宇佐見りんさんの小説「推し、燃ゆ」をAudible オーディブルで聴きました。
言葉にするのが難しいですが、なかなかに壮絶ですごい作品でした。
2020年9月発刊、オーディブル版は2021年6月配信開始。オーディブルの良い所はサブスクで聴ける本のラインナップが素晴らしい点。新し目の作品や話題作が結構聴けます。
この小説は第164回芥川賞を受賞しています。
読んだ後に物語の空気感が現実世界でも残る。そういう小説を求めていたりするんですが、この作品はまさにそういう作品の一つでした。言葉にできないなんとも言えない感情を文章にできる、そういう作品はごく稀。
玉城ティナちゃんがナレーションという理由で聴き始めたけど
この小説はタイトルや本のカバーを見る限り、僕の中では「まず読まない作品」なんですが、オーディブルでは女優の玉城ティナちゃんがナレーションをしている、というそれだけの理由で聴きました。
いや、45歳のおじさんが「アイドルを追っかけてる女子高生の話」なんて共感できる訳ない、って思うじゃないですか。
それが、物語中盤あたりからどんどん面白くなってきて、読み終わった後には「この作品はすごい」と、自分でも予想外の感想を持ってしまいました。
玉城ティナちゃんのナレーションは低い声で、淡々としたナレーションなんですが、終盤の主人公が見せる感情の昂りはヴォルテージが上がっててよかった。
全力で人生を何かに賭ける、そういうのって馬鹿にできない
主人公は女子高生で学校生活はあまり馴染めず。
居酒屋でバイトをして、そのバイト代は全て推しのアイドルにつぎ込む。
ライブにも行き、ブログで推しについて綴る。
ただただ推しが好きで愛おしい。人生を懸けて全力で推すその姿は、本人が学校生活や社会に馴染めずとも、すごい迫力がある。
僕はアイドルや近年話題のVtuberに対してこんな情熱はないけれど、アイドルオタクに対してはフラットというか特に偏見もありません。
この作品を読んで少し見方が変わったかも知れません。夢中になって熱くなれることがある、というのは素晴らしいし、それこそが人生だよな、とある種の羨ましさを感じます。
アイドルとファンの関係にベストな着地点は無い?
これは随分昔から思っていたことで、誰しもが思っていることだと思う。
アイドルの熱烈なファンの終着点はどこなんだろう?
お金をたくさん支払ってライブに行って、グッズを買って、それでも推しが結婚しても大丈夫なんだろうか?
そして、アイドル自身もそういうビジネスについて、疲れないのか?馬鹿らしくならないのか?
みたいなことをやっぱり考えてしまう。
「その瞬間瞬間が楽しければそれでいい」こういう理屈は趣味であればなんでも当てはまると思うけど、アイドルの追っかけということに関しては、やっぱりそう簡単に割り切れるものじゃな無いようにも思う。うーん、実際どうなんだろう。
人生をかけて推しを推した主人公は、うまく着地できたのか?この部分はぜひ読んでみてください。
まとめ
最後に著者の宇佐見りんさんについて。
宇佐見りんさんの小説は初めて読みました。現代の女子高生のリアルな生活や心の描写は、やっぱ若くないと書けないだろうなあと感じて、著者のことについて調べてみました。
どうやらめちゃくちゃ若い方のようですね。20代前半。
すでにいくつか賞を受賞していて、有望な作家さんのようです。
「推し、燃ゆ」が良かったので他の作品も読んでみようと思います。
コメント