の獣。琴子や野崎が感じ取った見えない獣の輪郭とそっくりだった。

「しばらく考えて言ったそうだ これは二頭合わせて”ぜんしゅ”ないし”がしゅそくせい”だろう、ってね。どういう意味かは教えてくれなかった『疎かなり疎かなり』と笑うばかりでね。さ、どうぞ熱いうちに」

ぜんしゅの跫

優れた画家の描いた絵が、夜な夜な抜け出て近隣に被害をもたらす。
画竜点睛の古事を例に出すまでもなく、優れた絵が実体化する、という伝説は、古代中国からあった。

ぜんしゅの跫

この話はどちらかというとホラーよりはミステリー要素が強い話でした。

まとめ

シリーズ5作目「ぜんしゅの跫」は、5つの短編とも全体的にいい話で終わるパターンが多かったです。

特に5つ目の短編の表題作「ぜんしゅの跫」は野崎や比嘉姉妹の活躍が見れて大満足。短編集の場合はいつものメンバーがちょっとしか出ないことが多いので、短編全話、もっと登場してもいいのにな、という気持ちは強かったです。

野崎が真琴を見つめるシーンが多く「そんなに愛しているのか」と少し微笑んでしまいました。

過去のシリーズ作も感想を書いています。

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