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シリーズ6作目。小説「幻惑の死と使途」の感想。天才マジシャン登場

シリーズ6作目。小説「幻惑の死と使途」の感想。天才マジシャン登場 Audible
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森博嗣さんの小説「幻惑の死と使途」の感想・解説・考察。

幻惑の死と使途 ILLUSION ACTS LIKE MAGIC S&Mシリーズ (講談社文庫)
「諸君が、一度でも私の名を呼べば、どんな密室からも抜け出してみせよう」いかなる状況からも奇跡の脱出を果たす天才奇術師・有里匠幻が衆人環視のショーの最中に殺された。しかも遺体は、霊柩車から消失。これは匠幻最後の脱出か? 幾重にも重なる謎に秘め...

初版は1997年。紙の本で一度読んでいますが相変わらず一切内容を覚えておらず ^^;

この作品はAudible(オーディブル)で聴きました。

犀川助教授と西之園萌絵の理系ミステリーシリーズ6作目。

今作では天才マジシャンが登場。

マジシャンが残した2つの謎。いつものように犀川と萌絵が謎を解いていきます。

内容をある程度書いていますのでこれから読もうと思っている方はご注意ください(オチは書いていません)。

gao the book
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「幻惑の死と使途」は奇数章のみで物語が進みます。個人的にはシリーズ10作品の中でもかなりお気に入り。

小説「幻惑の死と使途」の登場人物

簡単に登場人物を書きます。

N大工学部の面々

  • 犀川(さいかわ)助教授…N大工学部建築学科助教授。35歳。天才的な頭脳を持つ。多重人格者。
  • 西之園萌絵…N大工学部建築学科4年生。ミステリー好き。頭が良く、数字の記憶力は抜群。
  • 国枝桃子…N大工学部建築学科助手。男性のような風貌。有能だが感情をほぼ見せない。
  • 浜中深志…N大工学部建築学科D2。萌絵の先輩。
  • 牧野洋子…N大工学部建築学科4年生。萌絵の製図仲間で大学では一番仲が良い。
  • 村瀬紘子…N大学文学部1年生。今作で初登場。かなり脇役。

マジシャンの面々

  • 有里匠幻(しょうげん)…大掛かりなマジック(特に脱出マジック)が得意。60歳ぐらい?年齢による限界を感じている。
  • 有里ナガル…匠幻の一番弟子。小さな人形を操るマジックが得意。
  • 有里タケル…金と緑の髪の毛を持つイケメンのマジシャン。
  • 有里ミカル…匠幻とは不倫関係に?タケルやナガルとの関係もあるっぽい?
  • 間藤…マジシャンを雇うイベント会社の社長。
  • 吉川…タケルのマネージャー。

警部の面々(いつものメンツ)

  • 三浦…切れ者の刑事。
  • 鵜飼…萌絵にぞっこん(表現が古いかも)の刑事。
  • 近藤…若い刑事で顔が丸く、メガネも丸い。ひょろっとした体型でマッチ棒のよう。近藤も萌絵にぞっこん。

その他の人

簑沢杜萌(みのさわ ともえ)…萌絵の中学時代からのクラスメイト。序盤に登場しますが基本的には本編とほぼ関係がない。

小説「幻惑の死と使途」のあらすじ

シリーズ6作目になり物語の中でも着実に時間が経過しています。

シリーズ1作目では大学1年だった萌絵は大学4年生になり次の進路を決める段階に。

簑沢杜萌から見た西之園萌絵の人物像が面白い。

物語の始まりは萌絵の中学時代からの友人である簑沢杜萌(みのさわ ともえ)と会うシーンから。二人とも萌という文字が入っているのでちょっとややこしい ^^;

簑沢杜萌の学生時代の回想シーンがあり、杜萌から見た萌絵の人物評価が面白かった。

杜萌は中学時代から成績が良かった。学年で2位の順位で、1位はいつも萌絵だった。

高校3年の1年間だけは杜萌は1位になれたが、それは萌絵が休学していて不在だったという理由が大きい。

気になった杜萌は萌絵のお見舞いに行く。ただ、そもそも二人は会話を交わしたこともなかった。

思っていた通り萌絵は杜萌のことを知らず。あろうことか成績優秀者リスト(順位)を見てすらいなかった。

色々と話をして、その後チェスをしてボロ負けする。杜萌はそこで気づいた。萌絵は天才だということに。

特に計算スピード、数字の記憶は常軌を逸する能力を持っていた。

ずっと成績で負けて悔しい気持ちでいたし、勝手にライバルと思っていたら、自分の存在を知りもしなかった。

住む世界が違っていたのだ。

そこで杜萌はずっと悩んでいた自分が馬鹿らしくなり、晴れやかな気分に。

付き合ってみると萌絵は完璧な人間ではないことがわかった。恐ろしくわがまままで、恐ろしく世間知らずだった。そのギャップも良かった。

素直な精神の持ち主。ピクルスにしたいぐらいに」と評するくらいに杜萌は萌絵のことが好きになっていた。

今作は奇数章のみで進むという面白い展開

萌絵は簑沢杜萌と一緒にマジックショーを見に行く。(犀川の代打で浜中も一緒に)

その後、簑沢杜萌と別れた後で、物語は分岐します。

今作の時間軸と並行して、簑沢杜萌は事件に巻き込まれますが、その話は次の作品の偶数章で描かれるという熱い展開。

こういう展開は他の小説では見たことがないですが、ひねりが効いていてすごい。シリーズものだからできる手段とは言え斬新。

2つの謎

今作ではマジシャンが残した2つの謎を巡って、萌絵と犀川が謎を解き明かしていきます。犀川は乗り気ではなく毎回巻き込まれる感じですが。

1つ目の謎。脱出ショーの合間にどうやって殺害したのか?

