宮島未奈さんの小説「成瀬は天下を取りにいく」の感想と考察。この作品はオーディブルで聴きました。
2023年3月発刊。オーディブル版は2024年4月に配信開始。
ナレーションは声優の鳴瀬まみさん。
第39回の坪田譲治文学賞と、2024年の本屋大賞を受賞。小さい賞なども含めると他にも10を超える賞を受賞。今一番熱い小説です。
ドラマや映画になりそうな雰囲気が漂いまくってます。
気持ちいい青春物語。誰もが身に覚えのある郷土愛に共感すること間違いなし。
小説「成瀬は天下を取りにいく」のざっくりあらすじ
スポーツも勉強も何をやらせても万能な成瀬あかり。
同じマンションに住んでいる同級生で友人の島崎みゆき。
物語は二人が14歳(中二)の夏から始まる。
地元に愛されるショッピングセンター「西武大津店」が8月末に閉店することになる(44年もの長い歴史に幕が降りる)。そのことを知った成瀬は「西武に中二の夏を捧げる!」と宣言。島崎もなぜか付き合わされる。
ぐるりんワイドというローカルなワイドショーでは、西武が閉店するまで平日毎日お店を中継をしている。成瀬は西武ライオンズのユニフォームを着て毎回中継に映るという目標を立てる。
西武閉店後、9月になると成瀬は「お笑い芸人の頂点を取る」と言い出す。M-1に出場をすることに決め、もちろん島崎も相方として付き合わされる。
この小説はチャプターごとに主人公が変わりますが、「西武大津店」を中心に繰り広げる地元愛をテーマにした物語になっています。
ウォーキングをしながらオーディブルで聴いていましたが、途中何度も泣きそうになりました。
いい話すぎるでしょこれ。
小説「成瀬は天下を取りにいく」の感想と考察
この物語は滋賀県を舞台にしていますが、これだけ滋賀県をアピールされると、さすがにちょっと興味が湧いてきました。
滋賀のローカルな情報など
- 平和堂…小型のスーパー。成瀬と島崎はお祭りの司会を頼まれ、そこで漫才もすることに。平和堂のあるあるネタをブッこむ。
- ミシガン…琵琶湖のクルーズ船。こんなのがあるのね。高校2年生になった成瀬は、カルタ部の大会で知り合った広島の高校生とミシガンに乗ってデートをする。
- 膳所駅(ぜぜえき)…主人公たちが住む町の近くの駅。M-1に挑戦した際のコンビ名はこの駅からとって「膳所から」と名づける。
などなど。他にもあったと思いますが、ひとまず気になったところだけご紹介しました。
成瀬は高校生になると競技カルタの部活に入ります。この競技カルタも滋賀県が聖地らしい。
もちろん著者も滋賀県
著者の宮島未奈さんの小説は初めて読みましたが(聴きました)、wikiで調べてみるとこの作品がデビュー作らしい。すごい。
出身はもちろん滋賀県の大津。京都大学を卒業しているのでめちゃ優秀な方のようです。小説の成瀬も京都大学を目指しているので、この作品はかなり著者の人生とも関わっていそうです。
オーディブルでのナレーションは声優の鳴瀬まみさん。この方も調べてみるとどうやら滋賀県の方。漢字は違うものの同じ「なるせ」なので、このあたりの関係性も気になっています。
鳴瀬まみさんのナレーションは本当によかったなあ。元気でハキハキしていて聴きやすく、声の使い分けもうまい。この作品にかける意気込みが伝わってきました。
小説は読んではいないですが、マジでオーディブルめちゃくちゃおすすめです。ぜひオーディブルで聴いて欲しい作品。
まとめ
成瀬は勉強もスポーツも含めて万能な人物として描かれています。
大きなシャボン玉の名手で、けん玉もうまく、200歳まで生きることを目標とし、高校1年になった時にはスキンヘッドで入学する。というかなりの変わりもの。
最後の第五章では、成瀬が第一人称(主人公)として物語が展開されます。
それまでの章では他の人物が第一人称で、成瀬が変わり者として見られていたものの、5章を読む限りでは想像以上にナイーブで、普通の感覚を持っているように感じました。
成瀬はさまざまなことにチャレンジしますが、実はなんでも万能という訳ではなかった、という弱い面も見せます。そこもまたよかった。
若いからというだけでなくて、この作品を読んでいると僕自身ももっとやれることがあるんじゃないかと、パワーが湧いてきました。
続編もあって、こちらも感想を書いています↓
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