呉勝浩さんの小説「爆弾」の感想・解説・考察。
この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。
2025年に映画化された話題作。原作小説がかなり面白かったので映画も期待!
オーディブル版のナレーションは星祐樹さんと品田美穂さん。2名のナレーションが豪華で力の入り具合を感じます。非常に聞きやすいナレーションで、特にスズキタゴサクのナレーションは味があって良かったです。
タゴサクが登場する章は星さん、現場で活動する巡査の倖田沙良が登場する章は品田さんという感じで、章ごとに交互にナレーションが入れ替わります。

ぐいぐいと読ませるパワーがすごい。爆発的な面白さでした。
小説「爆弾」のざっくりあらすじ
ネタバレしない程度に小説「爆弾」について書きます。
霊感持ちのスズキタゴサク
酒屋の自動販売機の器物破損と店員に暴力を振るったことで、野方署で取り調べを受ける自称スズキタゴサク。49歳。
やたら饒舌で自身を卑下することばかり言うが、頭の回転はかなり速い。
野方署の等々力(とどろき)が取り調べをしていたところ、タゴサクから「私は霊感がある。秋葉原で何かが起こる」と言い出す。
その後、秋葉原で爆発事件が起こる。爆発を確認したタゴサクはさらに「同じような爆発が後3回起きる。次は1時間後に爆発すると霊感が言っている」と言い出す。
胡散臭いが霊感だが、2つ目の爆弾が東京ドーム近くで起こり、二人が爆風で飛ばされ重症。
ここからタゴサクは重要参考人として、取り調べをされることに。
物語の序盤を読んだだけで(聴いただけで)「絶対こんなの面白いやろ!」と確信。タゴサクの不毛な会話とそれに対応する等々力も面白い。
警視庁捜査一課の清宮と類家(るいけ)が、タゴサクの取り調べ担当に変わります。等々力は現場捜査担当に変更。
警視庁捜査一課は特殊班。清宮は長年の経験で培ってきたパズルを組み立てるような方法で、取り調べをし相手を追い詰める。清宮の部下の類家はとにかく頭がキレる。
ちょっと話がそれますが、オーディブルではタゴサクの喋りがアニメの「笑ゥせぇるすまん」の喪黒福造に似ていて、これがとても良かったです。
9つの尻尾
取り調べ担当が等々力から清宮に変わっても、のらりくらりと話をかわすタゴサク。
タゴサクは清宮に「9つの尻尾」というゲームを提案する。
9つの質問に答えることで清宮の「心の形」がわかるらしい。受けて立つ清宮。ワクワクが止まらないタゴサク。
質問は心理テストのような内容で、序盤は漠然とした質問が多かったが、5問目の質問でいきなり個人名(長谷部有孔の名前)が出てくる。
清宮はその突拍子もない質問に度肝を抜かれる。
現場捜査の話も同時に進む
池袋署の巡査である倖田沙良(こうださら)と倖田の3つ上の先輩の矢吹泰斗(やぶきたいと)。
倖田と矢吹はお互いに気を遣わずに本心を語れる仲(会話では牽制し合っているが、お互いに好意を抱いている感じはします)。
倖田はスズキタゴサクを居酒屋でしょっぴいた本人でもあるので、爆弾事件は他人事ではなかった。
倖田と矢吹、そして猿橋(倖田は心の中でラガーさんと呼んでいる)が今作のメインの現場担当で、爆弾を探しに奔走します。
ちなみに、タゴサクの取り調べ補助(調書に記録する係)をしている伊勢は矢吹の同期。
等々力と長谷部有孔
最初は等々力が主人公かと思っていましたが、主人公級に活躍する人が多くて、そうではなかったようです。
等々力の先輩刑事の長谷部有孔(はせべゆうこう)。長谷部は正義感が強く野方署でも名物刑事だったが、過去のある事件で退職し、電車に飛び込んで死去。
今作で重要人物の長谷部ですが、等々力の存在によって、より人間味のある物語になっています。
3つ目の爆弾
タゴサクの9つの尻尾の質問は続き、指を1本ずつ立てながら話すタゴサク。類家は次の爆弾のヒントがあると察知し、ヒントから爆弾の在処を探る。
爆弾の場所を特定し、倖田は咄嗟の判断で爆弾を発見。無事、被害者を出さずに処理。
3つ目の爆弾が見つかったことで、取り調べ役がコワモテの刑事に変わる。
乱暴な取り調べをするもタゴサクは暖簾に腕押し。まったく意に介さず寝る始末。
4つ目の爆弾
再度、取り調べは清宮が担当。
さっきのコワモテ刑事の取り調べはタゴサクいわく「高校野球の応援団みたいでうるさかった」らしい 笑。
清宮はタゴサクと話をする中で、タゴサクという人物の犯人像をパズルで組み立てていたが、パズルのピースが狂ってきていることに焦る。
ここからタゴサクは「人の命は平等か?」というテーマに関する話を延々と話す。とにかく喋りが達者。
タゴサクという人物にイライラしてくる清宮。
「9つの尻尾」の8問目の質問で、いつの間にか指が立っていることに気づく清宮と類家。ヒントを話すタゴサクだが、類家はイマイチ明確な場所の特定ができていない。
しかし、清宮は決断を下し、捜査官たちに4つ目の爆弾のありかを捜査させる。
これが失敗し、爆発により多くの被害者が出る。
清宮は撃沈。
タゴサクと類家の対決
清宮は真っ白な灰のようになっていたが、類家は諦めず、取り調べを続行することを強行。
清宮が取り調べをしている体で、実際には類家が取り調べ担当を代わる。調書を書いていた伊勢もルール違反と分かっていながら協力。
ここから第二幕が開始。
ここまでで物語全体の半分くらいですが、ここからさらに面白くなっていきます。
捜査を続けていくにつれ、タゴサク以外の共犯者の存在も現れる。事態は深刻な状況になっていく。
最終的には、東京駅全てに爆弾を仕掛けたと言うタゴサク。
類家、倖田、等々力たちは爆弾を止めることができるのか?