犀川と萌絵と浜中は、8月に滝野ヶ池緑地公園でマジックショーを見に行くことに。

テレビで中継するほどの大きなイベントだった。

大きな池に浮かべたイカダ。その上には箱があり箱の中にはマジシャンが一人入っている。箱は厳重にロックされていた。

イカダを爆破する脱出マジック。

爆破した後に箱は池に沈むが、ショーのステージには箱にいるはずのマジシャンが登場する。

だが、マジシャンの胸には深々とナイフが刺さっていた。そのマジシャンこと有里匠幻は絶命していた。

どうやって殺害したのか?この謎が1つ目の謎。

2つ目の謎。霊柩車にあった遺体が消失

有里匠幻の葬式では、弟子のマジシャンである有里ナガルが棺の装飾を一瞬で変えるマジックを見せる。

有里匠幻の録音音声には「必ずこの棺から脱出してみせる」という最後のメッセージが。

霊柩車に棺を乗せた後、運転手が青ざめて出てくる。有里匠幻の声が聞こえ、棺の中の遺体が消えていた。

有里匠幻の遺体の消失。これが2つ目の謎。

この2つの謎を解明すべく、いつもの通り萌絵が行動しまくり、勇み足で危険な目に遭い、犀川が必死に助けに行くというお決まりのパターン。

今作では犀川ではなく萌絵が解決編を担当

今回は萌絵がほぼほぼ答えを見つけ、犀川もその謎解きに同意。

いつもは犀川が事件の謎を刑事たちに披露するんですが、今回は萌絵が担当した。

結局最後は、萌絵の考察のさらに上を行く犀川の考察に皆が感心して話が終わります。

個人的に面白かったところ

小説「幻惑の死と使途」で個人的に印象的だった部分を書きます。

国枝が浜中を助手に推薦

犀川の助手である国枝桃子は、犀川に相談をしに来る。自身は助手を辞めて、代わりに浜中を推薦すると。さすがにびっくりした犀川だが、結局、どうなったかは不明のまま。

トーマの漢字

萌絵の家ではシェットランドシープドッグのトーマを飼っている。

仰向けに寝るという犬でマスコットキャラ的存在。

今作で分かりましたが、「都」に「馬」でトーマらしい。

TMコネクションの存在

1年前くらいにTMコネクションなる会が発足した。

TMとはトーマと萌絵のイニシャルらしい。

なんとこの会は那古野県警による萌絵のシークレットファンクラブだった。犀川には内緒。

鵜飼刑事が会長で、近藤刑事も在籍している。

萌絵自身が会を開いて交流しているらしい。

なんかすごい ^^;

犀川の家にはテレビがない

犀川助教授の部屋にはテレビが無い。この小説が出版された当時は1990年後半なので、この時代に読んでいればテレビがないのはかなりの衝撃だったはず。

新聞も読まないし、マスメディアを嫌っている節すらある。

その理由は、広告業で成り立っている世界なので、正しい情報を得られないから。(真実が見えづらくなる)誰かの意図によって操作された情報が多い、ということなのかな。

盆踊りは狂気

萌絵が金魚すくいを知らないということを聞き、犀川は一緒に盆踊りに行くことに。

犀川の「盆踊りは狂気に満ちた場所」という感想がよかった。

一般人がみんな評論家になり、正しい情報は探しにくくなる

おそらく今作で一番有名な場面かも知れません。

この小説が発刊された当時(1997年)は、インターネットがまだ普及していない時代。まさにこれからという年代だったと記憶してます。僕は1998年にiMacを買ってテレホーダイを契約してインターネットを初めて体験しました。

犀川はインターネットの登場によって未来を予測し、見事に的中させています。

一般の人がみんな評論家になり、口々に自分の意見を言い合う時代になる。そして、正しい情報は探しにくくなり、最終的には情報に価値がなくなる。

現在のX(旧ツイッター)はインプレッション目的(お金になる)で、複数のポストに埋もれ正しい情報が探しにくくなっています。匿名掲示板や他のSNSもやはりどこか信じづらい。

Audible(オーディブル)のナレーションが最高すぎた

今作も毎度お馴染み池添朋文さんがナレーション担当。

毎回ものすごくハイクオリティなナレーションですが、今作はテレビのリポーター役もします。このナレーションがうますぎて、小説作品(紙の本や電子書籍)よりもクオリティをかなり上げてる印象です。マジですごい。

まとめ

オチも含めて全体的にかなり面白かったです。

今作では「名前」が一つのキーになっていて、

犀川いわく、「物に名前をつけて認識するのは人間だけ。名詞の概念は高次元。名前のために生きている」が印象的でした。

次はどんな天才が登場するのか?楽しみです。

ちなみに、いつものようにAudible(オーディブル)で聴きましたが、唯一の欠点は漢字がわからないことです。

今作の登場人物の名前(漢字)にはどうやらトリックがあったらしく、漢字がわからないのでその点は気づきにくいですね。

以前までの作品の感想も書いているので是非↓

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