みたいな物語です。
小説「爆弾」の登場人物
小説「爆弾」の登場人物を書きます。
- スズキタゴサク…49歳。テレビの野球観戦が好き。仕事はしていない。
- 等々力功(とどろき いさお)…野方署の警官。正義について疑問を持っている。
- 清宮…警視庁捜査一課。特殊班の刑事。タゴサクの取り調べをする。
- 類家…警視庁捜査一課。特殊班の刑事。清宮の部下。後半、タゴサクの取り調べをする。
- 鶴久…野方署課長。等々力の上司。
- 倖田沙良…池袋署の巡査。警察として仕事をすることに、疑問を持ち始めている。
- 矢吹泰斗…池袋署の巡査。倖田の3つ上の先輩。
- 伊勢…野方署の警官。矢吹とは同期。タゴサクの取り調べの調書を取る。
- 猿橋…倖田と一緒に行動する筋肉質な警官。倖田からは密かにラガーさんと呼ばれる。
- 長谷部有孔…野方署の刑事。等々力の先輩で、名物刑事だったが退職。
他にも何人か登場人物がいますが、メインは上記の人たちです。
小説「爆弾」の面白かったところ
スズキタゴサクがなんだか憎めない
自分を卑下する話ばかりするスズキタゴサク。しかし、口が達者で博識な面も見せる。底の見えない深淵の闇のような人物。
自分をビデオテープで撮影して、東京駅に爆弾を仕掛けたと告知する。「これは催眠術士に操られただけ。喋らされた後は記憶も消去された」といけしゃあしゃあと言う。
物語を読んでいて(聴いていて)、腹たつな〜と思いつつ、なんだか憎めない人間臭さもあります。
タゴサクは非常にリアリティがあって身近にもいそう。僕自身もタゴサクの考えに共感できる部分もあって、喪黒福造みたいな喋りをするし興味深いキャラクターでした。
プッツンする倖田
現場で捜査する倖田沙良は、警官という仕事に対して少し疲れが見える。警官だからいつも正しい行動をしなければいけないが、それ以前に一人の人間でもある。
仲の良い先輩の矢吹が危険な目にあった際にも、一般的な道徳や正義よりも矢吹を優先した。
そして、プッツンした倖田はタゴサクを殺そうとする。(プッツンっていう表現、もしかして古い!?)
咄嗟の判断で爆弾を発見するファインプレーをするシーンも見どころ。
等々力も倖田と同じような悩みを抱えていて、このあたりが単なるフィクション作品ではないリアリティを感じました。
プッツンする類家
頭の良い類家ですが、タゴサクとの直接対決で開き直ります。清宮のリベンジをするべく、かなりプッツンしています。というよりは、もともとこういう性格なのかもしれません。
正義なんて糞食らえ。警察とは思えない言動をして、タゴサクも目を丸める。
小説の成り行きから考えると、最後は類家が爆弾を止めことは予測できますが、きちんとしっかりやっつける類家が頼もしい。
鶴久課長もいい味が出ていた
等々力の上司の鶴久課長。周囲からは75点の男と言われる。
どちらかというと有能には描かれていないですが、自身の娘が爆弾の危機にさらされて焦りまくるシーン。その他のシーンも合わせて、とても75点とは言えない良い人物です。
正義や平等について
この物語は正義や平等の話がよく登場します。スズキタゴサクの話だけでなく、それぞれの刑事たちが心の中に持っている正義と平等。
最後は読んでいて(聴いていて)どっと疲れが出ましたが、人として大事なことが確認できて、ちょっとだけ心が温まるような不思議な作品でした。
まとめ
原作小説がこれだけエンタメしているので、映画もきっと面白いはず。映画の俳優陣を見るだけで面白そうです。
最初から最後までダレることなく、ずっと面白い作品でした。
オーディブル作品は聴き終えると自動で次の作品が流れます。そこで気づきましたが、なんとこの作品、続編があります。
この記事を書いている段階では続編も聴き終わっています。続編の感想も書く予定です。
Audible(オーディブル)で続編も聴けるのでぜひチェックしてみてください。


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